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『言葉』を得たことによる『副作用』【儀式論 第14章 人間と儀式】

長く紹介してきた儀式論も
最後の章になりました。

第14章は人間と儀式です。

今日はその中から
人間が「言葉」を得たことで
生まれたもの
そしてそれと引き換えに被った
副作用について紹介します。

生まれたもの「新しい世界」

人間が言葉を得て新たに
生まれたもの…それは
「新たな世界」だと言います。

人間は言葉というものを所有することによって、現実の世界で見聞したり体験したことのない、もしくは現実の世界には存在しない抽象的イメージを、それぞれの意識の中に形づくることができる。

P526

言葉を得たことで
経験していないもの
そもそも存在していないもの

意識の中にイメージできる
ようになった

そして、そのイメージを具現化するため
自らの肉体を用いて自然を操作した
そして文明が生まれてきた…というんです。

この能力のおかげで
今現在までの人間の発展がある
というわけ
です。

言語をもったことによる副作用「分離の不安」

言語を持つ前の人間は
他の動物と同じく、
自分を宇宙・自然の一部だと
認識していました

しかし、言語を持ち
意識を持ったことで
自分がこの宇宙で分離され
孤立した存在であることを知った

…というわけです。

想像の世界…という
新しい世界
を知ったことで
この宇宙そのものとの
繋がりが薄くなったように
感じる…ということですね。

これを「分離の不安」といいます。

不安があれば、除去しようと
努力する
のが人間です。

この不安を除去しようとする努力
文化の原点であり
哲学・芸術・宗教に発展して
いきました。

つまり

言語は

文明を産む原動力
となった一方で
副作用として「分離の不安」が生んだ

その「分離の不安」を除去するために
生まれたのが文化

ということになります。

芸術・哲学・宗教

芸術・哲学・宗教が同じように
言語による「分離の不安」から
生まれた、という話をしました。

言語によって
「分離の不安」が生まれたなら…

一旦、言語を操る理性・知性から
感性のレベルに戻って
不安を昇華しよう
…として
生まれたのが「芸術」

言語をさらに使いこなすことで
真理を求め、悟りを得よう
としたのが
「哲学」

祈り、瞑想、座禅などの行為を通し
絶対者、この世の創造者に帰依して
悟りを得よう
としたのが「宗教」

このように分類できるわけです。

まとめ

人間は言葉を得たことで

経験・現実を超えた
新たな世界を得た

そのことにより
文明が生まれ人間は発展した

一方で、宇宙・自然からの孤立
分離の不安も生まれた

分離の不安を除去するために
生まれたのが文化…
すなわち、芸術・哲学・宗教だった。


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