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Yogee New Wavesのルーツミュージックと1970年代ブラックミュージック入門
ミュージシャンとは物語そのものであり、個人的な生い立ちから外部環境至るまで、その音楽性に影響することは言うまでもない。その中で大きな鍵を握るのがバックグラウンドにある「ルーツミュージック」である。これを知ることによってアーティストの見方を大きく変えることもできるし、より深く知ることもできる。今回はYogee New Wavesに焦点を絞って、そのルーツミュージックと良さについて述べていく。
Yogee New Waves というバンドについて。2013年に角舘健悟(Vo, G)と矢澤直紀(B)(2017年1月脱退)を中心として結成、その後メンバーの入れ替わりがあり、現在はvo. 角舘 健悟 Dr. 粕谷 哲司のオリジナルメンバーに加え Gt. 竹村 郁哉 Ba. 上野 恒星の4人組で活動中。「2010年代シティポップ」の代表格としてceroやnever young beachなどと並んで東京の音楽シーンに光を当て続けてきた。
彼らのルーツミュージックについて、一部分を切り取って話すのは好きではないが、YOUTUBEに掲載されている『私を構成する9枚のアルバム』(WOWOW official)をまず紹介したい。
Vo 角舘 健悟が紹介しているのが、小沢健二・HI-STANDARD・銀杏BOYSなど邦楽ロックよりの選曲となっている。それと2人が加入してからの同じ動画を紹介。
ここで紹介されているのが、荒井由美「ひこうき雲」・The Clash「London Calling」に加えて、Curtis Mayfiled「Tripping out」・Bill Withersのベスト盤とブラックミュージックの名盤についても語っている。
Yogeeの音楽性としては「はっぴぃえんど」のような日本語ロックや、「シュガーベイブ」を中心とした正統派シティポップの流れ汲んだバンドで、都会的な生活の中に潜むニヒリズムを描いているが、もう一つ大きな枠組みとして欠かせないのが「ブラックミュージック」であり。特に大きく方向性が変わったのがギター竹村・ベース上野が加入後のセカンドアルバム「WAVES」以降の話である。
この2作目「WAVES」は全てシングルカット並みの重厚な仕上がりとなっている。ザ・バンドのような正統派ギターロックから、小沢健二のような正統派POPS、ストーンローゼスを彷彿とさせる浮遊感あるUKサウンドまで、様々な音楽されているが、根幹にあるのが今回のテーマ「ブラックミュージック」だ。
自分の中で邦楽×ブラックミュージックについての代表作と言えば小沢健二の「LIFE」である。フォークやロック的なプロダクションで内省的な楽曲を聴かせた前作から一転、ブラックミュージックからの影響色濃いプロダクションで外向きの楽曲をパッケージであり、2010年代後半以降にさらなる再評価がなされ、神格化を促すことにもつながった。
その後も星野源やOfficial髭男dismに代表されるよう、ブラックミュージックと邦楽の親和性がどんどん高まっていくこととなるが、Yogeeの場合は小沢健二に等しくサンプリングと同じスタイルでブラックミュージックの引用が見られる。またそれらのブラックミュージックはいわゆる「名盤・名作」と呼ばれる部類に入ってくるものが多数を占める。
まず鍵となるのは、インタビューでメンバーが答えていた Curtis Mayfield / Something To Believe In(1980)に収録されている「Tripping Out」である。Curtis Mayfield は1970年以降のニューソウルというジャンルに大きく寄与し、Super Fly (1972)やCurtis/Live! (1971年)は後世に語り継がれる名盤であるが、本作は作風がメロウよりで落ち着いた仕上がりになっている。
この曲といえば、山下達郎「あまく危険な香り」に代表されるリズムラインとして後世に影響を与えており、Yogeeの中でも代表曲「Climax Night」や 「emerald」などのミドルテンポの曲に影響が見られる。
また「Climax Night」の中盤ベースソロで見られる部分は、Sly & The Family Stone が1973年に発表した「FRESH」のアルバム曲「 If You Want Me To Stay 」を大きく引用している。1966年にヴォーカル/鍵盤などを担当するスライ・ストーンを中心に結成された、その名の通りストーン・ファミリーの面々を擁するグループでありブッカー・T&ザ・MG'sと同じく黒人と白人の混合バンドということも、この時代にとっては大きな意味合いを成した。
もう一つ鍵となるのが、メンバーのインタビューにもあったBill Withersである。彼は黒人シンガーソングライターとして、POPでソウルフルな曲を中心に描き、低音ボイスとどこか人柄が滲み出る甘い歌声が特徴だ。その楽曲の多くがカバーやヒップホップでのサンプリングソースとして現代まで親しみ続けられている。彼が残した名曲の一つとして1977年発表のMenagerie内に収録「Lovely Day」であるが、Yogeeでは「Ride On Wave」のベースラインに引用されている。
Yogeeの良さが一際目立つのがライブパフォーマンスである。現在はパーカッションに松井泉(ex YOUR SONG IS GOOD)を加えることが多くなり、より迫力あるサウンドが堪能できるがそのライブより「CAN YOU FEEL IT」の中から一つ。
動画の9分頃からセッションが始まるがこれは、これはArchie Bell & the Drellsが1969年に発表した「Tighten Up」という曲をモチーフにしており、そのまま曲でもリズムラインとして使用されている。上記アーティストはアーチー・ベルを中心にテキサス州ヒューストンのハイスクール仲間と1962年頃に結成。3枚目のシングル「Tighten Up」がアトランティックに買い上げられ1968年にリリースされるとヒットとなった。
Yogee New Wavesならず「2010年代シティポップ」はオシャレでクールな音楽としての印象が強いが、こうした1970年代のブラックミュージックからも大きく影響を受けています。ぜひ皆さんも、好きなアーティストの「ルーツミュージック」を調べていくと「未知なる遭遇」ができるかもしれません。