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あなたはスープに対する考えが変わります~野菜を究極に生かすメソット~
若手が通る関門「端材スープ」
フレンチの厨房に入って、雑用をしばらくこなした後にやってくるのが大量の端材(野菜の切れ端など)を使った賄いスープの仕事だろう。
当時は訳も分からず、目にもの見せてやるぞという気持ちでいっぱいだった記憶がある。
は‐ざい【端材】 材料から、必要な部分を取ったあとの残り。半端な材料。
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「端材で旨いスープが作れない」。この理由が分からないと、フランス料理の神髄をまだ理解出来ていないという解釈にならざるを得ない。それくらいスープにはありとあらゆる面において、大事な要素が詰まっている。
話は変わるが、フランス料理というジャンルの在り方として、盛り付けにこだわりをもって、出来上がりの形を強く意識する傾向にある。それによってでる端材が多く出る。
しかし単に端材が出るという簡単な話ではない。単純に美味しくない部分を切り落として破棄(ブイヨンなどの出汁につかう)されていることが大きなポイントなのだ。ここがスープを作る上で重要な考え方の要にもなる。
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煮詰めることによって失う代償は大きい
まずスープにするのなら、端材だろうがなんだろうが関係ないように思えてしまうだろうが、野菜というのは不思議なもんで、野菜の箇所によって香りのニュアンスが違うし、水分量が場所によって違う。
美味しい部分を切り捨てた場所=端材 であって、端材というのはいくら集めてもブイヨンなどの水に香りを移すくらいしか用途がないのだ。
しかし、フランス料理の考え方で、大量の食材を極限まで煮詰めれば、美味しい物が出来るという云わば基礎中の基礎的な捉え方がある。しかし考えてみてほしい。ブイヨンは出汁であって、スープは料理なのだ。
大量の端材を煮詰めて出来上がるのは、その分凝縮した旨味が生まれることは間違いないが、必要なものまで失ってしまう。
旨味は保存できるが、香りは消費してしまう
これは持論だが、香り成分は失っていくものであって消費されていく認識で間違いはないと思っている。
香り化合物の分子生物学的な認識の解説
専門家ではないので、詳しい内容についてはここでは触れないが、構造上としての理解では、香りを感じるということは、香り成分が空気中に舞った結果として鼻の粘膜が反応し、脳がそれを香りとして認識しているということだろう。
これは旨味と感じるアミノ酸や、それと似たような解釈をする脂分や糖分などとは違って、料理そのもの(例えばソースや、煮込みなど)に、保存することは難しいものと考える。
香り成分が保存する事は難しいというのは、厳密には香り成分を水分や油分に抽出できる為、難しいという解釈をしている。詳しくは上記香り化合物の記事で解説しています。
しかしこれらの香り成分には食材によっての総量の違いが大きく、スープにするような食材は、香りの保存総量が少ないイメージである。
例えばトリュフなどはオイルに香り成分を移せば、絶大な香りを保存していることになるし、いくらか香りを保存した方が絶大な効果が、ピンポイントで得られる例外もいくつかあるのは事実。
しかしその様な食材をスープにするのに、大したメソットは必要なく、香りを活かせば何となく美味しいスープはできるだろう。
何をもって食材らしさを解釈するのか
食材そのものが持っている、香り成分としての総量が少ない場合は、何をもってその食材と感じるかは非常に絶妙なバランス感覚が必要になる。
例えば白菜などをイメージして見よう
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この食材のどこが白菜らしいのか、とこの解釈をする上で挙げられる要素として
・甘味
・青々しさや、みずみずしさ
・香り
『白菜の良さとは何か』これを考えた時に出る食材の良さが非常に曖昧なところが非常に厄介なポイントである。これは白菜だけではなく、他の食材でもやはりポイントは、甘味と、その食材の食感の特徴、香り、のこの3つ位しか特徴がない。
この中でも代用が難しいのが、やはり香りの要素であると感じている。甘みや、食感の特徴などは、後からいくらでも他の物で代用しても何の問題もない。食感のアクセントにバケットを添えたり、その食材そのものを少量添えるのもよくある話ではある。
香りの知覚割合についてのデータ
しかしピューレ状にして加熱した、スープそのものの香りは、やはり食材のポテンシャルに依存せざるを得ない。香り成分は消費すると述べた様に、加熱すればするほど、香り成分は揮発して消費してしまう一方で、しっかりと凝縮しなければ、旨味の方が欠けてしまう。
野菜によって甘味成分を変えることで代用する方法について
もちろん加熱すればするほど、色飛びを起こして茶色になってしまう事もあるだろう。このバランス維持感覚がスープの醍醐味であるといえる。
何で補って、何を特徴にするのか
スープである以上は、他の食材で補えば良いわけではなくそこには複雑なバランス感覚が必要になる。
基本的なやり方の一つとしては、玉ねぎの香りがなくなるまでソテーして、甘味と旨味だけ残す王道のやり方が一つ。
もう一つはその食材自体がもつ、不要な部分のみ(茎など)で甘みと旨味を凝縮してから、色味やその食材らしさをもつ香りの部分を後から加える方法の2つしかないだろう。
そのまま食べたら美味しいものをスープにする事が目的ではない。一番大事なスープのポイントは、スープにする事で、新しい味覚の発見を与える事こそが醍醐味であると言える。
今まで発見出来なかった、白菜の香り・甘味を存分に感じる事で得られる新しい発見は、必ず美味しいと感じる思考に結びつく。この発見を、大袈裟に表現して、発見させてあげるのも料理人の役目であると言えるだろう。
もちろん美味しいスープを作りたいのなら、作ってから提供するまでは長くて2日くらいしか持たないイメージだ(香り化合物の抽出度合いによるが)。
保存して置いておくだけでも香りは失われるし、冷凍保存したら殆どの香りは無くなってしまう。これには十分注意してほしい。
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