ノンフィクションにしか興味なかった私がなぜ二次元にハマったのか
「アニメなんて誰かが描いた、ただの絵じゃん」
満面の笑みで友人が語りかける”それ”に
かつての私は本気でそう思っていた。
一章:誰かが作った生きていない物
今から遡ること六年前。
昼下がりの都内某所、とあるカフェで待ち合わせ。
今日はAちゃんと、月に一度の女子会だ。
店内に入って席を選び、一息ついた途端彼女が口を開いた。
「見て〜!今の推しがこの人なんだけどっ!」
差し出してくるスマホ画面に映った“誰かが描いた人物”を見た私は、
またいつものアレが始まった。と作り笑いを浮かべ、聞き流すことにした。
Aちゃんは、いわゆるアニメオタクだ。
新たな推しを見つけては、会うたびに丁寧に解説を添えて私に報告してくる。
今日もこの無意味なプレゼンを聞くのに、軽く二時間は超えるだろう。
「ねぇちょっと!聞いてる?」
知り合ってから付き合いも長い間柄。
どうやら私の行動は全てお見通しのようだ。
「ごめんごめん聞いてなかった(笑)
で、なんだっけ?今度の推しの作品名は?」
「東京喰種!地味な大学生が強くなってイケメンになる話〜!
作画も超キレイだし、絶対好きだと思うから観てよー!」
『トウキョウグール……』
いつもはそのまま聞き流しているはずなのに、身近に感じる《東京》と、聞き慣れない《喰種(グール)》という言葉の響きに惹かれて、なぜだかこのタイトルだけは強く脳裏に印象付いた。
二章:再生への入り口
友人と解散し、電車を乗り継ぎようやく自宅のドアを開ける。
「ふぅ、疲れたー!友達と遊ぶのは楽しいけど東京は人が多くて疲れるんだよね」
三センチヒールのブーツを脱ぎ捨て、スマホ片手に寝転びながら今日の会話を思い返していた。
「ポンっ」という音とともに、スマホ画面にメッセージが通知される。
「今度こそ絶対観てね!!」と吹き出し口から出るAちゃんの言葉。
貼り付けられた動画サイトのURLが視界に入る。
「東京喰種。ちょっとだけ観てみようかな?」
この日は珍しく気が向いて、再生ボタンに手をかけた。
一話が終わり、二話から三話へ。
続きが気になり次々と視聴を続ける。
「確かに絵が綺麗だし、なんか面白いかも・・・」
ストーリーは展開していき、気付けば主人公の葛藤に感情移入。
わずか一晩で全てを見終わり、最終話ではまぶたを腫らすほど。
瞬く間に世界観へと引き込まれてしまった。
すっかり心奪われた私は、翌日書店へ向かい合計二十冊の本を抱えるようにして帰宅。
人生初、コミックス大人買いというものを経験する。
三章:作り上げられたキャラの魅力
冒頭でも触れたように、私はそもそも二次元という世界にハマることなく生きてきた。
アニメ=ディズニーやジブリ映画。
日曜日に家族で観るような有名作品。
日本人なら誰もが知っている程度の、ごくごく浅い知識しかなかった。
「アニメなんて誰かが勝手に作り上げた空想の話」
現実主義の私は、こうした“目に見えないもの”に一切興味がなかった。
・・・はずだった。
なのにどうしてこんなに心を掴まれたのか。
定かな理由は自分でもわからない。
ただ一つ言えるのは、
人間の中に眠る闇、嫉妬、醜い感情、生死に至るまで。
『わざわざ人に語らないけど本当はみんな知っている』
そんな日常との重なりをリンクさせて、すごい人たちがすごい時間とすごい人生をかけて毎日せっせと作り上げている。
それがアニメや漫画、ゲーム、といった二次元の世界だ。
天才たちが世に生み出す『作り上げたキャラ』を見ていると、自分と同じ世界を生きているようにすら錯覚してしまう。
キャラ一人一人に個性があり、当然性格も違い、生まれた環境、生い立ちも違う。
三次元を生きる私たちと同じように、キャラクターの数だけ『ストーリー』がある。
たくさんのキャラに励まされ、ときめき、感情を揺さぶられる。
そんな人が私を含めて、一人、また一人と増えファンになり、文化を作る。
二次元とはこんなにも素晴らしい世界だったのかと。
全巻買いそろえたコミックスを読み終え、そんなことを思っていた。
四章:流行っている物の理由
「私は今まで、なんて勿体ない人生を歩んできたんだろう」
そう思ったことをきっかけに、自分の中での『偏見』がなくなった。
人気がある作品は、できる限り目を通し、時間を費やする日々。
新たな作品に触れるたび刺激を受け、これらは人を魅了するほどの価値があるものだと気付く。
そして時を経て、今
あれから約六年。
わたしは立派な二次元オタクになり、その素晴らしさをこうしてnoteに書き記している。
あの時、私を沼へと引きずり込んだ友人には感謝している・・・。
と同時に「なんて世界を教えやがったんだ!」と喜びの苦情を伝えると、満足そうな表情を浮かべながら、また今日も長々と推し語りを始める。
「今期のアニメ、久しぶりに当たり引いたわ。作画天才だからマジで観て!」
彼女には今後も世話になり続けるだろう。
◆あとがき
今回は《エモい》をテーマに、趣向を変えた文章を書いてみました。
ひとことで言うなら「東京喰種はいいぞ。」という話です。
私にとっては気付きとなる『それ』が二次元であっただけで、
好きになって新しい世界に足を踏み入れた時の「うおおおおおおおおお!!!」「なんじゃこれえええええええ!!!」という感情は、誰しも経験があるのではないでしょうか?
触れてみて初めて知る新境地。まさにその体験記でした。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
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