思えば遠くへきたものだ
揺れる電車の窓から外を見ていると、時々こころに焼きついた景色がぶわりと目の前に広がる。
あるときは耳にイヤホンを突っ込んで、あるときは直角の硬いシートに落ち着ける姿勢を探しながら、またあるときは寝て覚めたその後に、目の前に広がっていたその景色。
それをぼんやりと眺めながら、浮かんでは消え、消えては浮かぶ、たくさんの想いをそっと抱えながら過ごすその時間にこそ、旅しているという実感が詰まっていたのかもしれない。
どこへでもどこまでも行けるひとりの身軽さを、手放したくないと思っていたあの頃。
思えば遠くへ来たものだ。
右手と左手には、ちいさくてやわらかい、ぬくもりがある。
すすむペースはのんびりになり、背負うものはずいぶんと重くなった。
そしていまは。
ふたつのぬくもりと共に歩くよろこびを、ぎゅうっと抱きしめている。
Life is a journey.
まだまだ旅は、終わらない。
ここまで読んでくれたあなたは神なのかな。