Weekly R-style Magazine 「読む・書く・考えるの探求」 2018/05/08 第395号
はじめに
はじめましての方、はじめまして。毎度おなじみの方、ありがとうございます。
突然思いついて、突然新しい企画を始めました。
中身はぜんぜん決まっておらず、「方向性」という名前の旗が立っているだけです。
さっそく準備室も設置しました。
上記の「はじめに」にある招待リンクから誰でも参加できます。
最終的な出口すらまだ未定の段階ですが、今年以降はこういうコラボ系の企画を増やせていけたらなと思案中です。
〜〜〜スイーツ〜〜〜
最近、自分用の知的生産ツールをいくつか作っています。
で、一つの夢として、それらのツールでデータを行き来させることを目指しています。
現状のツールでは、他のツールにデータを読み込ませる場合、いったんデータをエクスポートした上で、それを別ツールにインポートすることが必要です。これはこれで手間なのですが、それ以上に、別ツールで編集したデータをもとのツールに反映させるためにさらにエクスポート→インポートの手順が必要になり、「そんなこといちいちやってられんよ」と諦めがちです。
これが変えられれば、デジタル知的生産の工程はもっとシームレスというかスムーズに進むのではないかと思うわけです。
たとえば、7wrinerで連続入力した走り書きメモのうち、重要なものをtextLineに飛ばし、textLineで特定のハッシュタグがついているものをBarrettIdeaという付箋ツールで平面的に配置する。で、そこで書き換えなどが行われたら、textLineのカードの中身も切り替わる──こういうことができたら素敵だろうな、と思います。
今の所は、7つのライン、1つのカードライン、平面の付箋の三種類のツールしかありませんが、少し変わったエディタだとか、階層構造とか、そうしたいろいろな形態(UI)で情報を扱え、さらにそれぞれがデータ的に連携しているものができたら、立派な知的生産suiteができあがるでしょう。
そうした環境を作るためには、まず共通的に扱えるデータ構造(形式)を決める必要があるかと思うのですが、データベースを扱った経験がないので、いっそjson形式でいいかなと考える今日この頃です。
〜〜〜兵糧マネジメント〜〜〜
人の可能性は無限大ですし、下手な鉄砲でも数打てばあたります。
しかし、人の寿命は限られていますし、弾にも限りはあります。新しく買うのにもお金がかかります。
その点で、「下手な鉄砲も数打ちゃ当たる」はある種のバクチです。安全策なんかではぜんぜんありません。リスクは小さいように見えますし、実際そのとおりなのですが、ノンリスクではありません。下手な鉄砲を打ち続けている間にも時間は過ぎていきます。
下手な鉄砲を撃つにしても、少なくとも、どちらの方角を狙うかくらいは考えておいた方がよいでしょう。そして、どのくらい打ち続けられるのかも考えた方が賢明です。
〜〜〜別に几帳面なわけではない〜〜〜
よくメモ魔という言い方をしますし、物書きをやっている人間は98.9%(推測)がメモを積極的にとるかとは思いますが、それは一般的にイメージされるような「几帳面だから」という理由ではないかと思います。まず第一に私が几帳面ではありませんからね。
メモを日常的に書く人は、メモを書くことが習慣になっているだけでなく、それをしないと落ち着かないのではないでしょうか。喫煙者が、食後に煙草を吸わずにいられないような、そんな中毒的な行為なのではないか、という気がします。
そのように考えれば、メモを取ることは別段「立派」なことではなく、そういう習慣が身に付かないことも特に嘆き悲しむようなことではない、となります。
言い換えれば、物書きみたいな人たちはちょっと変なのです。普通(平均)からは少しズレているのです。
もちろん、それを理解した上で、「自分もそうなりたい」と決めるのはそれぞれの選択です。それくらいの心持ちの方が、あまり自分のメンタルを痛めつけずに済むかもしれません。
〜〜〜教育に組み込んだとしても〜〜〜
『アウトラインから書く小説再入門』という本に、「自分はアウトラインがあまり好きではなかった」と著者が書いていて、その原因が学校教育だとされていました。
これを読んで、深く「ほぉ〜」と思いました。
私はアウトライン的な、つまりパラグラフを主とし、それを組み替えていくような作文手法を学校で教えれば、社会人になってもっと楽に情報が扱えるようになるのではないかと漠然と考えていましたが、そんなに簡単な話ではないようです。
そもそも思い返してみると、私も義務教育時代は読書感想文が嫌で嫌で仕方ありませんでした。人生の中でブログを書く経験をしなければ、ずっとそのまま嫌悪感を引きずっていた可能性もあります。
そう考えると、「何を教えるのか」だけでなく、「どう教えるのか」まできちんと考える必要があるのでしょう。
もちろん、現場の先生はしっかりそうしたことを考えていらっしゃると思いますが、外から適当に考えてしまうと「カリキュラムに入れればいいじゃん」なんてあたかも簡単な問題のように捉えてしまいがちです。
この辺は、重々注意したいところです。
〜〜〜Q〜〜〜
さて、今週のQ(キュー)です。正解のない単なる問いかけなので頭のストレッチがわりにでも考えてみてください。
Q. 「あなたは幸せですか?」
では、メルマガ本編をスタートしましょう。
今週も「考える」コンテンツをお楽しみくださいませ。
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2018/05/07 第395号の目次
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○「ポモドーロテクニックの構成素」 #BizArts3rd
タスク管理を掘り下げていく企画。連載のまとめに入っています。
○「魔王のお仕事 1」 #SS
読み切りのショートショートですが、今回は前後編の前編です。
○「人と社会の間」#やがて悲しきインターネット
週替わり連載。今回はインターネットの近況と未来について。
○「幸福について考えること」 #今週の一冊
Rashitaの本棚から一冊紹介するコーナー。新刊あり古本あり。
○「企画案を作る問い」 #物書きエッセイ
物を書くことや考えることについてのエッセイです。
※質問、ツッコミ、要望、etc.お待ちしております。
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○「ポモドーロテクニックの構成素」 #BizArts3rd
今回は、「ポモドーロテクニック」について。その内側にあるものを腑分けしていきます。
参考文献は『アジャイルな時間管理術 ポモドーロテクニック入門』です。
タイマーを使う方法論として有名ですが、実は本格的なフレームワークになっています。
〜〜〜
ポモドーロテクニックには、以下の要素が含まれます。
・タスク処理ワークフロー
・アクティビティによるタスクの規格化
・データをベースにした改善工程
・タイマーによる実行補助
それぞれ見ていきましょう。
〜〜〜
■タスク処理ワークフロー
GTDには「情報処理ワークフロー」が組み込まれていました。これは仕事(業務)以外の全般的な情報を扱うものです。
ポモドーロテクニックにも、情報の流れは存在していますが、その対象は作業にのみ向いています。そこで、両者を区別するために、ポモドーロテクニックの方を「タスク処理ワークフロー」と呼ぶことにしました。
すべきことを一カ所に集めておき、そこからその日実行するものを選択して、実行していく。一日単位でふり返り(レビュー)が行われ、一週間単位でも行われる。それがグルグルと巡っていく。
こういう流れです。大部分はGTDと似ていますが、次の項目の存在によってかなり異なる振る舞いをみせます。
■アクティビティによるタスクの規格化
ポモドーロテクニックは、25分を一つの作業単位(アクティビティ)とし、それを「1ポモドーロ」と呼びます。2ポモドーロなら、25分の作業が二回分、3ポモドーロなら三回分、ということです。
この作業単位のおかげで、レビューが数値的に実施できます。「今日は5ポモドーロしかできなかった」「今週は合計40ポモドーロもできた」といった具合です。
GTDのレビューという作業は、扱う対象が包括的な分、そのイメージはずいぶんと曖昧になりがちですが、ポモドーロテクニックのレビューははっきりしています。この点について、少し詳しく説明しておきます。
人が仕事の中で行う行動は、さまざまに異なっています。私の場合でも、原稿を書く・他の人の原稿をチェックする・組版する・画像を作成する・メモを整理する、といくつも挙げられますし、それぞれの難しさや進みやすさは異なっています。よって、単に実行済みのタスクリストを眺めるだけではその評価はしづらいものです。
雑用のタスクを40個こなした日と、難しい原稿を一つ書き上げた日では、どちらが「仕事ができた」と言えるでしょうか。簡単ではありません。
しかし、どのような行動であれ、そこには実行が伴い、その実行には必ず時間という現象が伴うのですから、その現象の量に(つまり経過時間に)注目して規格化を図ろうというのが、ポモドーロテクニックの考え方です。
さらにすべての時間を計測するのではなく、「集中して作業に取り組んだ時間」だけを測定することで、情報処理に重み付けを加えているのも一つのポイントでしょう。
ポモドーロテクニックでは、アクティビティ以外の時間はレビューの対象にはなりません。この点が、[タスクシュート]とは異なっています。
■データをベースにした改善工程
上記の規格化により、レビュー作業がいわゆる「カイゼン」となります。
「毎週金曜日は、3ポモドーロしかできない」
この事実がわかれば、さまざまな仮説が立てられます。月曜日〜木曜日まで作業を詰めすぎているのかもしれません。木曜日の夜に飲みに行っているのが原因かもしれません。あるいは毎週行われている早朝会議が問題なのかもしれません。
何が理由なのかはわかりませんが、アクティビティのログが残っていれば、うまくいっていないところを見つけやすくはなります。少なくとも、何かしらの仮説を立てることはできますし、またそれを実証するための行動もとりやすくなります。
GTDのレビューでは、それを素直に行っただけではこうしたカイゼンはあまり進みません。当人がそういう問題意識を強く持っている場合は違いますが、そうでないならば、タスクリストを更新して終わってしまうでしょう。
■タイマーによる実行補助
この点は有名なのであまり説明は必要ないかもしれません。
作業を選び、タイマーをセットし、25分立ったら作業を終えて、5分間休む。
ポイントは二つあって、まずどの作業でも「25分間」で統一すること。これが上記のログやカイゼンを支えるので、必須な要素です。25分を30分に変えるのは問題ないでしょうが、作業ごとに時間を変えるとレビューが複雑になりすぎます。
また、見過ごされていることですが、実行に休憩がセットになっているのもポイントです。
人は意識的に休むのは難しいものです。本来は、疲れ切る前に少し休むのが効率的ですが、だいたいは疲れ切るまで作業して、その後ぐったりしてしまうことが多いでしょう。作業に集中する人ほど、そうなる傾向が強いように思います。
その点、ポモドーロテクニックでは、休憩がシステムの中に組み込まれています。これは実行している最中にはそのありがたさは感じにくいものですが(なにせあまり疲れないわけですから)、最近の私の体調不良とそれに対する「あまり作業を詰め込みすぎないようにしよう」という決意の無力さ──結局作業をやりすぎてしまいがちです──からするとたいへん強力であると思います。
「休みを仕組みに取り込むこと」
これはライブラリとして、他のフレームワークでも活用できる(あるいは活用したい)方針です。
■さいごに
今回は、ポモドーロテクニックを構成する要素について紹介してみました。肝となるのは、作業を計測(計量)し、それによってレビューを進めていく、という点です。これを変えてしまうと、ポモドーロテクニックではなくなってしまうでしょう。大切なポイントです。
では、次回は「マニャーナの法則」についてみていきましょう。
(次回に続く)
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