帽子
水曜日の男の稽古をしました。
稽古終わりにみんなで駅まで歩きました。演出の藤本瑞樹くんが、おしゃれな帽子をかぶっていました。
「その帽子、おしゃれやな」
「そう?」
「おしゃれと思うわ」
「無印良品で買ったんだ」
おしゃれにあまり詳しくない俺が言うのも何ですが、瑞樹くんの帽子は紺色で、全体的にふわっとしたフォルムをしているにもかかわらず、キュッとなったツバがアクセントになってておしゃれです。
「俺、帽子が死ぬほど似合わんのよ」
俺は首が長いので、キャップなんかをかぶると、ダチョウみたいになります。
すると、一緒に歩いていた髙木さんが言いました。「メジャーリーガーにも、帽子が全然似合わん選手がおるね。あの、ごつい、プエルトリコかどっかの……」
「プエルトリコですか?」
「あ、実際は知らんのやけど、イメージがね。プエルトリコとか、中南米の方の感じの、ごつい、髪がこんなんなってて、大谷に打たれまくってる……」
「大谷ですか?」
「いや、打ってる方ね、大谷は。大谷に打たれまくってる方の、ごつい、髪がこんなんなってる、ガタイもこんなで、ごつい、プエルトリコの、いや実際は知らんのやけど、中南米の方の感じで、ごつい、髪がこんなんなった、ごつい選手がかぶってるキャップも、あれ、全然似合ってないね」
などと言い、にこにこ笑う髙木さんにはキャップがよく似合います。
歩きながらずっと瑞樹くんの帽子を凝視していたら、「かぶってみる?」と視線に耐えかねて貸してくれたので、かぶりました。
すると一緒に歩いていたみんながお世辞で「あ、似合う」「似合う、似合う」「似合うと思います」などと言ってくれたので、俺は気を良くしました。
「俺も買おうかな」
「え!?」
「何円?」
「同じの買うの!?」
「無印良品やろ? 近所にあるわ」
「2000円くらいだったと思うけど……」
「他のは、似合わんからね」
俺は近々、無印良品で、瑞樹くんと同じ紺色の帽子を買います。
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大体2mm「水曜日の男」
作:藤原達郎 演出:藤本瑞樹
[日程]2021年8月28日(土)、29日(日)
[会場]枝光本町商店街アイアンシアター
http://about2mm.blog.shinobi.jp
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