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自宅で仕事をするときのちょっとしたコツ/私たちの日常を彩るもの/作業記録で生まれた変化 その4/2020年度のWRMの方針について

Weekly R-style Magazine ~読む・書く・考えるの探求~2020/04/13 第496号

はじめに

はじめましての方、はじめまして。毎度おなじみの方、ありがとうございます。

うちあわせCastの第二十八回が公開されております。

今回は最近連載をはじめた『Re:vison』についてお互いの意見を交換しましたが、後半まったく別の話をしているのはいつもの通りです。

そういえば、とある方に「毎週配信してくれるならお金を払ってもいい」という感想をもらえて結構嬉しかったです。それは「しめしめ、商売のタネになるぜ」といったことではなくて(そういう気持ちがゼロであるとは言いませんが)、自分がやっていることはギフトとして機能しているのだなと思えるからです。

ギフトとは何か?

代価以上の価値があるものだと、個人的には認識しています。

〜〜〜最近Scrapboxがあつい?〜〜〜

最近在宅勤務が増えて、情報共有のツールとして(若干)Scrapboxが注目されているようです。なかなか喜ばしい話です。

これまでは、Scrapboxのようなツールを使うのは、(日本企業の主流に比べるなら)はぐれものたちだったと言えるでしょう。しかし、そうしたはぐれものたちが、先駆的に集め、育んできた知見たちが、こういう状況で活きようとしているのです。

長谷川英祐さんの『働かないアリに意義がある』に、まっすぐ餌のある場所に向かわず、ふらふらと歩き回るアリの存在が、新しい餌場を見つける可能性になっている、という話が出てきますが、それに通じるものを感じます。

〜〜〜自分の本の再読〜〜〜

たまたま、ある人に『「目標」の研究』はもっと売れてほしいですねと言われて、もちろん自分の本が褒められて嬉しくないはずはないのですが、しかしあの本は表面的にはわかりやすく書かれているものの、結構ややこしい構造をしている上に、ある種の自己啓発書をコテンパンにしているので、まあ売れることはないだろうと思ったのですが、それはそれとして、じゃあどんなことを書いていたっけ、ということが気になりました。

もちろん、大きくどんなことを主張したのかは覚えていますが、さすがに細部は忘れています(2016年出版の本です)。

というわけで、軽くKindleで『「目標」の研究』を再読してみたのですが、いや〜、面白いですね。自分が好きなように書いたから自分にとって面白い本になっているのは至極当然かもしれませんが、今振り返ってみると、よくこんな本が書けたなと思います。あまりにもトリッキーです。

で、結局そのまま最後まで読み切ってしまいました。

でもって、私が望むのも、読者さんにそんな風に読んでもらえる本、(かっこよく言えば)読み手のページをくる手をドライブする本です。

これまでは、あまり自分の本は再読してきませんでしたが(なぜかブログ記事はよく読み返します)、これからはちょくちょく読み返してみて、その「感触」を確かめたいと思います。

〜〜〜英語以外の言語〜〜〜

知的生産の技術の情報を漁ってウェブサーフィン(もはや死語になりつつありますね)をしていたら、ドイツ語の文献にぶち当たりました。

英語の文章はゆっくりとなら、フランス語ならさらにゆっくりとならなんとか「目を通す」ことはできますが、ドイツ語はさっぱりです。しかし、その文献はぜひ読みたい、ということで、翻訳ツールのお世話になりました。

普通にGoogleを使っても良かったのですが、最近よく評判を見かけるDeepL翻訳を使ってみました。

さすがに少々怪しい部分はあるものの、それでも1万字近くの文章の「大意」はつかめました。軽い情報収集ならこれで十分です。

こうやって、世界中の知見を(語学力が低くても)自分のもとに集められる点は本当にありがたいと思います。もちろんそれは、外国語を学ぶ必要性がなくなったことを意味はしないのですが。

〜〜〜無料キャンペーンの結果〜〜〜

先月の終わり頃、拙著の無料ダウンロードキャンペーンを行いました。

どれほど興味がある人がいるかはわかりませんが、そのデータを簡単に共有しておきます。

まず、全体としては1251冊がダウンロードされました。ありがたいことです。四冊を対象としたので平均でだいたい300冊のダウンロードとなっています。

とは言え、多少差異はあって、『Dr.hack』、『「目標」の研究』、『ブログを10年続けて、僕が考えたこと』、『コンビニ店長のオシゴト: 〜個性的なお店の作り方〜』の順でダウンロード数が多いです。
*『Dr.hack』が一番多かったのはちょっと意外でした。

これまでは、「不幸な出会い」が増えるから無料キャンペーンはやってきませんでした。不幸な出会いとは、特にその本を必要としていない人とのミスマッチということです。たとえ無料であっても、本を読む時間は有限ですから、できるだけ不幸な出会いは起きないほうが良いでしょう。

だから無料キャンペーンは一時期から封印していたのですが、こういうタイミングならちょこちょこやってみてもいいのかなとは思っています。もちろん、ほどほどに、ではありますが。

〜〜〜今週見つけた本〜〜〜

今週見つけた本を三冊紹介します。

常々「文章」と「音楽」の類似性については考えているのですが、文章作法に関する本は読んでいても作曲についての本はあまり読んできませんでした。音楽側からアプローチすることで、文章の書き方にも変化が生まれるかもしれません。

燃える図書館のイメージといえば、アニメ『図書館戦争』を思い出しますが、こちらは現実にあった1986年のロサンゼルス中央図書館火災が題材になっています。しかも単に火災の話で終わるのではなく、放火犯として逮捕された男の半生や図書館の歴史などへと話は展開していく模様。

名付ける、というのはあらゆる知的操作において重要な行為です。情報的集合を「ひとつのもの」としてまとめ上げること=概念化ができなければ知的営為はひどく回りくどいものになってしまうでしょう。でもって人間にとっても「名前」は大切です。自分でつけたのではないにもかかわらず、自分に一生つきまとうもの。その名前についての哲学を論考する一冊です。

〜〜〜Q〜〜〜

さて、今週のQ(キュー)です。正解のない単なる問いかけなので、頭のストレッチがわりにでも考えてみてください。

Q.過去の自分が書いた文章を再読することはありますか。

では、メルマガ本編をスタートしましょう。

今週も「考える」コンテンツをお楽しみくださいませ。

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2020/04/13 第496号の目次
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○「自宅で仕事をするときのちょっとしたコツ」

○「私たちの日常を彩るもの」 #エッセイ

○「作業記録で生まれた変化 その4」

○「2020年度のWRMの方針について」 #本の作り方

※質問、ツッコミ、要望、etc.お待ちしております。

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○「自宅で仕事をするときのちょっとしたコツ」

緊急事態宣言を受けて、これまでオフィスで仕事していたのに、急に在宅勤務になった方もいらっしゃるでしょう。そういう方のために、ちょっとしたアドバイスを以下の記事にしたためました。

この記事は、全体的にメンタルケア・ヘルスケアに関する内容だったので、今回は「作業の進め方」に関するちょっとしたコツをご紹介します。

■時間の区切りを作る

一番大切なのは、「時間の区切り」を作ることです。会社に出勤する場合は、出社時間、退社時間、休憩時間といったものがルール的に定められていますが、自宅ではそれがありません。

人間は、大雑把に認識したものを、大雑把に使いがちです。突然大金が手に入ると無駄遣いしてしまうように、「今日は1日仕事できる」などと考えると、あっという間に時間は浪費されていきます。

一時間ごとの区切りでも構いませんし、もう少し細かい区切りでも構いません。あるいは、午前・午後・夕方・夜くらいのおおまかなセクションでも良いでしょう。

とりあえず、そうした区切りを意識して仕事するだけでも、時間の使い方は変わってきます。

■緩急をつける

朝から全力で集中して、そのまま1日を駆け抜ける?

馬鹿なことを言ってはいけません。人間の集中力(≒体力)はそこまで無尽蔵ではないのです。

自分の頭が一番うまく働く時間を見つけて、そこで「重要な」作業をやってください(何が重要な作業なのかは、自分で決める必要があります)。

それ以外の時間は、あまり頭を使わなくても済む、あるは「重要な」作業とは違った頭の働かせる仕事をすると良いです。

あと、作業と作業の間にしっかり休み(休憩)を入れることも大切です。人によっては、ともかく作業を進めてしまおうとやっきになって、かなり序盤のうちで疲れ切ってしまうこともありますので、適度適度に休憩していきましょう。

■さまざまな種類の作業リストを持っておく

上記の「緩急をつける」をうまくやるためには、いくつかの種類の異なる作業リストを作っておくのが吉です。頭が働くときにやることリスト、そうでないときにできることリスト、といった感じで作業を選り分けておけば、何をするのかで悩む必要がありません。

逆に言えば、こうしたリストを作ることは、作業に向かう自分にはどんな状態があるのかをメタ的に認識することにつながってきます。

あと、いわゆる「作業」以外に、家事などのリストを持っておくのもよいでしょう。これも気分転換になりますし、なにより家庭維持に貢献できるという大きなメリットがついてきます。

■サイクルを意識する

ここまでは「一日」の作業の進め方でしたが、基本的にそういう「一日」が毎日続いていきます。そこで、サイクルを意識しておくのが有効です。

・毎日同じ時間に同じような作業をする
・特定の曜日は気分を変えるためにぜんぜん違うことをする

まず前者のパターン化が進めば、進めている作業を途中で中断せざるを得なくなっても、「明日のこの時間にやれるから大丈夫だ」と思えるようになります。逆に、いつその作業をするのかがはっきりしていないと、中断した作業が気になって仕方なくなります。これはMPの浪費に繋がるので避けたいところです。

また、後者はそのパターン化を破るためのパターン化です。基本的に毎日同じように生活していくのが「効率的」ではあるのですが、気分転換だったり休みだったり、いつもと違ったことをする時間が必要になります。そういう日を、パターンとして織り込んでおくのです。

言い換えれば、「一日」を繰り返すものとして意識して、作業の進行を組み立てていく、ということです。

■水分補給をしっかりと

案外忘れがちなのが水分補給です。特に座り仕事を続けて、コーヒーをガブガブ飲んでいると、水分不足になりがちなので、意識的に水分を補給しておきましょう。

■眠かったら寝る

自宅勤務の最大のメリットだと思います。眠たかったら寝る。体が休みを欲しているのだから、寝る。自然の摂理にまったく反しない、ごくナチュラルな行為です。むしろ、眠気まみれの頭で作業する方が能率は下がってしまうでしょう。

もちろん、寝すぎると頭が逆に働かなくなるので、カフェインを摂取してから仮眠するという手があります。これはなかなか有効です。

ともかく、部屋の空気を入れ替えても、ちょっと運動しても、それでも眠いなら、圧倒的に疲れている証左です。仮眠でも本眠でも構いませんから、しっかり体を労ってあげましょう。

それがおかしいと感じられるなら、労働に関する考え方を一度精査してみたほうが良いかと思います。

■さいごに

というわけで、家で作業するときのちょっとしたコツを紹介しました。特に重要なのは、最初にあげた「時間を区切る」ことです。ほんと、これをしないとあっという間に時間は無くなっていくので気をつけてください。

あと、普段はオフィスにいるので、作業中はSNSをチェックできない、という人はTwitter中毒にも気をつけてください。これもなかなか強敵です。

*本号のepub版は以下からダウンロードできます。

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