【感染予防】コロナ治療薬承認間近イベルメクチンの話。それって、あの寄生虫の虫下し薬だ!
※注 寄生虫の話メインのちょっとぞっとする内容です。
最近、コロナ治療薬として報道されている、イベルメクチン、どこかで聞いたことある名前だなと思ったら、あれだ、あのほとんど無名、でも国内のある地域の特定の世代でいまでも約2万5000人に寄生しているという恐ろしい寄生虫の特効薬ではないか。
かつて、昭和の頃の話、寄生虫は身近な存在でした。
中高年の方は、小学生の頃、ぎょう虫検査をするために、定期的に肛門セロファンなるものを肛門にぺったりと貼り付けて名前を書いて提出した記憶があると思います。ぎょう虫は非常に小さなヒモ状の寄生虫なのですが、このメスが夜中にお尻から出てきて、肛門周囲に卵を産みます。その卵を見つけるための検査があったのです。
この肛門セロファンは1949(昭和24)年に実施した当初、寄生率は72.0%だったそうです。この寄生虫検査も、1995年度以降漸減傾向となり、とうとう2016年に廃止となりました。
さて、いまの日本、寄生虫なんてそうそう感染するものではないと思っているあなた、そうでもないのです。少し前に話題になったアニサキス然り、今の季節でいうと、流通技術の進歩により生でホタルイカが販売されるようになったため、体長1センチ程度の旋尾線虫幼虫という寄生虫が体に入ることがあります。すると、体にミミズ腫れ(皮膚爬行疹)ができたり、腸閉塞を起こしたりという恐ろしい事態に遭遇することになります。特に、皮膚爬行症を起こしているということは寄生虫が胃や腸を食い破って皮膚の下まで移動して皮膚の下を這いずり回っているということですから、考えるだけでも卒倒しそうな事態です。
関心のある方は、次の富山県のサイトをご覧ください。
いまの季節、普通にスーパーやデパ地下などで、春の味覚として生のホタルイカというものが売られています。ホタルイカへの寄生率は約2~7%とのこと。絶対に生食はしないようにしましょう。なお、いったん、釜ゆで(沸騰水に投入し30秒以上、中心温度60度以上)されたものや、冷凍されたもの(-30℃の低温で4日間以上)は安心です。
さて、話がそれましたが、イベルメクチンの話。
Wikipediaでイベルメクチンを調べると、こう載っています。
イベルメクチン(英: ivermectin)は、マクロライド類に属する環状ラクトン経口駆虫薬。腸管糞線虫症の経口駆虫薬、疥癬、毛包虫症の治療薬でもある。
イベルメクチンとは、「糞線虫(ふんせんちゅう)」という寄生虫の駆虫薬なのです。「糞線虫」という寄生虫をご存知でしょうか?なんと、マイナーな寄生虫であるため、イベルメクチンからのリンクはあるものの、Wikipedia自体に項目がありません!(2020年5月3日現在)
「糞線虫」について、琉球大学病院が公開している資料から引用してみましょう。タイトルは「糞線虫(ふんせんちゅう)—無視されてきた虫—」です。
糞線虫は主に小腸に寄生する消化管寄生虫である。通常は軽い腹痛,軟便などを認めるのみであるが、免疫の低下した者においては,虫が増殖し,栄養不良、腸閉塞などを引きおこす。更に、重症になると全身に虫が移行し、肺炎、髄膜炎などを起こし死に至る場合もある。
糞線虫は熱帯・亜熱帯に多く見られ、わが国では沖縄・奄美地方が流行地域である。衛生状態の改善した今日の沖縄では新規の感染は認められない。しかし、糞線虫は一旦体内に入ると数十年にわたり寄生し、治療を行わない限り治癒はしないため、衛生状態の悪い時代に生育した方ではしばしば感染が見られる。琉球大学医学部附属病院第 1 内科の最近の調査では沖縄県には今なお 60 歳以上では約 2 万 5 千人に糞線虫感染者が存在すると推定されている。
治療に関しては 2015 年にノーベル賞を受賞された大村智博士の開発したイベルメクチンが特効薬である。これまで我々はイベルメクチンで 800 名程度に治療を行っているが、軽症例ではほぼ副作用無く完治している。しかし、重症例では治療をしても死に至る場合もある。我々は近年重症患者に対し、イベルメクチン連続内服を行い、救命に成功している。
実際のPDFはこちら。
琉球大学病院の資料を引用させていただきました。(C)琉球大学病院
次に、日本感染症学会で「糞線虫症(Strongyloidiasis)」の項を見てみることにします。
感染経路
感染幼虫に汚染された土壌から経皮的に幼虫が侵入することによる。ヒト体内に侵入した幼虫は血流やリンパ流に乗って心臓、肺へ達し、肺胞内から気管をさかのぼり嚥下され小腸上部で成虫になる。成虫から産卵された虫卵は消化管を下る間に幼虫に孵化し、大部分の幼虫は便とともに体外中に排出される。一部の幼虫は感染性を持ち腸管粘膜や肛門周囲の皮膚から再度ヒト体内に侵入して感染が成立し、ヒト体内で生活環が維持されるサイクルがある。これを自家感染と呼ぶ。
流行地域
熱帯・亜熱帯地域で流行し、温帯地域でも発生がみられる。日本では九州南部、沖縄・奄美地方が浸淫地であるが新規感染者は発生していない。
発生頻度
正確な感染者数は不明だが、世界で3,000万人から1億人が感染しているとされる。日本では浸淫地である沖縄県では60歳以上で約25,000人の感染者がいると推定されている。
(C)一般社団法人 日本感染症学会
さて、引用ばかりになってしまいましたが、私の考えでは寄生虫とウイルスは同一線上の脅威です。もちろん、基本構造や感染・増殖方法は異なるものですが、いったん体内に侵入されてしまえば、増殖し、体を好きなように使われて壊されてしまう点において両者とも最大限の注意を払わなばならない存在です。
イベルメクチンが新型コロナウイルスに対しても効果があるかも知れないという話は、奇遇なものです。イベルメクチンが、糞線虫だけでなく、新型コロナウイルスに対しても十分な効果があることを期待したいと思います。
最後に、イベルメクチンには重大な副作用があるとのこと、明記しておきたいと思います。
重大な副作用に、中毒性表皮壊死融解症(Toxic Epidermal Necrolysis:TEN)、皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)(いずれも頻度不明)がある。
Wikipedia 「イベルメクチン」より
スティーヴンス・ジョンソン症候群とは、またやっかいですね。薬剤による免疫学的な変化が生じるのでしょうか。