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【器のはなし】大皿コーナーに「今日は私です」と言ってる奴がいた

一週忘れてて飛ばしたかと思ってたら、今週更新予定だった。な〜んだ。

秋っぽくなってきたから秋っぽい器あるかな〜馬とか良いかもな〜と思っていたら、大皿コーナーに「今日は私です」と言ってる奴がいたから秋らしさとか諦めてそっちにした。

「私です」

江戸後期色絵素地尺皿

良いですね。本当にかっこいい。初めて見つけた時からずっとかっこいい。この皿を見るたびに自分のセンスの良さを実感する。おそらく色絵素地で、この後で色絵が施されて完成品になるはずだったと思われる。

径30cmあってちょうど尺皿のサイズ。普通にでかい。昔は大皿に全員分のおかずなどを盛り、それぞれに取って食べるスタイルだったらしい。……そういう資料になる浮世絵とかあったっけ。宴会みたいなのであるかなあ。あんまり見たことないかも。煙草盆や盃洗はよく見るけど。

尺皿を個人で使うには、やっぱり複数人のおかず(天ぷらなど)をどさっと盛るとか、オードブルを移し替えるとか、鍋の具材を全部乗せて食卓に持っていくとかというのを聞く。私はこれにケーキ(プチガトー)をたくさん並べて、バイキングみたいにしてみたい。

見込みは紋章の図柄。実際のものなのか、それっぽくしているものなのかは分からない。輸出品で紋章の図柄があったようだから、これもいずれはそうなる予定だったかもしれない。この細やかな筆運びを見ても、手の良い品なことは確実だ。

濃み埋めも綺麗だ。はみ出てない。濃淡が均一かどうかは丁寧さにあまり関係ない。

色絵素地の話をしよう。最初の方に述べた通りだし、なんなら文字列そのまま汲み取れば意味が通じるので説明不要だろうけれど。

あ、色絵と染付の違いに、どの段階で絵付けをするかというのがある。色絵は上絵付け、染付は下絵付けだ。この上と下は何を基準にしているかというと、釉薬だ。磁器は透明の釉薬がかかっている。器を裏返して机と接地している部分(高台の先端)を指でなぞると少しざらっとしていて、表面のツルツルした面と触り心地が違う。このツルツルしているのが透明釉のかかっているところだ。

染付は釉薬の下に、色絵は釉薬の上に施される。なので色絵を触るとざらっとしているし、色絵は絵付けが禿げていることがよくある。大正くらいから出てくる色釉の絵付けは色絵とはまた別。

それで、今回の器は染付と釉薬までで止まっている。おそらく下画像のように色絵が入ったはず。

作業工程の都合上、色絵の足りてない染付があっても染付の足りてない色絵は出来ない。ちなみに絵付け後の焼きの温度も違う。磁器と陶器の焼きの温度も違う。

この色絵素地のよく出来ているのは、色絵があったらどうなったかなっていう想像がパッと思い浮かぶところだと思う。その上で自分がいま注文付けるならどうしたいかの想像もすぐ思い浮かぶ。今日はねえ、緑多めの爽やかな感じがいいなあ。窓絵の中は鳳凰で、周りに金彩で唐草。木は白っぽい桜で、近くに鳥がいてほしい。縁の括弧の中は桐。

裏側も素晴らしい。こちら側はこれで完成形だろう。宝珠と霊芝だ。こっち側の模様をメインにした七寸皿とかあったら良いよね。カレーとかガパオライスとか似合いそう。

尺皿でカクカクしたものはあまり無くて、これは良い買い物だったな〜と思っている。何に使うかを考えるより先に、すごい!欲しい!ってなったんだよね。欲しいじゃんよ。


こういう系の話が好きな方は↓をどうぞ。

次回更新予定 10/7:多分似た感じ
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斯波らく
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