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本物の権威は擦り寄ってこない。「イラストをタダで描いて」と言われたらどうすべきか問題。
今日はイラストやデザインを制作する人なら誰もが一度や二度は経験があると思われる、タダで(または極端に安く)描いてほしいと言われたらどうすべきか問題について、僕なりの考えをお伝えしたいと思います。
結論
断っていい。
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無料や極端に安く描いてほしがる人はよく「次の仕事に繋がるから」、「宣伝になるから」というニンジンをぶら下げてきますが、ほとんどの場合、期待するような結果には繋がらないです。
だって今まさにイラストやデザインに金をかけるもんじゃないって思ってる人が今後いい仕事を振ってくれるわけなくないですか?
よく誤解されていることがあるんですが、いくら人目につく場所に自分の絵が展示されたとしてもそれだけで仕事に繋がることはほぼないです。
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例えばたまたま立ち寄った施設の壁に素敵な壁画が描いてあったとします。その絵も含めて「良い雰囲気の空間だなぁ」と思うことはあっても「この壁画は素晴らしい!自分のところにも描いて欲しい!作者はどなたですか?」となる確率はとても低いです。
訪れたレストランに座り心地が良い椅子があったとしても「自分の家に同じものを置きたいので製造メーカーを調べる」までやる人がほとんどいないのと同じです。
ポートフォリオに入れる実績として、自分がやりたいと思えるならやると良いと思います。駆け出しの作家にとって実績づくりのフェーズは少なからず通りますので。
ただ、声をかけてくれた人に絵を渡すだけで他の仕事が舞い込んでくる未来を期待するのは間違いです。
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仕事に繋がるような本物の権威
僕は絵で食えるようになりたかったのでカリカチュアの世界チャンピオンになろうと思いました。
世界大会の運営会社が「大会で絵を描いてくれませんか?賞金は出ないんですけど優勝したら名声を得られて仕事にも繋がりますよ」なんてわざわざ言ってこないです。
世の中本当に権威があるものは向こうからは絶対に擦り寄ってこないです。
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どうするべきか
大切なのは「自分から応募する」ということです。僕はタダで描く絵はコンテストのようなものだと思ってます。
結果が出たら自分の理想の絵描きに一歩近づけるようなものこそトライする価値があります。その依頼に応えることで自分の絵描きとしての格が上がったり、やりたい仕事に近づけるかどうかを考えると良いかと思います。
仕事がないと焦るし、少しでも顔を売るために藁にもすがるような気持ちになるのはよくわかります。でも漠然と絵の仕事がほしい、この依頼をやっといたら絵の仕事が増えるかも、という受け身の姿勢では本当の評価は得られないんじゃないかな、と僕は思うんです。
理想に近付くためには自分からしかるべきところにお願いして描かせてもらうくらいの積極性を持った人が理想に近付いていけます。
タダで絵を描くべきじゃない、と言ってるわけではありません。
タダで絵を描く相手は自分から選ぶべきだ、と言っているのです。
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僕は漫然と誰かが気づいてくれないかな、という待ちの姿勢で成功した人を見たことがありません。何をどのくらいの熱量でやりたい人なのかが周りに伝わらないからです。
例えば、今は超有名なアニメーション監督も最初は自分が作りたい世界観を出資者達にわかってもらうために金銭面でかなりのリスクを背負ってサンプルアニメを作ったと言います。
SNSである日突然作品がバズった人も、注目されない間もずっと作品を制作して投稿し続けていたはずです。
時世に惑わされず、粛々と制作を続けて、力が試されるような場所に自分を応募し続けた人が理想に近づいていきます。
気が優しくて遠慮がちなせいで、技術を利用されて摩耗していく若い絵描きが少しでも減るといいな、と思いこの記事を書かせていただきました。
がんばれ!
僕は若い頃技術をタダで使おうとしてきた人の不幸を祈りながらがんばるぞ。
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