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3冊ノート術/不要な技術を捨てる/noteの返金機能について/これからの日記について

Weekly R-style Magazine ~読む・書く・考えるの探求~2019/12/02 第477号

はじめに

はじめましての方、はじめまして。毎度おなじみの方、ありがとうございます。

最近、少しずつ体調が戻りつつあるので、うちあわせCastも収録できるようになりました。

あと、ごりゅごcastにもゲスト出演しました。

よろしければご試聴くださいませ。

〜〜〜捨てる快〜〜〜

本を処分していて気がついたのですが、何かを捨てることって、それ自体で「快」を持っています。最初は躊躇していても、一度捨て始めると楽しさが出てくるのです。

で、それを続けていると、ハイキシャーズ・ハイ(ランナーズハイみたいなやつ)が盛り上がってきて、さらに捨てる行為が加速していきます。

この効果によって片付けはうまく進捗するのですが、捨てなかったらよかったものにまで手を出してしまう危険性もあります。要注意ですね。

〜〜〜鳴らない危険信号〜〜〜

危険な場所には「危険」と立て看板が立ててあるものですが、危険な人や危険な事柄にはそういう立て看板がありません。話してみたら良い人だったけど、裏で危ないビジネスに手を出している人だった、みたいなことは結構あるでしょう。

かといって、そういう情報がシェアされることもありません。法律違反をしているわけではなく、「まっとうではない」仕事をしているだけなので、正面切って「あいつには近づかない方がいい」とは言えないからです(名誉棄損になるでしょう)。

ということを考えると、危険か危険でないかは、きちんと自分で判断する必要がありそうです。それをどう判断したらいいのかという情報も、あまりシェアされないのが困りどころですが。

〜〜〜『僕らの生存戦略』進捗状況〜〜〜

今週は、第一章を削る作業に注力していました。

想定では1万5千字程度、理想は1万字以内に収まればよい、だったのですが、現状で2万7千字。さすがにこれは長すぎます。せめて2万字には収めたいところ。

そのためにザクザク削っていくわけですが、そこで重要なのは「この章で言いたいことは何か?」という視点です。先週号で書いた「コンセプト」ですね。

このコンセプトから外れる話題は、たとえ少々関連があろうとも、ばっさり削除していかないと、とても文字数を抑えることはできません。そうなると非常に「野暮ったい本」になってしまいます。

とりあえず、この削除作業が終わったら、第一章は(仮固定の)終了として、第二章に取りかかりたいと思います。

〜〜〜位相の異なるキャッチーさ〜〜〜

「キャッチーさ」という言葉をよく使います。「キャッチーなタイトル」とか「キャッチーな表現」といった使い方です。

これは「人の心を掴まえる」というニュアンスですが、実際は「人」という広範囲な対象ではなく、「ある特定の層」という限定的な対象について言及しているのではないかと最近感じました。

たとえば「もっとキャッチーにした方がいいですよ」と言うとき、極めてニッチな趣味を持つ人たちを対象とするのではなく、もっと「一般受け」にすることが意味されているでしょう。つまり、マス向けという意図がそこにはあるわけです。言い換えれば、マスに分類される人たちが対象ということです。

もちろん、その視点も大切ではありますが、極めてニッチな趣味を持つ人たちの心をがっちり掴まえる表現の探究も、今後は必要になってくるのではないか、なんてことを考えます。

〜〜〜適切な行間〜〜〜

書籍の原稿データを、どのツールで管理していくのかは極めて難しい問題です。

この仕事をはじめたばかりの頃は、ろくに選択肢がなかったのでテキストファイルに原稿データを、メモや資料をEvernoteにという使い分けをしていましたが、今ではもっと無数の選択肢が広がっています。それを選ぶのも一苦労ですね。反生産性です(注意:本文参照)。

しかも、時間が経てばツールの機能もアップデートしますし、私自身のツールの使い方に関するノウハウも増えます。そこで、いったん却下したツールについても、もう一度検討するタイミングがやってきます。

先日は、アウトライナーでやってみたらどうかを試してみました。章ごとに項目を立て、その下に本文を入れる。こうすれば、章だけのレベルで全体を確認することもできますし、本文をダイレクトに参照することもできます。

しかし、行間がダメでした。普通にアウトラインを作るときに適切な行間だと、本文が詰まりすぎてしまうのです。一方、本文を適切な行間で表示させると、章のレベルで一覧したときに行間がスカスカになってしまいます。

そのときはっきり感じたのです。「スタイル」(見た目)というのは、一つの機能なのだと。

読みやすさを優先させたスタイルと、操作しやすさを優先させたスタイルは、機能が異なっています。原稿データを保存するときは、そのことを念頭に置かなければなりません。すべてを一カ所に保存するのは便利ですが、情報の性質によっては見た目が違った方が良いことがあるのです。

やはり、管理したい対象は何なのか、それをどう管理したいのかについて、一度しっかり考えておく必要があるのでしょう。

〜〜〜面白さとつまらなさ〜〜〜

つまらないものは、面白さが欠如しています。何かが足りないのです。

一方で、何かが多すぎて、つまらなくなっているものもあります。おもしろさの素材みたいなものはたっぷりあるのだけども、たっぷりあるがゆえに、逆に面白くなくなっている、という逆説的なつまらなさです。

その意味で、作ることと捨てることは常にセットです。

〜〜〜今週見つけた本〜〜〜

今週見つけた本を三冊紹介します。

『銃・病原菌・鉄』の著者による新作。内容紹介によれば「世界7カ国の事例から、次の劇的変化を乗り越えるための叡智を解き明かす」本だそうです。

タイトルからはわかりにくいですが、自己啓発的な本です。内容紹介によれば「この本では、仕事、生活、人間関係で圧倒的にうまくいってい人に共通するような、自分の魅力を最大限に引き出すためのコーチングを28のステップで紹介しています」とのこと。

最近、とある本のせいで「名前がない」ということについて気になっています。名前がない状況とは何なのか。それに名前を与えることでどう変化するのか。上の本は、家事実行者の「あるある」をまとめた本ではありますが、それでも「あえて」名前を与えてみる行為には、何かしらの意義(と弊害)がありそうです。

〜〜〜Q〜〜〜

さて、今週のQ(キュー)です。正解のない単なる問いかけなので、頭のウォーミングアップ代わりにでも考えてみてください。

Q. 名前がないものに名前を与えると、どんな変化が生じるでしょうか。

では、メルマガ本編をスタートしましょう。

今週も「考える」コンテンツをお楽しみくださいませ。
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2019/12/02 第477号の目次
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○「3冊ノート術」 #メモの育て方

○「不要な技術を捨てる」 #Thinkclearlyを読む

○「noteの返金機能について」 #やがて悲しきインターネット

○「これからの日記について」 #知的生産の技術

※質問、ツッコミ、要望、etc.お待ちしております。

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○「3冊ノート術」 #メモの育て方

今回は、美崎栄一郎さんの『「結果を出す人」はノートに何を書いているのか』から「3冊ノート術」をピックアップします。

今回も注目したいのは、「どんなことを書き留めているのか」と「書き留めたものをどう扱うのか」の二点です。

では、さっそく始めましょう。

■ノート術の概要

まずは、「3冊ノート術」の概要を確認します。

・三冊のノート(メモノート・母艦ノート・スケジュールノート)を使う
・付箋も使う
・メモノートは「タスク管理」と「アイデア出し」用
・メモノートはちぎれるタイプのメモ帳が推奨
・メモノートは母艦ノートに貼る
・母艦ノートはまとまった情報の保存場所
・母艦ノートは時系列で書く
・スケジュールノートはスケジュール

ノート術についての考察ではないので詳細は割愛します。また、スケジュールノートは、ようするに手帳のカレンダーページなのでこれも割愛します。

フォーカスするのは、メモノートと母艦ノートです。この二つのノートの情報の動きについてみてきましょう。

■アイデアを育てる

この三冊ノート術は、主にビジネス現場での使用が想定されており、その効能は以下のように語られています。

 >>
 「断片的な思いつきのメモを企画書にまで育てたり、締め切りを意識しながらクオリティの高いプレゼン資料にまとめたりすることができます」
 <<

ここで気になるのが、「断片的な思いつきのメモを企画書にまで育てたり」という部分です。この連載のテーマが「メモの育て方」なのですから、まさにジャストな話題と言えるでしょう。

まず、メモノートですが、断片的な思いつきをキャッチするためのものです。ロディアのNo.11くらいのちぎり取れるメモ帳を使い、そこに「タスク」と「アイデア」を書きつけていきます。

小さいメモ帳を使うのは、取り回しが良いからで、いつでも持ち歩くことが推奨されています。いわゆる「ユビキタスキャプチャー」です。

そのようにして書かれたメモは、切り取られた後、母艦ノートへと貼り付けられます。当然母艦ノートのサイズはメモノートよりも大きくなります。A5〜A4あたりが使いやすいでしょうか。

そうして貼り付けられたメモは、母艦ノートの中で成長します。本書の表現を借りれば「ふくらませる」ことが行われます。

たとえば、「来月から新企画について課長に企画書を提出」というメモが母艦ノートに貼り付けられたならば、そのために必要な行動をリストアップし、さらに必要そうな情報も一緒に追記する、という次第です。タスク管理の用語で言えば、「プロジェクト化」が相当するでしょうか。

アイデアの場合でも同様です。「企画案Aは、hogehogeをテーマに」といったメモが母艦ノートに貼り付けられた場合、そのhogehogeについて掘り下げ、関連するアイデアをノートに書きつけていきます。

この、「メモノート」→「母艦ノート」の流れが、三冊ノート術の基本的なワークフローです。

■母艦たるノート

「メモノート」→「母艦ノート」の流れが基本であっても、まとまった量の情報を記録する場合には、初めから母艦ノートが使われるようです。

 >>
 打ち合わせ、会議、プロジェクトの進行管理、企画書の下書きなど、まとまったある程度の量の情報を記録する際には、最初から母艦ノートを使います。
 <<

さらに母艦ノートには、「重要なメールやWebサイトのプリントアウト、配布された資料」などを貼り付けるともされています。

ようするに、そのノート一冊さえあれば、主要な作業が進められる環境を作るわけです。

■アイデアとタスクの育て方

母艦ノートに書き留められたものがアイデアかタスク(プロジェクト)によって、その後の扱い方に多少違いが生まれます。

まず、アイデアの場合は、「それらの情報を並び替えたり組み替えたりふくらませたりして、最終的に文書にしてアウトプットしていきます」とあります。少し説明が必要でしょう。

ビジネス現場の場合、アイデアはノートに書き留めておいて「わーすごい!」で終わるのではなく、企画書などの成果物を生み出して完結します。その成果物は、だいたいパソコンで生成されます。つまり、以下のような流れがあるわけです。

メモノート→母艦ノート→パソコン

メモノートでアイデアをキャッチし、母艦ノートでそれを膨らませ、パソコンで最終成果物を作り上げる。こういう流れです。

また、母艦ノートに貼り付ける前のメモであれば、自由に並び替えたり組み替えたりができます。つまり、あるテーマについてメモノートでブレストし、書きだしたものをくねくねと動かしながら情報をまとめ、その結果を母艦ノートに記録する。そういうことが可能なわけです。

さらにメモノートの使い方として、あらかじめ考えたいテーマをメモノートの1ページに書いておき、電車の待ち時間などにそのページを見て、アイデアを書き記すという発想法も紹介されています。

メモ帳
・課題
・白紙
・課題
・白紙
・課題
・白紙

上記のように一ページ飛ばしで課題を書いておけば、次のページの白紙に自分が考えたアイデアを書き留めていける、という面白いアナログノートの使い方です。

こうして断片的なアイデアを拾い上げ、ノートにまとめてから、パソコンで清書するのが「三冊ノート術」のアウトプット法です。

前回紹介した一冊ノート術と近しい部分が多いですね。とても面白いと思います。

■プロジェクトの三フェーズ

母艦ノートに書き留められたものがタスク(プロジェクト)の場合は、追記が基本となります。

プロジェクトのフェーズを以下の三つに分け、

・予想フェーズ
・実行フェーズ
・結果フェーズ

それぞれのフェーズの情報を、同じページに書き込んでいく(ただしフェーズごとにペンの色を変えて後から識別できるようにする)というのが、三冊ノート術のタスク管理です。

この場合、アイデアのように情報が変化していくのではなく、経過と共に発生する新しい情報を次々にキャッチしていくイメージが近しいでしょう。

■まとめ

以上、三冊ノート術の情報の扱い方について簡単に見てきました。

三冊ノート術は、アイデア・タスク・スケジュールを書き留め、さらに貼り付けることで資料も一括管理します。

また、断片的なものをキャッチするツールと、それをまとめるツールが分かれているのも特徴です。

単純に考えれば、大学ノートはどこにでも持ち歩くのには向いておらず、ユビキタスキャプチャを行うにはメモ帳の方がいいから、仕方なく分冊体制になっている、という風にも思えますが、実際は違うのでしょう。

断片的なものの保存と、それらをまとめるための場所(ツール)が別である、という点にこの三冊ノート術の特徴があるように思います。言い換えれば、断片からまとめに至るまでに「一拍」(あるいは一呼吸)置くのが、このノート術の妙なのです。

前回の「一冊ノート術」でも、ノートから別のツールに書き写す工程が発生していましたが、これを手間として見るのではなく、ポジティブな効能があるものとして捉え直せる可能性があります。そう考えたとき、メモの育て方にも新しい光が差してくるでしょう。

というわけで、次回もまた別のノート術について見ていきます。

(つづく)

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