うつくしき世界をもとめて
日が低くなるにつれ、空が燃えるような色に染まる。
小高い丘から見つめる先には、ただただ砂地が広がる。
なにもない場所、だと思っていた。
誰もが知るような遺跡、憧れるような景勝地、有名なエピソード。
そんなピースしか、持ち合わせていなかったから。
なにもない場所、と括っていたのは自分だった。
優しい人たちの笑顔、人懐っこい子どもたち、おいしい煮込み料理、砂漠のなかにポツンと佇む給油機、ロバが歩くのどかな風景。
そんなピースで、いっぱいになった。
カラカラに乾いた空気のなかで飲むコーラは、絶対的においしくて。
遮るもののない地平線に沈む夕日は、どこで見たものよりもうつくしかった。
行ってみてはじめて、見えるものがある。
これだから、旅はやめられないのだ。
ここまで読んでくれたあなたは神なのかな。