
屋外ライブMixの振り返り【空間系編】
先日屋外ライブ作品のMixを行いました。
その際の気づきを備忘録も兼ねて記事にして行きたいと思います。
今回は空間系のパラメーターについて振り返ります。
ボーカルのReverb

屋外ライブということで、Reverbの設定が一番のハードルでした。
屋外なんだからReverbかけなくて良いんじゃんと思われるかもしれませんが、意外とReverbゼロは違和感があります。屋外ライブの開放感を出したいですし、完全ドライはやはりCD音源のように音像が近くなり過ぎます。Reverbゼロでオーディエンストラックを出しまくるっていうのが理想ですが、そこは大人の事情で難しかったりします。理由は説明しませんが、分かる人には分かるはず。
最終的に使用した空間系は下記の3つです。
普段はもっと種類を増やしてしまうのですが、今回はなるべくSessionをシンプルにすることを目指し、以下の3種類に絞りました。
(なんでもそうですが、色々やりすぎるとコントロールが聴き辛くなりますよね)
Plate Reverb
Hall Reverb
Short Delay
1.Plate Reverb

PlateReverbの使用目的は空間表現ではなく、現場のPAがかけているReverbの再現です。そのため多少嘘臭くても良いというか、デジタル臭いReverbのイメージでかけています。
Send:-23.0dB
前段EQ:380Hz以下をLo Cut
ReverbTime:1.2sec
PreDelay:45msec
Early Reflection:Plate
2.Hall Reverb

これが今回のメインのReverbで、屋外ライブの空気感を表現する狙いでセッティングしています。とても苦労しました。
プリセットはHallから作りましたが、パラメーターはかなり変えてしまってるので、Hallの音では無いです。
特にDiffutsionを3%とかなり小さくしている点がHallとの大きな違いです。
屋外ライブなのでReverbの音がきめ細かく聴こえる印象にはしたくありません。結果的にShort Delayの音に近いかもしれません。
Short Delayの音に近いけれども、Sideへの広がりはある音、のようなイメージで作成しました。
Send:-18.0dB
前段EQ:290Hz以下をLo Cut※
ReverbTime:0.58sec
PreDelay:45msec
Early Reflection:Arena
※LoCutを少し低めに設定している理由は、屋外ライブの中低域がボワつく感じを表現したかったためです。
本当はもっとSend量を増やしたいのですが、増やすとどうしてもHall感のようなものを感じてしまい、嘘くささが出てしまいます。そこはもっと後述するDelayに頼った方が良かったのかもしれません。
3.Delay

屋外ライブの空間表現はDelayが肝になるかもしれません。
屋外ライブのReverb感って残響よりも滲みにある気がしていて、その滲みの表現にDelayを使用しています。
また、「タタ!」という短い跳ね返り音の表現もDelayの使用目的の一つです。(1個目のタが実音で2つ目が反射音です。)なのでFeed Backは1回で良いと思います。
EQは600Hz以下を切っていますが、もう少しHallReverbと同じ考え方にして、300Hz以下とかでもよかったかもしれません。Hiの5kHzくらいを切っている理由は、あまりにもHiがありすぎると天井を感じるためです。とは言え切りすぎると前述した「タタ!」という反射音の表現ができなくなるため、5kHzあたりが妥当かなと判断しました。
Send:-22.-dB
DelayTime:230.0ms
FBK:0%
ただ、今聴きながら見返していると、DelayTimeはもっと短くてよかったかなとも思います。
オケのReverb
オケもボーカルに使用したHall Reverbと同じものを使用しています。
SEQ(STEM)全体にかけ、さらにSEQのハモやGayaなどには、単独のトラックにもReverbをかけることでよりWetにしています。
Send:-26.0dB
あとがき
今回の作業を終えて、ディレクターから「屋外ライブもっと行ってみ」とアドバイスをいただいたので、早速昨日代々木公園の野外フェスにいってみました。
そこで今回の件を踏まえ改めて聴いてみると、思っていたより中低域が響くなという印象でした。170Hzくらいでしょうか、おへそ辺りにズムズムくる低音というよりは、みぞおちくらいに響く音でした。
また、やはりReverbTimeはかなり小さく、これは今回の580msecという設定は良い線行っていたように感じました。Diffutionを小さくしたのもあっていたと思います。ただ、この記事の書き始めの方でも触れていますが、やはり残響感としてのReverbというよりも、滲みを出すという意味での空間系の使い方が正しいと感じました。
現実の屋外ライブはかなり音が不明瞭で、その滲みを出すためにReverbを使うイメージでしょうか。自分は基本的にリアル至上主義的な考えが中心にあるのですが、「たしかにこの不明瞭な音を製品化するのは良く無いな」という気づきがありました。歌が聴こえなさすぎです。明瞭過ぎると臨場感に欠けますし、そこはバランスですね。
空間系のセッティングについては以上です。
次回は歌周りの質感やトータルコンプについて書きたいと思います。