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②そこには探究学習の「答え」がある?ーHigh Tech Highの示す未来の学びのカタチ2

前回に引き続き、High Tech Highの学びについてつらつらと書いていきます。この記事から来られた方、ぜひ①もご覧ください!


聖地巡礼完了

【前回のおさらい】
・教育視察で、アメリカ・サンディエゴのHigh Tech High(通称HTH)という学校に行ってきました
・HTHは世界的に有名な、PBL(Project Based Learning)を学びの軸にした学校
・HTHは「普通の学校」と何もかもが異なる学校でした

【今回の10秒まとめ】
・PBLをなぜやるのか?その答えは「Equity」にありました


では、本編いきます!


■HTHにおける、「公正(Equity)」という考え方について

PBLで有名なHTHに来て一番最初に言われたことは、「PBLは手段であって、目的ではない」という言葉でした。
PBLについて学びに来たのに!どういうことや!
と最初は思ったわけなのですが、そこでHTHの先生が説明してくれたのが、

「この学校が一番大切にしていることは、PBLをやることではなく、Equity(公正)である」ということ。
この「公正」という言葉が、日本ではなかなか馴染みにくい表現なので少し補足します。


自分の肌の色を絵の具で作って自画像を描くPBL



よく日本では、「平等かどうか」「不公平でないか」が重視されます。
例えば、成績をつける際に、テストの点や出席日数が重視されるのも、1つの平等な物差しで測っているので、みんな頑張れば良い結果になるよね、という、いわば「スタートラインを揃える」ということを大切にする文化があります。

一方、HTHで言う「公正」は、スタートラインではなく「結果」を揃える、という考え方に立っています。入試がペーパーテストでなく地区別の抽選になっているのは、テストをすること自体が個人の能力やそれまでの教育環境、経済面に影響を受けるよね、だからそもそもテストをせず、各地の学生がまんべんなく集まり能力や人種、教育水準などばらばらな人たちが集まれる「結果」をどうやったら実現できるか?を考えている、ということです。実際、HTHは約半数の生徒が、貧困層の家庭です。


fairを題材にした学び


実はこの話、私が以前ハーバードに行ったときも似た話を聞いていて、ハーバードでは明確に、白人より黒人のほうが求める合格点が低くなっています。これは日本ではなかなか考えられない、「差別だ!」「逆差別だ!」といわれることかもしれませんが、アメリカの教育においてはこの「スタートラインではなく結果を揃える」ことが、様々な格差の大きい社会を良くするための軸になっているんですね。(ハーバードの合格水準については、見直しをせざるを得ない動きもあるようです)

ちなみにフィリピンの学校に行ったときも、「学校はイコライザ(結果を均等にする)であることが役割だ」という話を現地の校長先生から聞いたことがあって、格差の大きな国ほど、この考え方を教育が担っているように思います。


様々な国旗が掲示されている教室


HTHはメキシコ国境の街、サンディエゴに位置していることもあり、メキシコからの移民の学生も多く暮らしています。彼らは母校語がスペイン語なので、例えば一般的な座学の授業を行っていくと、どうしても英語を母語とする学生と比べて学習を進めることが難しくなってしまいます。逆に、手を動かしたり、過度に言語に依存しない学びの形であれば、全員が同じように学んでいくことができる。人種・学力・言語などによらず、全員が互いに協力しあって社会に通用する力をつけていく、そのための「手段」として、ハンズオンかつコラボレーションを軸にした学びの形であるPBLが取り入れられている、ということなんですね。

したがって、HTHのあらゆる活動や判断はすべて、「Equity(公正)」であるかどうか?が判断基準となっています。HTHではこのEquityを「North Star(北極星)」と位置づけており、いつどんな難しい局面、判断に悩む局面においても、このEquityを判断基準にして物事を取り決めています。その観点でHTHの特徴的な取り組みを見ると、一気にこの学校の活動の意図が鮮明に理解できるようになります。


ちなみに、HTHではこのEquityに続く形で、
・Authentic Work(本物の仕事)
・Personalization(1人1人を見る)
・Collaborative Design(先生も生徒も一緒になって作り上げる)
という3つの考え方を大切にしています。

HTHにおいて固定の時間割がなかったり、20名程度の少人数クラス制になっていたり、チームで取り組む機会が非常に多いのはこういった背景です。


どの学年も20名程度の少人数クラス


学校でも仕事でも、判断に悩むシーンっていっぱいありますよね。

自分たちの「North Star」はなにか
自分の「North Star」はなにか


私は現在、「日本で最も社会に近い学校」HR高等学院をみんなでつくっているのですが、このHR高等学院においては、「Career Ownership」を学校のNorth Starと位置づけています。

未来を予測し、自ら道を選び、社会に通用する「本物の力」を身につける。

HTHの考え方にとても共感しました。

次回はいよいよ、そんなHTHの誇る「PBL」を大解剖します!

長文にお付き合いいただき、ありがとうございました!


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