
日本の赤ちゃんはどこへ消えたのか?
ベビーライフの闇——外国人への大量養子縁組の実態
日本の赤ちゃんが次々と外国人の養子に出されていた——この衝撃的な事実が明らかになった。東京都に拠点を置く一般社団法人「ベビーライフ」は、特別養子縁組をあっせんする団体として2009年に設立されたが、その実態は「赤ちゃんの国外流出」と言っても過言ではない状況だった。
半数以上が海外へ——174人の養親が外国籍
2021年3月、読売新聞の取材により、ベビーライフが2012~2018年度にかけてあっせんした約307人のうち、半数以上の174人が外国人養親であることが発覚した。内訳はカナダが106人、アメリカが68人で、ほとんどが海外在住の養親だった。
日本では原則として国内養子縁組が推奨されており、厚生労働省も2012年に「養子縁組は原則国内」との方針を示し、2018年には養子縁組あっせん法で規制を強化した。しかし、ベビーライフはこの方針を無視し、外国人への養子縁組を積極的に進めていた。
高額な手数料——1件あたり平均300万円
さらに問題なのは、国際養子縁組における「手数料」の高さだ。2013~2015年度にベビーライフが海外の養親から受け取った手数料は総額2億円を超え、1件あたり平均約300万円。国内の養子縁組の手数料(約200万円)と比べても明らかに高額だった。「海外対応費」などの名目で上乗せされていたが、実態は不透明なままだ。
このような高額な費用が発生していたことから、「人身売買ではないのか?」という疑惑が浮上した。確たる証拠こそないものの、限りなく黒に近いグレーな取引であることは間違いない。
逃げた代表、消えたデータ——子どもたちの行方は?
2018年9月、ベビーライフは養子縁組あっせん法に基づく許可を東京都に申請した。しかし、2020年7月に突然申請を取り下げ、事業を停止。そして代表の篠塚康智氏は行方不明に。団体が持っていた子どもの記録(実親の情報や養子縁組の詳細)も、一部しか東京都に引き継がれなかった。
さらに驚くべきことに、クラウドサーバーの契約終了を理由にデータが消去され、海外に渡った子どもたちの安否を確認する術が失われてしまった。つまり、日本の行政機関は、どれだけの子どもが海外へ行き、どのような環境で育っているのかを把握していない。
誰も責任を取らない——警察も動けない法律の穴
ベビーライフの活動停止後も、違法性が明確でないため警察の介入はなく、責任追及が進んでいない。養子縁組は「善意の制度」であり、本来は子どもの福祉のために存在する。しかし、監督機関の不備により、まるで抜け道のように利用されていたのが現実だ。
政府の調査でも、国際養子縁組の総数や出国記録を把握していないことが判明。法務省や裁判所も同様で、監督体制が機能していなかったことが明らかになった。
出自を知る権利の侵害——未来の子どもたちの問題
海外に渡った子どもたちは、成長したときに自分のルーツを知ることができるのか? それすらも保証されていない。ベビーライフが持っていた記録の多くが失われたため、実親の情報が途絶え、出自を知る権利が奪われている。
この問題は単なる過去の話ではない。海外に養子に出された子どもたちが成長したとき、自分の出生について疑問を持ったとしても、それに答える手がかりがない。日本の制度の不備が、未来の子どもたちに深刻な影響を与える可能性がある。
社会の反応——制度改革は進むのか?
この問題に対し、一部の政治家や専門家も警鐘を鳴らしている。参議院議員の山田太郎氏は2021年5月、「政府が養子縁組の数を把握していないのは異常」と指摘し、調査を求めた。
また、日本財団は2021年4月に緊急シンポジウムを開催し、特別養子縁組制度の改善を議論。専門家からは「情報の一元化や監視強化が必要」との提言が出た。しかし、2025年2月時点で、政府の具体的な対応はほとんど進んでいない。
赤ちゃんの命を軽んじる日本の現実
本来、特別養子縁組は「生みの親が育てられない子どもを救うため」の制度であり、子どもの福祉が最優先されるべきだ。しかし、ベビーライフのケースは、まるで「子どもを商品として扱うビジネス」のようだった。
このような問題が起きた背景には、日本の監督体制の甘さ、民間団体の不透明な運営、そして「見て見ぬふり」をしてきた社会全体の責任がある。
日本の赤ちゃんがどこへ行ったのか。なぜ、行政も政府もその行方を追えないのか。この問題を放置すれば、また同じことが繰り返されるだろう。
子どもの命は、日本社会全体で守らなければならない。今こそ、本気で制度の見直しと監視体制の強化に取り組むべき時ではないだろうか。