ヒトラーの『師匠』ル・ボン【C・リンドホルム『カリスマ』⑧】
前回までウェーバーとデュルケムの
話をしてきました。
二人の理論の共通点は
カリスマへの没入には
原初的な『自己喪失』の衝動が
大きく関わっていること
カリスマにおける
「感情的高揚」が重要であること
でした。
しかし、ここまでの話では
「なぜ、カリスマが人に訴える力を持っているのか」
というところが語られていません。
今日は、その点について
『群衆心理学』の観点から
説明したル・ボンの話をしていきます。
…
ル・ボンの語る『群集心理』は
大衆を扇動するにあたって
非常に有効な知見を与えてくれるものです。
私のnoteでも、以前に扱ったことがあります。
群集心理の考え方も
デュルケムと同様に
人間は集団的存在である
ということを前提としています。
個人の好み、考え方が集まって
それが集団としての考え方を
作る…ということではなく
集団には集団特有の性質がある
ということです。
デュルケムとの違いは…
集団の傾向に関し
デュルケム→自発的な創造
ル・ボン→知性を欠いた反復
だと言っているわけです。
ル・ボンの方が
集団に関して悲観的に見ている
ということですね。
群衆に対する見方として…
デュルケムが「集合的沸騰」と言い
社会そのものを発生させる…と信じた
エネルギーに対しても
ル・ボンは「受動的」
「影響を待つだけ」…と
悲観的なわけです。
エネルギーがあることは認めますが
ただ、それは「形を与えてくれる何者か」
を待つだけの存在である
というわけです。
集団の中にある人間はもはや
「催眠」にかけられた状態のようなもの
とまで表現しています。
この状態にある人は
自発的に行動していると「信じている」のですが
実際には「意思を放棄」して
「模倣の奴隷」になってしまっている
ということです。
…
群衆が待ち望むもの
先ほども述べた通り
群衆は「自分に形を与えてくれるもの」を
望んでいます。
すなわち、カリスマです。
群衆が、カリスマにどれだけ強く従うか
ということは、
指導者側の差し出す刺激の強さに比例する
と言います。
刺激の種類がどうかは問題ではなく
強い刺激ほどいい、というわけです。
指導者には、こんな特徴が求められます。
・楽しげに役割を演ずること
・激しく感情的であること
・大きな身振りを用いること
・劇的な幻想を用いること
・理性的に論じないこと
・誇張し、断言し、反復すること
・信奉者の欲望を拡大して映す鏡となること
こういったことがカリスマ指導者には
求められるわけです。
…
SNSで人気のインフルエンサーには
よく見られる特徴な気がするのは
きっと私だけではないはずです。
…
まとめ
群集心理学者からすれば
集団は、「催眠」にかかったような状態で
自分たちにわかりやすい「形」を
あたえてくれる指導者を待っているものである。
カリスマ指導者の特徴は以下のようなものである。
・楽しげに役割を演ずること
・激しく感情的であること
・大きな身振りを用いること
・劇的な幻想を用いること
・理性的に論じないこと
・誇張し、断言し、反復すること
・信奉者の欲望を拡大して映す鏡となること
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