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【器のはなし】陶器四点、改めてじっくりと見てみる。
このところ『日本やきもの史』という本を読んでいた。縄文時代から現代までの日本の焼き物の流れを知れる、教科書的な本だった。掲載していたカラー写真のどれもが優品ばかりだったので、どれを見ても「これはすごい!」と感動してしまった。本文を読むと鑑賞ポイントがなんとなく分かるから、それもあって以前よりも焼き物への興味が湧いた。買う/買わないの視点だけではない見方を得たと思う。
それで書籍に登場した色々なものをもっと知りたい思いが湧いたのだけど、外に手を出すより先に、すでに自分が持っているものを改めて見てみようと思う。おそらく新しい発見があるし、何より気に入って持ってるものだから、鑑賞するモチベーションが高い。
珍しく前置きを長いこと書いたが、今回は以下の四品を紹介する。
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まずは御深井焼豆皿。御深井(おふけ)焼は灰釉と思っていたが、Wikipediaによると灰釉に長石を混ぜて透明度を高めたもののことらしい。
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なるほど、確かに土の色が分かる気もする。実際に見ると茶色だなあと思うのだけど、こうして写真で見ると緑っぽさもある。これは釉薬によるものだろう。この色を強めたら金属っぽくなるんだろうか。
この縁の波打った豆皿とこれよりも大きい同形状の小皿を骨董店などでよく見る。型を使って大量生産したのか。豆皿は手塩皿とも呼ばれることがあり、これは食事の時に少量の盛り塩をそれぞれに配置したらしい。
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ヒラヒラとしたヒダがかわいくて、模様がなくシンプルなところも良い。細かな貫入に色が入り込んで、模様となって現れている。陶器は使用を重ねると表情を変え、愛着が湧いてくるのが魅力的だ。やや厚みがあって、見た目以上に素朴さを感じる。愛嬌のある器。
続いて萩焼湯冷まし。
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数年前亡くなった祖母の家から引き上げてきた。使っているところを見たことがない気がするのだけど、家にあったんだから使ってたんだろう。抹茶やってたっぽいし。私も湯冷ましを真面目に使うほど丁寧な暮らしは送っていないのだが、無いよりはあったほうが助かるんで持ってきた。
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軽やかな雰囲気の萩焼は、ベースの土がクリーム色をしている。それに合わせる釉薬の色がまた爽やかだ。ところどころ茶色く色付いているのは、祖母が使用していた時についたものだろうと思うのだけど、位置や形がランダムなので、どうやってこうなったのか謎である。
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ピンクだけど落ち着いた色味で、白い釉溜まりが模様になっている。萩焼を自分で買うにはストライクゾーンが狭そうで難しいなと思っていたところに、祖母から引き継げたのはラッキーだった。
赤志野小片口。志野焼は正直鼠志野と絵志野が好きだ。赤いのは若干苦手でもある。それはそれとして形が面白かったので入手した。
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マグロ丼についてくる、ワサビと醤油を混ぜてからかける用の器ぐらいの大きさ。いや、もう少し大きいかも。少なくとも調味料をブレンドして料理にかける用だと思う。なんか使えそうだなと思ったものの、未だその用途を満たす料理を作れたことがない。
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ボコボコした白い釉薬が志野らしい。柑橘類の皮のようなゆず肌が分かりやすく、いかにもだなあと思っている。高台畳付きまで釉薬に覆われているのが気になっている。どういう製造過程を踏んだのか。
確か備前だった気がする、現代作家さんの小皿。なんか良いなと思ったやつ。お茶菓子に似合いそう。
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裏側を改めてみたら、写真の上の方が赤くなってて下の方が土の色をしているのに気づいた。窯内の配置によってこういう色味が出来上がるのだ。コントロールしきれない火に対して、人間は思い描く模様が出るよう工夫をする。焼成前後には「やれることはやった」というような祈りの気持ちがありそうだ。
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縁に鉄っぽい釉薬がかけられているのも素敵だし、赤く線が入っているのも絶妙。赤い線は焼成時に植物を直接器の上に置くことで作れる。おそらく縁にかけられた釉薬が一部うねっているのは、その植物が取り込まれているからだろう。すると、そのうねりの跡を辿ってみると、置かれた植物は一つだけではないようだ。おそらく三角形になる予定だった。そうなっていたら、この器はいま手元になかったかもしれない。
最後の小皿は再観察した甲斐があって、造られた時のストーリーを感じる発見があった。陶器は、目止めやしまう前の乾燥が面倒だし割れやすいから、あんまり常用しないのだけど、一つ一つ偶然生まれた景色を持っているのが良いですね。もっと色んなものを見て、目を養っていきたい。
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こういう系の話が好きな方は↓をどうぞ。
次回更新予定 12/16:考え中
※だいたいリサーチ不足ですので、変なこと言ってたら教えてください。気になったらちゃんと調べることをお勧めします。
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