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境界線が滲むとき

目が覚めると、周りがじわりと明るくなっている。
波の音に混じって、人の話している声が風に乗って届く。

テントを這い出すと、目の前の砂浜で洗濯をする親子の姿。
その隣では、鳥がバシャバシャと水浴びをしている。

未舗装の道は、うすっぺらいサンダルの足にもやさしい。
シートを引いた上に山積みにされたマンゴーの、甘い匂いを吸い込む。

バオバブの木陰で眠る、ぶち模様の犬を横目に歩く。
すうっと通り抜けて行く風が、心地よい。

湖から水揚げされた魚が、干されていくのを眺める。
カメラを見つけた子供たちが、撮って撮ってと大はしゃぎしている。


人々の暮らしを前に、ぽっかりと浮かんでいるようだったその感覚は
いつしか境界線を滲ませ、その生活にそっと溶け込んでいくようだった。


旅は日常で、日常は旅なんだなあ。

そんなふわふわとした気持ちが、凪いだ湖のうえに浮かんでいた。



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麦酒 ゆみ(ゆみっぺ)
ここまで読んでくれたあなたは神なのかな。