エッセイー「関西シリーズ」の覇者は?今年は阪神でええんちゃうの?
日本シリーズが佳境を迎えている。1日(水)の第4戦を終えて、阪神とオリックスのバトルは2勝2敗のタイに。今日2日(木)の第5戦(甲子園球場)で、勝ったチームが王手をかける。冷めた空気の関東地方とは対照的に「関西シリーズ」は熱く盛り上がっている。
10月28日(土)に京セラドームで幕を開けた、同シリーズ。初戦はタイガースが、3年連続沢村賞を獲得したバファローズの大エース・山本由伸を打ち砕き、7失点降板させる意外な展開を見せ、8-0で完勝した。筆者はこの夜、大阪・堺に位置する地元・鳳のバーで、呑んでいたが、京セラドーム帰りの3人組の若い男性と意気投合。彼らは、3塁側の阪神応援席に陣取ったらしいが、1塁側オリックス・応援サイドの大歓声もものすごく、観客の入りは5分5分だったという。
「オリックスは明日(29日)、宮城で来るから、阪神は1点取るのに苦しむんやない?」と水を向けると若者グループの1人が、「そうなんすよ。宮城のフォークとスローカーブは打ちにくい。ロースコアでいかれると、ヤバいっす」と苦戦を予想していた。
案の定、翌29日(日)は宮城が好投。6回を0点に抑え、オリックス打線も爆発して、1戦目とは逆に8-0のスコアで、1勝1敗のイーブンに戻した。
舞台を甲子園に移した第3戦。この夜筆者は、ハロウィンに参加するため、ミナミに出没していた。阪神の先発・伊藤がバント守備でミスを犯したこともあり、オリックスが優勢に試合を運ぶ展開だった。ただ阪神にも勝機はあった。道頓堀の街頭テレビでチェックしていたのだが、ランナー1塁で、4番大山が放った痛烈なサードゴロが、3塁手・宗の左腕に当たって手前に落ちた。宗は素早くボールを拾って2塁に送球、1塁走者を封殺した。
阪神にとっては、いかにもハードラック。この打球が少しでも逸れていたら、阪神はビッグチャンスを迎えるところだった。しかし、野球にタラレバは禁句だ。ほんのわずか、野球の神様がオリックスに微笑んだだけである。阪神の終盤の追い上げも空しく、オリックスが5-4で勝利した。
あくる1日、阪神は是が非でも勝たなくてはならない試合。初回、近本がヒットで出ると、中野が手堅く送り、1死2塁。このチャンスにルーキー森下が応える。左中間ツーベースで先制した。2回にオリックス・紅林のポテンヒットで同点とされるも、その裏、近本の勝ち越しタイムリーが飛び出した。
その後、阪神が内野ゴロで1点を加え、3-1とリード。しかし、オリックスの反撃に会う。7回、ランナー2,3塁から、宗のセンター前2点適時打を食らい、追いつかれてしまう。終盤は小刻みな継投でしのぎ合い、迎えた9回裏、オリックスのワゲスパックが大乱調だった。近本をフォアボールで出した後、暴投を連発。1死3塁から、中野、森下を申告敬遠し、1死満塁と走者を埋めた。
この好機で、前夜最後の打者に倒れた4番大山が、名誉挽回とばかりに打席に立った。制球に苦しむワゲスパックの投球を慎重に見極め、ファウルで粘る。7球目のツーシームにうまく身体が反応し、三遊間を抜いた。大山は万歳しながらサヨナラの歓喜の輪に連なった。
最終スコアは4-3。この勝利で、2勝2敗のがっぷり四つになった。2日の先発は、阪神が今季12勝と勝ち頭の大竹。一方のオリックスは、サウスポーの田嶋だ。声援が分かれる京セラドームとは対照的に、マンモススタンドがほぼ阪神ファンで埋め尽くされる甲子園。地の利を生かし、阪神が先に王手をかけるか、それとも昨年の覇者・オリックスが逆境をはねのけるか。ファンでなくても楽しみな大一番だ。
ここまで、熱戦の展開を詳細に書き記してきたが、筆者であるわたしは何を隠そう、実は熱烈な巨人ファンなのである。阪神のおひざ元・大阪に暮らすわたしは、公然とジャイアンツ愛を語る機会が少ない。今年もBクラスに沈み、3年連続で優勝を逃した失意から、阿部監督を迎える来年こそはと、雪辱に燃えている。
わたしの阪神を見る目は複雑だ。幼いころから友達は阪神ファンだらけ。ホームランバッター・王さんに憧れて、巨人ファンになったものの、東京へ応援に行く機会もなく、関西のテレビは阪神一色とあって、いきおい阪神通にもなる。
一般的に言って、阪神ファンは東京が嫌いだ。アンチ東京の心理が働き、当然アンチジャイアンツとなる。甲子園球場での阪神-巨人戦ともなれば、巨人を目の敵にしてヤジを浴びせかける。こんな事情もあり、実はわたしは、阪神球団は好きなのだが、阪神ファンが嫌いなのである。こんなファン心理を、ご理解いただけるだろうか。
話を戻そう。今年は阪神が18年ぶりに優勝した。日本シリーズに出場し、覇者となれば、1985年以来実に38年ぶりのこととなる。わたしは巨人ファンだが、優勝に飢えた阪神ファンに同情し、勝たせてあげたいのである。オリックスは昨年日本一になったから、もういいではないか。今年は阪神の番だ。阪神ファンは嫌いだが、めったに優勝できないチームに日の目を見させてあげるのも、またファン心理なのである。
哲ちゃん