待ち合わせはビール祭りで
「到着ゲート出たら、ふざけた帽子かぶったあからさまな酔っ払いおるし、え、ちょっと、知り合いちゃいますってなったわ。」
開口いちばんのツッコミに、思わず頬がほころぶ。
会場に着くやいなや、近くのテントに飛び込む。
「かんぱーーーい!!」
顔が隠れるほど大きなジョッキをかたむけ、喉を鳴らす。
「おいしーーー!!」
口元に白い髭をつけて、彼女の笑顔がはじけた。
こうやって、彼女と何度杯を交わしてきただろう。
大好きな音楽に身体を揺らしたあの瞬間も、真剣に仕事のことを相談したあの夜も。
こっぴどく振られて落ち込んでいたあの日も、大切な人を亡くして泣き暮らしていたあのときも。
いつだって最後には、ふざけ合って笑っている自分がいた。
「なんか、三ノ宮におるみたい」
お揃いの帽子をかぶった彼女が言う。
どこにおっても、あなたが居てお酒があれば、無敵やから。
恥ずかしくて言えなかったその言葉を、ビールでぐいっと流しこんだ。
ここまで読んでくれたあなたは神なのかな。