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【毎日短編台本-3月6日】 ひとになる (3人劇)


基本情報

タイトル-ひとになる
作-臼井智希
ジャンル-社会
目安時間-5分
登場人物
誰か×3


本編

誰かが舞台上にいる。舞台上には大きな壺。

誰か1「立派な大人になりなさいって。一社会人としてって。常識的に考えればわかるって。ひととして当たり前だって。そんなこと言われたってわかんないよ。立派なってなに?一社会人として、っての、私としてじゃなくてってこと?一社会人って、代替可能な、代わりが効く人間としてってこと?常識って?そうしておくと利益が得られる大多数の人間に都合よく、ってこと?ひととしてってなに。わたしはひとだしわたしだよ。ひととして当たり前ができなければ私は人ではないの?」

誰か2がいる。

誰か2「立派な大人になりなさいって。一社会人としてって。常識的に考えればわかるって。ひととして当たり前だって。立派な大人になれないならお前はいつまで立っても子供で、俺たち大人の輪の外で、保護される存在だって。一社会人として、代えがきかなきゃお前がマズったとき誰も助けられねぇし、誰かがマズってもお前は助けられない。助け合いのためには、みんなが、「みんな」という存在として群体になって、同質化してかなきゃいけないんだって。常識をいちいち説明させんなよ。そんな時間ないんだよ。前提を共有しておけば効率も空気もいいんだよ。いちいち引っ掻き回さないでくれよ。ひととして当たり前のこともできないなら、せめて、居ないでくれ...」

誰かと誰かが歩き回る。
ふたりはやがてぶつかり、大声で絶叫しながら殴り合い、壺に入る。
なにかが煮えたぎるような音の後、壺の中から誰か3が出てくる。

誰か3「んがっ!......んー」

誰か3、ハケ。終幕。


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