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『ドーキンスが語る飛翔全史』レビュー
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『ドーキンスが語る飛翔全史』
リチャード・ドーキンス(著/文) ジャナ・レンゾヴァー(イラスト) 大田直子(翻訳)
🐥
あの『利己的な遺伝子』のリチャード・ドーキンスが、空を飛ぶこと、
つまり、地面に張り付いた二次元的な行動から三次元的に空へ向かうこと、<飛翔>そのものをテーマにして、その歴史を、生物学的に、科学的に、それとちょっぴり哲学的にとことん語っている本です。
大空を自由に飛ぶ鳥たちや、虫たちがどのようにして翼を持ち、飛行するように進化してきたのか。(そして、ダチョウや羽蟻のように、本来なら飛べたハズの生き物がまたなぜ翼を失っていったのか)
ドーキンス先生一流の進化論、自然選択・淘汰圧や生存コストの面から語られる、ちょっと目からうろこで驚異的な生物の進化プロセス。
さらにニュートン力学やベルヌーイの定理あたりを解りやすく説明して
航空力学からみた生物の飛び方や、人類がテクノロジーで生み出してきた航空機たち、果ては大気圏を飛び出していく宇宙ロケットまで、それぞれに対する興味深い考察が山盛りです。
(話題の所々で「ちなみに」と言って出してくる無関係なようで関係深いちょっと脱線した逸話もなかなか面白いですw)
ドーキンス先生は、生物(やテクノロジー)が、生きぬくため、いえ、単体の命だけでなく、その存在を後世につなぎ、DNAを保存していくためにどのように必死に、より高く、より遠く、そして、より安全でより低コストにするべくその肉体の性能を向上進化させていったか。を、<飛翔>というただ一点から明解にひもとき、読者を導いてくれます。
『利己的な遺伝子』の論考のせいでけっこう宗教的な人々からは批判されているドーキンス先生ですけれど、
固い殻を割って外界に生まれた雛がやがて大空へはばたくように、生き物も、技術も、進化の目指す先は重力の束縛から逃れることなんじゃないかなと、そんなロマンを感じられる本でした。
原題も「FLIGHTS of FANCY」ですからね。
科学者的なロマンチシズムにあふれた素敵な本なのです。
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ジャナ・レンゾヴァーさんのカラーイラストもたくさん入っていて素敵。この版型ではめずらしい全頁フルカラー印刷で紙質も最高!
これは、物理本を本棚に並べたくなります。
(そのぶんちょおっとお高いんですけどねー><)
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