坂と海と、路面電車と
小さな路面電車が、坂の多いこの街の石畳の上をすうっと駆けていく。
その風景をみながら、不思議な郷愁に駆られる。
思えば初めてのひとり旅は、受験のために訪れた長崎だった。
山と海が近いコンパクトな街を、緊張しながら少しだけ歩いてまわった。
意を決して入ったお店で、キョロキョロしながら皿うどんを食べた。
今はもう、知らない街をひとりで歩くことにもすっかり慣れた。
現地の人と小さく言葉を交わしながら、エッグタルトを頬張っている。
数ヶ月に渡るひとり旅は、一旦ここで終わりを迎える。
海を超えて繋がっていたふたつの街は、なんだかとてもよく似ていた。
明るくて、あたたかくて、懐かしい。
その風景をこころの中に描くとき、春のひだまりの光に包まれたように、ぽかぽかとした気持ちになるのだった。
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ここまで読んでくれたあなたは神なのかな。