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『着眼と考え方 現代文解釈の基礎』レビュー

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『着眼と考え方 現代文解釈の基礎』新訂版

遠藤 嘉基(著/文) /渡辺 実(著/文)

いきなり教本の紹介です。

そして、いきなり裏表紙の紹介文張っちゃいます。

半世紀近くにわたって読み継がれた、至高の現代文教本がここによみがえる! 「文章を読む」とは、書かれた言葉の何を拾い上げ、それらをどう関係づけることなのか――。数々の小説や評論を題材に、重要な箇所をどのように見分けるかを、実演を織り交ぜながら徹底的に解説する。本書は、「文学的な文章」「論理的な文章」の2パートに分かれ、高校教科書の定番教材も多数収録。読者は、目の前にある文章について、内容や表現だけでなく、その表現を選んだ書き手の感性や想像力までも、つかめるようになるだろう。                      解說 読書猿

そう、この本は、半世紀近く読み継がれた、至高の現代文教本なのです!
それが、大復活なのですよっ!!!(強調)

◇ ◇ ◇

さて、いちおう、日本人たるもの、日本語の読み書きぐらいはふつう、できますわね。今使われている日本語の文章、つまり、現代文ってやつです。

私は手で文字を書くのが下手っぴで、手紙はプリントアウトだし、漢字はいつもスマホかパソコンに変換してもらっている手合いなんですが、それでもキーボードさえあればちょっとした文章ぐらいは書けるし、読むのはむろん大得意。のつもり、です。

でも、考えてみるとちゃんと勉強をした覚えはあんまりなかったりします。

なんとなくできていた、から、まあこれでいいんだろう。ってずっと思っていました。

読書猿さんも解説の冒頭で

「国語なんてものを、まだ学ばないといけないのか」と思ったことがある。
 たしか中学に上がった頃、「日本語で書かれたものなら、もう何だって読める」と思いこんでいた。

とおっしゃっています。これ、ワタクシです。そのまんまです。ちなみにいまだにそうなので、きっと中二病どころかちゅーいち病なのですw(ま、それは置いといて)

しかし、よくよく考えてみると、まともに学んだことがない日本語の文章を、ただ読めるからと言って、その文はほんとうに正しく読めているのか、どう解釈するのが本当に正しいのか。つきつめていくとやっぱり絶対的な自信はないことに気が付くのです。

学びは建物と一緒で、前提の基礎が間違っているとちゃんと建たなかったり、上の階層に進めなかったり崩れちゃったりしていろいろと危険です><

この際、ちゃんとしっかり学んでおきたい。

そう思って手に入れたこの本。読んで見ると、これがまためちゃくちゃ面白い! 学ぶのが本気で楽しくなってくる本なのでした。

有名な文学作品等から抜き出した文章が例示されて、内容はもちろん、なぜ著者がその表現を使ったか、著者の感性や想像力を「正確に」推し測る方法を、数々の例題を通して学べる。正しい読み方、解釈の仕方を身に付けられるようになっています。

その都度、なんでそうなるかの答え合わせ、解説がきっちり行われるので、なんだか巧妙にできたパズルを解いている感覚、名探偵と一緒に事件にたちあっているような、優秀なミステリー作品を読んでいるような気分になってきます。これがまた楽しい。知的興奮が味わえるのです。

そして! これはちょっとナイショにしておきたいところなんですけどw この本、現代文の読み方、解釈についての学習書なわけですが、この「読み方」をひっくり返せば、そのまま「書き方」になるのですね。つまり、「正しく読み取ってもらえる文章を書ける」ようになる。ということ。読み手の技術だけでなく、書き手の技術の習得にもばっちりつながります。これは小説書きに限らず人に読ますための文章を書いている方には必須の能力です。基礎がぐらついていたら怖くて文を発表なんてできません。そうした「文を書く」ことの基礎体力をしっかり正しく身につけさせてくれるわけです。これは文章書きなら絶対読んで身につけて実践するべきです! あんまりみんなに文章うまくなってほしくないからやっぱりこれナイショですけど!!w

「文学的な文章」「論理的な文章」の2パート、それぞれ基礎の基礎の簡単なところから、高度な内容に順にすすめていける構成になっているのも良いですねー。小説書きなら前者を、論文とか書きたい人は後者を重点的に学習するって手もありそうです。

ところで、この本、かのベストセラー『独学大全』

↑で著者の読書猿さんが絶賛していた本なのですよ。

で、読んでみたくてずっとさがしていたのですが、長い間絶版状態で、ちょっと前まで古本であっても1万円以上する超レア本だったのです。

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↑こんなかんじ。

それが、このたび、文庫版になり、とってもお安くなって大復刻!!

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いやほんとありがたいです。『独学大全』の中では図書館で借りるシーンが書かれてたのですけど、うちの近所の図書館には入っていなくて、国会図書館にでも行くしかないかあ。なんて思っていたところだったので、個人的にですがとても助かりました。

しかし、なんでこんなに良い本が絶版で長いこと入手困難だったのでしょう?

その背景には、どうやら日本の国語教育の簡易化があったようです。

昔は、今よりも国語教育がしっかり行われていて、この本に書かれている内容レベルの学習が学生さんに課せられていたそう。(大変だったでしょうけど、今からみると逆に「いいなあ」ってかんじですw)
この本は、現代文はこのくらいしっかり勉強して、入試に備えましょうね。という意味での参考書だったよう。
ところが、時代は変わり、学習要綱も変わり、入試の難易度はぐっとさがり、出題傾向も変わってしまったせいで、この、至高の現代文教本も「ここまでは要らないでしょ」と、無用の長物になり、売れず買われず、ついには絶版になってしまったのだそうです。

突然関係ない本引っ張ってきますが、ワタクシが勝手に私淑ししゅく(って言葉も『独学大全』で教わりました!)している数学者の吉田武先生は、そうした簡易化、安易化していく教育はイカガナモノカと世に訴えて、大著『虚数の情緒』で、『(学習の)中身を減らして時間を減らせば、やがてそれは消滅にいきつくほか道はない』、と書いています。円周率を「およそ3」で計算していたらまともな円など描けやしないのです。『虚数の情緒』は数学の本コーナーに売られていますが、数学と同様に大切なのは「国語」であると真っ先に書かれていて、本の前半はもっぱら「国語」の話題です。問題文の日本語を正確に読み取ることができなければ、正しい解答が導けるはずもない。というわけですね。このあたりの感性が、とてもこの『現代文解釈』に通ずると感じました。

閑話休題。

円周率が3では(よほど幸運に恵まれない限り)正確な円にならないように、いい加減な基礎の上にしっかりした建物が建てられないように、国語の基礎も、しっかりちゃんと、正確に、正しく、学べる環境をせめて用意しておいてほしいものだと思います。ぐらつく基礎の上では大著も論文も、自信をもって書けなくなってしまいます。というのは先ほども書いた通り。(ナイショですけどね!)

そうしたわけで、本書の復活は、とてもとても意義がある、たいへん立派なことだと思います。新訂版復刊の英断をしてくださった ちくま学芸文庫さま、そしてその後押しをしてくださった(であろう)読書猿さま、大感謝です! とてもとても、ほんとにありがとうございます。

なんて、こんなところで熱い思いを長々と書いちゃいましたがw

一文にまで強引に要約してしまえば、この本は、『日本語を読み書きする人すべてが、読んでおくと格段に「読む能力」も「書く能力」もレベルアップできるスゴイ本』です。

今度もまた絶版になんてならないように、みんなで買いましょうw
絶対おすすめ! マストバイ!(これ日本語ちがうw) です!

てか読んだら面白いんだから、マジで!(日本語乱れてるなあw)

―――

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