沼人魚(1/2)

子供のころ、僕はいつも一人で遊んでいた。
村の誰も知らない秘密の場所、入ってはいけないと言われた廃神社の裏山にある名前も知らない沼の畔で……。

(R-18G小説・性的描写、去勢、怪異)

■1

 子供のころ、僕はいつも一人で遊んでいた。
 村の誰も知らない秘密の場所、入ってはいけないと言われた廃神社の裏山にある名前も知らない沼の畔で……。
 山の奥から聴こえてくる不思議な歌声に導かれ、そこで出会った不思議な少女に恋をした。
 沼の水面で緑色の髪をなびかせながら、美しい声色で歌う少女に恋をした……。
 僕は毎日、毎日、幾年かの間、彼女の歌声を聴きに沼に通った。
 やがて、彼女の乳房が薄く透き通った布地から溢れるほど膨らんだ頃、僕はそれを強く意識するようになった。
 家に帰り、寝床に入っても忘れられないその美しい姿、透き通った声に僕は心から魅了された。
 彼女は僕の事に気付いている、しかし、何も反応を示さず歌い続ける。
 僕はただただ、その歌声を聴き続けた。
「あの娘と一緒になりたい」
 日に日にその思いが高まり、どうしても僕は我慢できず彼女に声を掛けた。
「君は、誰なの?」
 僕の問いかけに彼女は歌うのをやめ、ゆっくりとこちらに視線を向けた。
 その美しく透き通った水色の瞳に捕えられた僕は思わず息をのんだ。
「私は琴音」
「僕は雅美……君は、人なの?」
「フフッ」
 僕の問いかけに笑みを浮かべると、次の瞬間、彼女は静かな水滴の音と共にスルリと沼の中へと消えた。
「待って!」
 僕の声は彼女に届かず、水面には彼女の残した波紋だけが残った。
 何時間も待ち続けた、しかしその日に彼女が再び現れることはなかった……。
 僕は後悔した。
 彼女に声をかけてしまったことを激しく後悔し悔みながら、沼を後にした。
 そして廃神社の裏手までたどり着いた時、ふと背後に人の気配を感じた。
「お待ちさない」
「えっ!?」
 あわてて振り向くと、そこには一人の巫女が立っており僕は驚いた。
 腰まである長い黒髪、美しい顔立ちの巫女、その顔を村で見かけたことはなかった。年は僕より何歳か上だと感じた。
「あ、あなたは誰?」
「私は代々、沼人魚を守っている巫女のアヤメ」
「沼人魚?」
「そう、君が出会ったあの娘のことよ」
 この巫女はあの娘の事を、琴音の事を知っている。
 また琴音に会えるかもしれない、僕は少し心が躍った。
「あの娘のことを知っているの!」
「ええ、知っているわ」
「会いたい! 僕は琴音に会いたいんだ!」
 僕は巫女の手を取り、琴音に会わせてほしいと必死に懇願した。
「もちろん会えるわ……君はあの娘に選ばれたのだから」
「選ばれ……た?」
「さあ、こっちに来なさい」
 僕はその巫女に手を取られ、廃神社の戸を潜り、その社殿の奥へと案内された。

■2

 社殿の奥は山腹の洞窟へと繋がっており、古ぼけた灯篭に火を灯しながら奥へと進んだ。
 やがて周囲が広くなり、大きく開いた天井から月明かりが大きな沼の水面を照らしていた。
 僕と巫女は階段のように削り取られた岩場へとたどり着いた。
「ここは一体……」
「ここは沼人魚たちの住む場所、村の人たちには決して知られてはいけない場所よ」
 沼をよく見ると、いくつかの人影が見える。
 更に目を凝らしてよく見ると、沼から上半身を出した女達がこちらへと向かって泳いで来るのがわかった。
 その先頭にいたのは琴音だった。
 琴音は僕の姿を見つけると嬉しそうな表情になり、声を上げた。
「雅美、来てくれたのね!」
「琴音!」
 僕は琴音との再会に嬉しさが込みあがり、沼の階段を駆け下りた。
 そして、驚き、思わず立ち止り息をのんだ。
「人……魚」
 琴音の下半分、下半身は虹色の鱗で覆われた魚の姿をしていたのだ。
 もちろん、琴音が普通の存在ではないことは頭の中ではわかっていたのだが、僕は動揺した。
 琴音の姿を見て僕の驚いた表情に、琴音は瞳を反らし、悲しい表情へと一変した。
「私は……沼人魚、人ではないの」
「……あ、ああ、もちろん、そんな気はしてたけど……本当に見るのは初めてだから、つい」
 気まずい雰囲気が漂う。本当はその手を取り、僕の思いを伝えたかったはずなのに。
 いや、僕の気持を伝えたい。心からそう思い決断した。
「琴音、僕は君の事が好きだ! 人魚でもかまわない、僕は琴音が好きだ!」
「雅美!」
 僕はさらに階段を下りて腰まで沼に浸かり、そして琴音の手を取り、抱き寄せた。
 声を交わすのは今日が初めてだが、何年もの間募り続けた思いは琴音も同じだったようだ。
「ああ、嬉しい! 雅美! 好き……私も愛しているわ」
 初めてこの腕に抱いた琴音の肌は艶やかで、そして冷たかった。
 その肌が僕の体温でほのかに温まるまで、僕は琴音と抱擁し続けていた。
 そして、僕たちの姿を見つめていた巫女が口を開いた。
「琴音、雅美君……」
 僕と琴音はその声に我に返り見つめあうと、抱擁をやめて思わず赤面した。
「琴音、本当に彼でいいのね? 引き返せないわよ?」
「うん、雅美のことが好き」
 引き返せない?
 その言葉が僕の心に引っかかる。
「雅美君、君は琴音のことを本当に心から愛してる?」
「も、もちろんです! もう、何年もその思いは変わりません」
「もう引き返せないわよ? いいの?」
 再び巫女の口から出た引き返せないという言葉に僕は
「引き返せないって……一体」
「あなたは沼人魚の琴音と添い遂げるのよ? その意味はわかるわね?」
 添い遂げる、つまり夫婦になるということだろう。
 僕は何年も、琴音以外の女の人に興味を持つことはなかった。
 憧れ続けた琴音と一緒になれるのなら、村に帰れなくても構わない、その覚悟は出来ている。
「もちろんです、僕は琴音と一緒にいたい」
 僕は自信を持って巫女にそう答えた。琴音もその言葉に喜んで僕の手を握り締めた。
「そう、どこまでわかってるのかしらね……いいわ、夫婦の儀を始めましょう」
「え? 今から?」
「そうよ、今日が沼人魚の夫婦の儀を行う日だから……君が琴音に声をかけたのもきっと神様の導きよ」
 巫女は入り江に作られた祭壇に明かりを灯すと、儀式の準備を始めた。
 すると、他の沼人魚が二人ほど僕の傍へと泳いできた。
「さあ、こちらへ」
 僕は両腕を抱えられ、沼の中を祭壇の真正面へと連れて行かれた。
「雅美君、服を全部脱ぎなさい」
「えっ! 服を?」
「ええ、そうよ。全部脱ぎなさい」
「そ、そんな……」
 巫女や琴音だけでなく、大勢の女の人が居る前で裸になるなどという恥ずかしいことを僕は拒んだ。
「まだわかってないようね……あなたの裸を見たって沼人魚たちは恥ずかしくもなんともないのよ」
「恥ずかしくない?」
「聞くけど、お魚にはオチンチンは付いてないでしょう?」
「えっ? そ、それはそうだけど……」
 急に魚の話を始めた巫女に僕は困惑した。
「沼人魚には最初からついてないもの、存在しないものだから恥ずかしくないのよ」
「いや、だってみんな女の人だから……!?」
 そうだ、今ここにいる沼人魚には女しかいない。
 その不思議な状況に今気付いた。
「わずかだけど、沼人魚の男も生まれるのよ、もちろん彼らにオチンチンなんて付いてないわ……そして、すごく短命なの」
「短命?」
「そう、可哀想だけど成熟して子作りをしたらすぐに死んでしまうのよ」
「そんな……」
 子作りをしたらすぐに死んでしまう……彼らはそれだけの為に生まれてくるのか。
「それで僕を……」
「いいえ、違うわ。あなたは人の血を沼人魚に注ぐために選ばれたのよ」
「人の血って!?」
 僕の血を沼人魚に捧げると聞き、僕は生贄にされるのかと思い声を上げた。
「言い方が悪かったわね。沼人魚が存続する為には大体一世代ごとに、人の子種が必要なのよ」
「僕の子種が……」
「そう、だから大人の体になる今日まで琴音は君の心を魅了し続けたのよ」
「魅了って……違う! 僕は本当に琴音のことが好きなんだ」
「そうね……ごめんなさい」
 巫女と会話をしている最中も、僕は沼人魚たちに一枚ずつ衣服を脱がされていた。
 そして最後の一枚が剥がされたとき、人魚たちは僕の腕を後ろ手にすると巫女の方を向くように言った。
 巫女は僕の股間へと視線を落とすと、そこをまじまじと観察した。
「そんなに見ないでください……」
「私はそんなものは見慣れてるから気にしないで……うん、もう大人の体になっているわね。もちろん射精はするのよね?」
「えっ! は、はい。しますけど……」
 沼人魚たちは平然とした表情で僕の股間を見つめている。
 祭壇の真横に腰掛ける琴音も嬉しそうな笑顔でそこを見つめていた。
 琴音にチンポを見られている……そう意識すると僕の心臓がバクバクと躍り、チンポへと血液を送り始めてしまった。
「待って……琴音見ないで、恥ずかしいよ」
「え? どうして? まだ恥ずかしいことはしていないわ……雅美のそれ、その棒がすごく腫れて痛そう、大丈夫?」
 僕のチンポは完全に上を向き、軽く脈動しながら起立している。こんな恥ずかしい状況は生まれて初めてだ。
 巫女は少しニヤニヤしながら僕の反り起ったチンポを凝視している。
「あらヤダ、好きな娘に見られただけで起っちゃうなんて若いっていいわね」
「そんな、見ないでください……」
「私の旦那より大きわ、羨ましい……でも君のオチンチンはもう使わないから、大きさは関係ないわね」
「旦那って……巫女なのに?」
「代々ここを守ってるって言ったでしょう? 子作りしないと代々守れないんだから結婚するに決まっているでしょう」
 いや、問題はそこではない。
「待って、チンポを使わないってどういう意味?」
「まだわからないの? お魚の交尾ぐらい知っているでしょ?」
「えっ!」
「琴音と寄り添って、彼女の卵に君が精子をかけるのよ、わかるでしょう?」
「ヤダ、アヤメ……恥ずかしいから言わないで!」
 巫女のこの発言に、琴音が顔を赤くして急に照れながら声を挟んだ。
「で、でもチンポがないと精子が出せないよ!」
「でもね、君のオチンチンは琴音にとって危ないものなのよ、わからない?」
「そんな、わからないよ!」
「君のその立派なオチンチンがもし琴音の大事な部分に刺さったりしたら、彼女は二度と卵が産めなくなるかもしれないのよ?」
「じゃあどうすればいいんだよ!」
 僕の質問に巫女は立ち上がり、真剣な表情で木箱から一つの道具を取り出した。
 それは見るからに切れ味のよさそうな短刀だった。鞘から抜かれたその刃先が月明かりに照らされて鈍く輝く。
「え! ま、まさかそれで……僕のチンポを?」
「そうよ、これで君のオチンチンを切ってしまうのよ」
「そっ! そんなの嫌だ! 嫌だ嫌だ嫌だっ!」
 僕はチンポを切られると聞き、その場を逃げ出そうとしたが数人の沼人魚たちに両腕、両足を押さえられ身動きが取れなかった。
「だから言ったでしょう? 引き返せないわよって」
「そんなこと言ったって! チンポを切るなんて酷過ぎる!」
「そうね……若い男の子がオチンチンを切られるのが辛い事ぐらい私もわかっているわ、でも、琴音のことが好きなんでしょう?」
「す、好きだけど……好きだけど……チンポがないと」
 巫女は祭壇から沼へ下り、琴音を僕の傍へと連れて来た。
 そして優しそうな表情で僕をなだめる。
「私も大人の女だから、君がそのオチンチンで琴音と愛し合いたいって思う気持ちは良くわかるわ」
「だったら……」
「でも琴音は沼人魚なの、その邪魔なオチンチンを切らないと彼女とは一生愛し合えないのよ? それとも琴音を好きって気持ちは嘘?」
「う! 嘘じゃない! でも……チンポを切るなんて……嫌だよ」
 巫女は琴音の方へと視線を移すと、こう問いかけた。
「どうする琴音?」
 琴音は少し悩んだあと、僕の方を見つめ口を開いた。
「雅美……そのオチンチンっていう棒は、雅美の宝物なの?」
「宝物だよ! これは僕の男の証拠だから……」
「そう……宝物なんだ、じゃあ取られちゃうのは……辛い、よね……」
 琴音はその美しい瞳に涙を浮かべると、巫女にこう答えた。
「アヤメ……雅美の宝物じゃなくて、私の宝物を取って」
「……本当にいいのね?」
 巫女が他の沼人魚に合図をすると、僕と同じように琴音を押さえつけた。
 そして、巫女は先ほどの短刀を手にすると、琴音の傍へと立った。
「ま、待って! 琴音に何をするんだよ!」
 巫女は冷徹な表情で僕を見つめると、一呼吸おいてこう答えた。
「君の宝物……そのオチンチンの代わりに琴音の宝物を……あの素敵な歌声の元を取るのよ」
 巫女がその刃先を琴音の喉元へと近づけると、琴音は小刻みに震えた始めた。
 その涙が月明かりをキラキラと反射しながら、沼の水面へとポロポロと流れ落ちる……。
「ま、待って! 待って! 一体どうして!?」
「君には理解できないでしょうけど、沼人魚から歌声を取ると、少し年月をかけながら人に変わるのよ」
「琴音が、人に?」
「ええ、そうよ……でも琴音は一生歌を歌えないだけでなく、喋ることが出来なくなるのよ」
 琴音が人に変わる。
 琴音が人に変われば、普通の男女のように愛し合える……僕のこのチンポで愛し合える。
 僕は、その事に少し期待してしまった……残酷な儀式に期待をしてしまった。
 しばし、沈黙の時間が流れる。
「琴音、最後に言い残すことはない?」
「あるわ……雅美のことが好き、愛してる」
 琴音はそう言い残すと、目を閉じて巫女の持つ短刀の刃先へと喉を突きだした。その瞬間、大粒の涙が沼に落ちて大きな波紋を残した。
「やめてくれっ!!」
 僕は沼全体に響き渡るほどの大声で、その儀式を止めさせた。
 僕はわけもなくボロボロと涙を流し続けた、愛しているはずの琴音に酷い思いをさせようとした悔しさなのか。
 それとも、今からチンポを失う悔しさ、情けなさの涙なのか、それは自分でも判らなかった……。
 巫女は短刀を鞘に戻し懐に納めると、僕の傍へと歩み寄り、僕の頭を優しくなでながらこう言った。
「偉いわね……」
 琴音も僕の傍に寄り添い、後ろから抱擁してくれた。
「ごめんね雅美……私が雅美を好きになったから、宝物を取られちゃう……可哀想」
 長年憧れ続けた琴音にギュウと抱きしめられ、その膨らんだ乳房が背中を圧迫する。僕はもう何も考える事を止めた。
「琴音、そのまま雅美君のオチンチンを……宝物を握ってあげて」
「え? こう?」
「あっ! 待って、待って!」
 僕は琴音に後ろ手でチンポを握られ、一瞬動揺してしまった。
 萎えかけていたチンポはすぐに起ち上がり、琴音の指先を押し返した。
「凄く熱い……雅美のこの棒、凄く痛そう! こんな棒が雅美の宝物なの?」
「大丈夫だよ、痛くないから……逆に気持ち良い」
 僕はそう言いかけて、今更ながら赤面してしまった。

 その表情の変化を見て巫女が笑いを堪えるのがわかった。
「琴音、人の男はオチンチンが気持ち良くなって子種を吐き出すのよ」
「え? ここから子種を……ヤダ」
 琴音は急に恥ずかしがりながら、より強く僕の体を抱きしめたのがわかった。
 巫女はその様子を見ながら、琴音にこう指示をした。
「琴音、ゆっくりと手を動かしてあげて」
「こ、こう? 雅美の宝物、気持ち良い?」
「ま、待って琴音、出る……出ちゃうよ」
 琴音の指先で不器用に愛されるチンポからは我慢汁が溢れ、ポタポタと沼へと落ち始めた。
 他の沼人魚たちは本能からなのか、それに反応した。
 巫女さんは琴音の手の上からそっと手を乗せ、一緒にチンポをしごき続けると同時に、短刀の刃先を付け根へと近づけた。
「(ああっ! 切られる! 僕のチンポが切られる! 無くなるっ! 怖い! 怖い! 嫌だー!)」
 僕は全身の筋肉に力を込め軽く痙攣を起こし、チンポを切られる恐怖からそこが萎え始めてしまった。
 萎えるチンポを見て巫女が琴音にこう囁いた。
「琴音、彼の為に歌ってあげて」
「……♪」
 嗚呼、あの美しい歌声が僕の耳元のすぐ傍で響いている。
 初めて出会ったあの日から、年頃になってから一層狂おしく愛おしく感じた、あの声色が僕の全身を突き抜ける。
「嗚呼……琴音、琴音……愛おしい」
 その歌声が僕の体の内側から全身を、チンポとタマを震わせるように刺激して、今までにない大きさで起ち上がった。
 そして次の瞬間、琴音の指先と歌声で僕は絶頂を迎え、全身を震わせながらチンポで感じる最後の快感を味わった……。
(ドクッ……ドクンドクンドクンドクン……)
 今までにない大量の白濁液がチンポの先端から沼へと流れ、その一帯を白く濁らせた。
 周囲で見ていた沼人魚が一斉にそこに集まり、その白濁液を頬を紅潮させながらでじっと見つめている。
 最後の数滴が出るか出ないかの余韻を味わっていると、巫女は小さくごめんねと呟くと顔を背け、軽く目を閉じながら、その短刀の刃先をチンポに滑り込ませた。
 サクッという嫌な感触と共に、僕の宝物であるチンポは切り離され、琴音の手の中に残された。
「あ……熱い」
 僕はチンポがあった部分に急に熱を感じると、次の瞬間さらに大量の白濁液を吐き出すと共に、血が流れ出る音を聞いた。
 巫女は琴音から切り離した僕のチンポを受け取り、代わりに短刀を琴音に手渡した。
 すると、琴音はその刃先で指先を少し切り裂き、そのまま僕の唇に押し当てる。
「雅美、これを飲んで」
「うぐっ、ぐっ……コホッコホッ」
 僕は琴音の血が喉にどんどん染み込むのを感じた。
 すると不思議なことに、チンポの切り口に感じていた熱は収まり、流れ出る血の音も消えた。
「雅美君、気分はどう? 大丈夫?」
「雅美、痛くない?」
 巫女と琴音に心配され、僕は軽いショック状態で項垂れながらも、軽く頷いて返事をした。
 しばらくの間、祭壇の前に寝かされ落ち着きを取り戻すと、琴音が心配そうに声をかけてくれた。
「雅美、宝物を取ってしまってごめんね……愛してる」
「……」
 僕は琴音に何も答える事が出来なかった。
 大丈夫と言いたかったけれど、チンポを失った衝撃は想像以上に大きかった。
 そんな僕に巫女が残酷な言葉を浴びせる。
「ほら新郎さん、しっかりしなさい! オチンチンが無くてもキンタマがあるんだから男でしょうが!」
 そして、祭壇の上に僕のチンポが飾られているのを見て、一瞬仰け反りそうになった。
「な、なんで僕のチンポを!」
「なんでって言われても、切ったオチンチンを御神体にするのが沼人魚の夫婦の儀の習わしなのよ」
「夫婦の儀って、今終わったんじゃ……」
「まだまだ、これから始まるのよ? 三日三晩、昼夜問わずお祭りよ」
「三日三晩……」
 僕はチンポを失って心の奥底から落胆していると言うのに……その気持ちを理解してくれる者は一人もいなかった。
 沼の奥から数十人の沼人魚達が現れ、どこから調達したのか豪華な料理と酒で宴の準備がされた。
 僕と琴音は正装に着替えさせられ、巫女の導師で夫婦の儀を執り行った。
「琴音、愛しています」
「私もです、雅美……」
 僕は僕のものだったはずのチンポに深く礼をしながら、その元で琴音と唇を重ね、一生添い遂げることを誓い合った。
 僕は一度も女の人と交わらないままチンポを失ったことを後悔した、人生最悪の不幸だ。
 でも、憧れだった琴音と共に過ごせるのは、この上ない幸福だ。素直にそう感じた……。