飲食店マーケティングの基本
正しく判断する能力
今回は『料理』を飛び越えて、飲食店マーケティングについて解説していきます。これを知っておくことで「料理が不正解」なのか「マーケティングが不正解なのか」の答え合わせえをする事ができます。
約8割の料理人が間違った解釈をしています
■多くの人が「客を呼べる料理を作ろう」と【夢のような考え】を実現しようと行動しています。
■多くの人が「テイクアウトに力をいれよう」と意気込んで、お弁当を販売しています。
飲食店経営している店舗が「弁当を販売」するということは、その瞬間にターゲット層はガラリと変わります。「弁当販売」にした途端に、ライバル店はその周辺の【コンビニエンスストア】や【ほっともっと】等の弁当専門店になり、味と価格を競争することになります。
コンビニエンスストアのお弁当や、ほっともっと等の弁当に、付け焼刃の弁当で勝てるとは到底思えません。付け焼刃で販売している弁当が売れる理由は、常連客の同情票のようなもので、実際に弁当販売として成り立っている店は殆どありません。
■『料理の質』か『マーケティング』か
勿論、料理が悪くて客足が減る可能性もあります。しかし他の可能性も同時に考慮しながら改善しなければ、料理改善の無限ループに陥ることになります。
ターゲット層の選び方
料理を作る職業である以上、行き着く所には必ずお客様がいて、そのお客様のニーズに答えるのが本来の形である為、技術をどれだけ磨こうとも最終的にはお客様のニーズに答える作業をするしかありません。
つまり『お客様や見込み客は何を求めているか』を事前に察知して、それに沿った料理を作ることが重要で、料理の質は二の次なのです。
■ターゲット層の選び方
ターゲット層とは『誰に向けた料理を作るのか』の話です。『なんとなくこんな感じのお店にしたいな~』ではまるで話になりません。
つまり「どのような料理を作るか」を考えるのではなく、まずは見込み客が考える食事をしたい状況を想定し、そこから逆算して料理を考えるのです。
■店舗にあったポジションを
世の中がいくらヘルシー志向に傾いていようとも、それをファーストフード店には求めているわけではない、ということを理解しなければいけません。
つまり高級志向のフランス料理レストランが、安くて提供の早い料理を出したら言いというわけではありません。高級志向のフランス料理店に求められていることは『ゆっくりと非現実と美食を楽しむ空間』であることから料理を組み立てていく必要があります。
店舗のジャンルにあった料理設定・価格設定が必要になるでしょう
全てを左右する『立地マーケティング』
立地マーケティングとは、飲食店経営に特化した大企業が独自のノウハウを積み重ねて作り上げたマーケティング手法です。単なる経営分析ではなく、未来の集客を予測する重要なマーケティングです。
■駅の乗降者数による『見込み客』
例えば、居酒屋などを出店したい場合『駅から近い立地』である必要があります。これは飲酒運転が法律で禁止されているため、店舗へ足を運ぶ公共交通機関が近接しているあるわけです。
そこで簡単に見込み客の分母数を、駅の乗降者数で判断する方法です。そこから駅の周辺にある『飲食店の総数』を調べて、競合率の割合を算出する必要があります。
これはあくまでも『居酒屋』などの飲食店に当てはめた場合の、立地マーケティングの基本で、そうでない場合は必ずしも駅に近ければいいわけではありません。
LTV(life time value)について
「顧客がそのサービスを使い続ける上で、サービスに投下する金額の総額」
を意味します。その顧客が他のサービスに移ってしまうなどして、サービスを使わなくなってしまうまでの金額総額のことです
■飲食店に置き換えてみましょう
「顧客がその飲食店を使い続ける上で、飲食店に投下する金額の総額」
を意味します。その顧客が他の飲食店に移ってしまうなどして、来店しなくなってしまうまでの金額総額のことです。
つまりは、お客様が飽きて来店しなくなるまでに、どれだけのお金を落としていってくれるかの指標です。LTVを把握することで、顧客獲得単価(CPA)を割り出すことができます。
■LTVを飲食店で計算した場合
例えば、年間の売上高が2000万円の飲食店を経営している店舗があったとします。平均的に来店客は600人/月だとします。年間で80%のお客様が離脱するとしましょう。
解:2777×7200×1.25=25000000
飲食店新規顧客のLTVは2500万と2000万円の差。つまり年間で7200人中の20%が継続購買してあげられる将来的な売り上げは500万円ほどになります。
飲食店は新規顧客獲得の敷居が低いので、継続購買期間を改善すればするほどLTVが大きく膨れ上がります。つまりどれだけ常連客を取り入れるかがカギとなるわけです。
■LTVの最大化について
・平均購入単価を上げる
・購入頻度を上げる
・継続期間を伸ばす
・獲得費用を下げる
・維持費用を下げる
基本的には、この5つを考慮する必要があります。
特に、計算式の結果がマイナスにならないように、獲得費用・維持費用が、平均購買単価x購買頻度x継続購買期間で出る数値よりも大きくならないようにしなければいけません。
広告の入札価格を下げて機会損失を起こしてしまった、顧客の商品購入後のアフターフォローが足りずに離脱されてしまった、となっては本末転倒だからです。平均購入単価を上げることも、あまり現実的ではありません。
常連化曲線と上限値
これはトレタ社がだした常連化率を現したグラフです
このグラフによると、離脱率は90%を軽く超えて、再来店の回数を増えれば増えるほど、離脱率は低くなりLTVが高くなります。
これを逆算的に表したグラフがこちらになります。勿論このグラフは常連率だけにスポットを当ててますから、2回目の再来店者は106名になりますが、同時期に新規客が1000人入っていれば、LTV的な数値でみれば売り上げはしっかりと伸びる計算になります。
しかし飲食店には「席数」という上限値があります
いくら常連客が増えてLTVが上がったとしても、席数で売り上げの上限値が決まっているため、絶対に頭打ちの数値が見えてきます。
CPA(Cost Per Action)について
CPAは1件の成果獲得(CV/コンバージョン)にかかるコストで、顧客獲得単価のことです。コストに対してアクションを起こした数を言います。
例えば、飲食店の宣伝費に100万円かけたとしましょう。それによってアクションを起こしてお店に来店した人が1000人来店したとすれば、コンバーション率は1人あたり1000円になります。
客単価が1500円だとすれば、広告費に対してのCPA率が高いので100万円を支払うべきだという事ですね。
このCPAに対して支払う宣伝料は、テレビCMやチラシのほかにも、SNSによる宣伝や、立地条件の良さに支払っているお金も含まれるでしょう。
このように宣伝費に対するアクションを起こした割合によって、宣伝費にいくら費やすかを決定します。
AIDMAやAISAS どう考えても必要ない用語
ここまで小難しいことを、説明してきました。
飲食店マーケティングを攻略するということは、すべてのマーケティングを学ぶ必要があります。それは飲食店がそれだけ複合的でいろんな要素が混じっている業態だからでしょう。
タイトルにもある通り、このようなattentionやinterestなどの基本的な単語の頭文字を引っ付けたような、だれでもわかる用語は知っておく必要は特にないと思っています
一応AIDMA(アイドマ)だけ説明しておくと
注意する、気づく(attention)
関心、興味を持つ(interest)
欲求、来店したい(desire)
記憶する、もしくは後押しする(memory,motivate)
行動する(action)
このような単語の略省になります。本などにもよく乗っており、紹介されることの多い用語ですが、実際にこの5項目を見たときに『これが重要だ』と思う事はありませんし、感覚的に誰でもやっていることです。
体験を提供するスターバックス
スターバックスは「体験」を提供することで差別化を実現しています。カフェといえば「コーヒーを飲む場所」というイメージが一般的ですが、スターバックスを創業したシュルツ氏は、「居心地の良さを体験できる場所」としてスターバックスを始めています。
内装をお洒落にしたり、ソファの設置やゆったりとした音楽を流すことで、くつろぎやすく居心地の良い空間を作り出しました。つまり既存のカフェチェーンが「商品」を提供する一方で、スターバックスは「体験」を提供するという形で差別化を行ったのです。
ブランディング戦略
スターバックスの経営戦略を分析すると、出店地域にも大きな特徴があります。スターバックスでは、洗練された地域に店舗を出店する経営戦略をとっています。
東京で例に出すと、丸の内がある千代田区や六本木がある港区、表参道がある渋谷区など、流行に敏感な人が多く、かつオシャレなイメージの強いエリアに多くの店舗を出店しています。
「スターバックスがありそうな街」に多くの店舗を出店するからこそ、スターバックスでは「高価格」や「オシャレ」「洗練されている」といったブランドイメージを維持できているのです。
■ロゴの企業名削除
創業40周年のタイミングで、商品ラインをより広くしたり顧客に親しみを持ってもらう目的で、ロゴからブランド名を消しました。結果として、常に消費者に対して新しいイメージを植え付けることに成功し、今でも新しいファンを獲得できています。
また、街中にロゴが自然に溶け込むことで、スターバックスというブランドに対する親しみやすさは高まったと言われています。
ソーシャルネットワーク(SNS)戦略
スターバックスでは、テレビCMなどの広告を一切活用せず、SNS(ツイッター)で新商品の宣伝やアンケートを行っています。SNSの場合、若者にとって馴染みがある上に、アンケート機能などを活用できるため、双方向的なコミュニケーションを取りやすいという特徴があります。
スターバックスは、SNSを用いた双方向のコミュニケーションを徹底することで、効率的にブランド知名度の向上や親しみやすいブランドの形成を実現しています。
SNSによる購入動機比率
何かを購入する際の動機として、SNSは大きな影響力を持っています。上記の調査によると、全体としてはYouTubeが購入のきっかけになったという人が最多で、次にInstagramという結果になりました
SNSを使って新規顧客を獲得したり、新規商品によってリピートを促すことで、冒頭で説明したようなLTVに繋がり、大きく売り上げを上げることに繋がります。それに対する目標CPAを設定することで、何をすべきかがより明確に見えてくるというわけです。
目に見えて数値化できるマーケティング
飲食店マーケティングというと、『感覚的な要素』が多いと思いがちです。しかし実際には計算式があり、ある程度の指標を出すことができます。
立地の競合率をの指標をだし、客単価や席数の上限によって年間の目標売上を決めることができます。そこからLTVを底上げするための宣伝にかける費用の指標を出すことができます。
SNS戦略でもインプレッションに対して、どれだけの割合の人々が購買に至るのかを数値化することができます。これが一般的にCPAと呼ばれているわけです。
どんな飲食店にしたいか、まだ決まっていない場合はこちらを読んでみると、いいアイディアが思い浮かぶかもしれません
という事で飲食店マーケティングの基礎知識でした