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教育データを活かすエビデンスレベルの話

GIGAスクール構想の計画によって、全国の小中学校に1人1台の端末と高速インターネットが整備された。数年経過しデジタルを使って学ぶことが当たり前の時代が始まりだしている

デジタル化が進むと、学校ではたくさんのデータが集まってくる。生徒がどの教材をどれだけ使ったか、どこでつまずいたのか、どの問題が得意なのか。でも、そのためにはデータの中身をしっかりと理解すべきだ。ICT端末と同様に、ただデータを「使う」だけではなく、「どんなデータが本当に効果的か?」を見極めなければならない。

ここで参考になるのが、医療の世界で使われている「エビデンスレベル」という指標。医療の分野では、ある治療法が本当に効くのかどうかを、科学的に確かめるための基準があり、効果の確かさをレベルごとに分けていて、信頼性の高い順に1a、1b、2a…といった具合である。

臨床研究のエビデンスレベルの概要

まず、臨床研究におけるエビデンスレベルを簡単に説明すると、治療法や介入の効果を科学的に評価するために、以下のように分類されます:

1a: ランダム化比較試験(RCT)のメタアナリシス
• 複数のRCTの結果をまとめて分析した研究。最も信頼性が高い
1b: ランダム化比較試験(RCT)
• ランダムにグループ分けをして、治療の効果を比較する研究。
2a: ランダム割付を伴わない同時コントロールを伴うコホート研究
• 同じ期間に異なるグループを比較するが、ランダムに分けられていない研究。
2b: ランダム割付を伴わない過去のコントロールを伴うコホート研究
• 過去のデータを用いて現在の方法と比較する研究。
3: 症例対照研究
• 特定のケースを対象に成功と失敗を比較し、効果を探る研究。
4: 処置前後の比較などの前後比較、対照群を伴わない研究
• 介入の前と後で変化を比較するが、他のグループとの比較は行わない。
5: 症例報告
• 個別の成功や失敗例の報告。参考にはなるが、広く適用するにはデータが少ない。
6: 専門家の意見
• 経験に基づく意見。データや実験に基づかないため、信頼性は低い。

この指標を、教育にも取り入れることができるのではないかと考えている。
もちろん、児童生徒の多様性や倫理面、定量の標準化など、課題はキリがないが、「専門家がそう言ってたから・・・」「他校で実践してたから・・・」「大学教授の助言があったから・・・」など画一的な指標だけで評価する可能性は無くなるからだ。

GIGAスクール構想で集まった教育データをどう使うべきか、それをどう評価するかを、エビデンスの視点で整理してみた。

GIGAスクール構想で得られる教育データのエビデンスレベル

GIGAスクール構想のもとで集められる教育データには、学習の記録、テストの成績、学習時間、アンケート結果など、幅広い情報が含まれる。このデータを基にして教育方法の効果を評価する際、以下のようなエビデンスレベルに分類できるのではないかと考えてみた。

1a: データを集めた分析の力

全国の学校や生徒のデータを集めて、「本当にこの方法が効果的なのか?」を大規模に分析すること。これができると、たとえば「全国の学校でタブレット学習をしたら、こんな成果が出たよ」という全体像が見えてくる。たくさんのデータを集めて分析するから、どこでも通用する確かな証拠になる信頼性が高い。

2. 1b: ランダムに分けて比べる実験の力

生徒をくじ引きのようにランダムに分けて、新しいツールの効果を試すこと。片方のクラスには新しいツール、もう片方には従来の方法を使わせて、どちらが成績を伸ばしたかを比べる。くじ引きでグループを分けると、他の要因が入りにくいので、より純粋に効果を確かめらる。

3. 2a: 現場に近い比較の力

同じ時期に、似たような学校で違う教育方法を試してみて、結果を比べる。ランダムではないけれど、現実の教育現場での結果をしっかりと見られる。たとえば、新しい授業の取り組みをしている授業をしている学校と、取り組みをしていない学校を比較することで、どれだけ効果があるのかを見つける。

4. 2b: 昔と今を比べる力

昔のやり方と今のやり方を比べてみると、どんな変化があったのかがわかりる。たとえば、GIGAスクール構想の前と後で、生徒の学力がどう変わったかをデータで見てみる。過去と今をつなげる視点は、長く続けることの意味を考えるうえで大事。

5. 3: 成功と失敗を見比べる力

ICTを導入して成績が上がった生徒と、あまり変わらなかった生徒を比べると、何が違ったのかが見えてくる。この違いを分析することで、個別の生徒に合ったサポートを考えることができる。

6. 4: 変化をそのまま見る力

新しい方法を始める前と後で、どれくらい変わったかを見る。対照グループはないので、影響している要素は多いかもしれないけれど、実際にどれくらいの変化があったかを確認できる。

7. 5: 事例を伝える力

ある学校でこんな方法を試したら、こんな効果があった、という話。個別の成功例を紹介するもので、他の学校やクラスでも同じ結果が出るとは限らないけれど、ヒントになることは多い。

8. 6: 経験を語る力

長年の経験を持つ大学教授が、「この教え方は生徒の反応がいい」と話すようなもの。データに基づいていないけれど、現場の知見として役に立つことがたくさんあります。ただし、それをそのまま「科学的な証拠」として扱うことは難しい。

データを使うことはできるけど、最後は現場の先生の意思決定だという支援を徹底する

GIGAスクール構想は、ただデジタルを使うための計画ではなく、集まったデータをどう使うかがカギを握る。そのデータをどのように解釈し、どのように教育に活かしていくのか。このエビデンスレベルの考え方を知ることで、私たちはデータの持つ「力」をうまく引き出し、子どもたちにとって最も良い方法を選ぶことができるようになる。

例えば、1aや1bのように、データの信頼性が高いものを基にして、教育方針を決めると、効果が確実で安心です。反対に、事例報告や専門家の意見(レベル5や6)は、現場の知恵として使える一方で、広く適用するには注意が必要です。それぞれのレベルの特徴を理解することで、効果的な方法を選び、実践に活かしていくことが求められる。

しかし、どれだけデータが集まり、科学的な分析が進んでも、最後に重要なのは「現場で子どもと向き合う先生たち」の意思決定だ。データや研究は、先生たちの指導を支えるための道具に過ぎず、本当に必要なのは、子どもたちを毎日見ている先生が、その場で「これがこの子には合っている」と感じ取る力です。

メーカーが提供する最新のツールも、大学教授が推奨する理論も、そして行政が示すガイドラインも、すべては先生たちが現場で決断するための材料。

子どもたちの一番近くにいて、彼らの表情や反応を見ながら教えているのは先生だ。その現場感覚こそが、最終的にはもっとも信頼できるエビデンスになる。GIGAスクール構想のデータが先生たちの力を支える一方で、デジタルやデータだけでは埋められない、人と人とのつながりが教育の中心にあることが教育データの利活用だ。

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