ちょっと今から卵子凍結してくる
※WEBでは読みづらいという方のためにPDF原稿版も掲載しました。PDF版はこちらのページよりダウンロードください。WEBで大丈夫な方はこのままお読み進めください。
#卵子凍結 1 はじめに
皆さんは卵子凍結というとどんなイメージを持っているでしょうか。
キャリアウーマンのような方が行っているイメージでしょうか。それとも例えばガン患者等の方が、やむを得ず行っているイメージでしょうか。
卵子凍結は特殊な事情を持つ方が行うイメージがあるかもしれませんが、実際にはすべての現代女性に関わりがあり、正しい情報を得て検討しておくべき知識です。
それは独身女性だけではなく、相手がいる場合や結婚している場合でも、そして、自然な妊娠を希望している場合でも、ぜひ知っておいた方が良い知識です。
卵子凍結やそれにまつわる知識は、非常に重要であるのに、なぜ世の中に浸透していないのか。
一つは、生理やピルや不妊治療など、女性の性にまつわる話は、秘め事のように扱われ、大っぴらには話されず、経験や情報が共有されていないことがあると思います。
また、低用量ピルの場合と同じように、卵子凍結にまつわる先入観や偏見、無理解も、知識が共有されていない原因の一つだと思います。
相手を見つけるのが先?
「相手がいないのであれば、お金をかけて卵子凍結をやるより婚活して相手を早く見つけた方がいいんじゃないの?」
そう思う方もいるかもしれません。
しかし、相手がいないとして、明日すぐに相手を見つけて妊活ができるでしょうか。
まずは相手を見つけてお付き合いをして、それから結婚を決めて準備して、と、時間がかかる場合がほとんどだと思います。
また、当然そんなに都合よく相手が見つかるわけもありません。
焦って結婚して失敗するということにもなりかねませんから、自分に合った相手を見つけなければなりません。
相手を見つけるのが先か卵子凍結が先かという話は、まさに卵が先かニワトリが先か、というような話ですが、卵子凍結の場合においては、はっきりと「卵が先」と言うことができます。
なぜなら、相手を探しているその間にも、卵子は日々歳をとり、数が減っていくからです。
時間切れとなってしまうリスクを考えると、卵が先、ということになります。
もちろん、自然な妊娠が理想的ではあります。しかし、現実社会ではそう上手くはいかないことが想像以上に多いのです。
現代女性の状況は厳しい
ストレスを避けられない現代社会では、女性の体にまつわる状況はとてもシビアです。
誰でも年齢が上がれば出産が難しくなることは知られていると思いますが、実際には、若ければ大丈夫とは限りません。
独身の場合、子宮がん検診などを受けることはあっても、卵子や卵巣の状況など、自分が妊娠できる体かどうかの具体的な検査を行うことはほぼないと思います。
しかし現実では、結婚してから妊活するのでは遅かったというケースも多く、不妊に悩む方は多くいます。また、1人目は自然妊娠できても、2人目で不妊に悩むというケースもあります。
さらには、結婚していたとしても、相手や自分の仕事の状況など、すぐに妊娠を検討できるかはわかりません。
これは私の友人のケースですが、彼女はすでに29歳の時に結婚し、お相手は正社員の男性でしたが、彼女自身は契約社員で、残りの雇用期間が一年を切っていました。その職場では残任期間が1年以上ないと育休が取れなかったため、妊娠を検討するのは、まずは産休育休が安心して取れる仕事に転職してから、と言っていました。しかし転職してすぐに産休育休をとるわけにはいかないだろうから、自分が妊活できるのは果たして何年後なのか、と悩み、卵子凍結を検討することにしました。
女性が適齢期に問題なく妊娠出産することは、現代社会ではこれまで以上に難しいこととなっています。
結婚や出産は、相手がいればいいというものではなく、男性と女性双方において、それぞれの気持ちや仕事の状況、経済状況、健康状態、実家の家族の状況など、様々な条件がタイミングよく整っている状態で、かつ、適切な相手と共にいる場合にしか上手く運ばないからです。
若いうちに、または、採卵が可能な年齢のうちに、卵子凍結を行っておくことは、将来的な妊娠出産の可能性を上げるための現実的な選択肢です。
卵子凍結が唯一絶対の解にはなりませんが、将来を見通せない中では、妊娠に対するある種の“保険”の役割を果たします。
私は36歳で卵子凍結を行いました。
卵子凍結については、実はちょうど30歳になる前くらいの時期に検討したことがありました。ファッション雑誌で卵子凍結が紹介されているのを見て「結婚もまだできそうにないし、今のうちにやっておいたがいいかも?」と軽く思ったのですが、まだその時はそこまでの危機感がなかったことや、費用の面もあり、真剣には考えていませんでした。
ただ実際36歳で卵子凍結を行った際には、「あの時卵子凍結を決断していれば、こんなに苦労したり焦ったりすることはなかったかもしれない」と思いました。
もし36歳ではなく、さらに数年後に決断していたとしたら、現実はもっと厳しいものだったか、もしくはすでに妊娠の可能性自体が時間切れとなっていたかもしれません。
卵子凍結は、1日でも早く若いうちに行った方が費用も体の負担も軽く済みます。さらに、それにより、もし将来的に不妊治療が必要となった場合の負担軽減にもつながります。
“卵子凍結”しておけばよかった、という言葉
私の叔母は不妊治療を専門に扱う鍼灸師で、自身も不妊治療を経験して出産しています。
叔母が治療にあたる際、不妊治療を受ける女性は「こんなことなら若いうちに卵子凍結しておけばよかった。でもあの時はそんな知識はなかったし知らなかった」と口々におっしゃるのだそうです。
しかしここでポイントとなるのは、彼女達の言葉が「若いうちに早く産んでおけばよかった」ではなく、「“卵子凍結”しておけばよかった」という言葉である点です。
それは彼女達に、若いうちに産んでいたら成し得なかったことや、若いうちには出会えなかった人がいて、若いうちには産むことができなかった事実があり、例え時が戻ったとしても、若いうちに産んでおくという選択ではなく、卵子凍結をしておいて今の年齢で産みたいと思う理由があるからではないでしょうか。
私の場合、卵子凍結を決断するに至っては、きっかけとなる出来事があったのですが、不妊治療を経験した叔母がいたことや、身近に相談できるお医者さんがいたことで、実際に卵子凍結の情報を得ることができました。
もし状況が違っていたら、卵子凍結や自分の体の状況を知ることもなく、決断できていなかったかもしれません。
私は健康体の女性ですが、今後実際に妊娠出産できるかはわかりません。
凍結した卵子を使うことになるかどうかもわかりません。
ただ、それでもやはり卵子凍結しておいてよかったと思います。
そして、卵子凍結の決断をして実際に採卵を行う過程で、これは絶対、同年代や若い女性に共有しておいた方がいい情報知識だと思いました。
また、親世代や、世間の理解も、もっと追いついてほしいと思いました。
周りの女性に卵子凍結について話してみると、「実は自分も検討していた」という人や、悩んでいる方が本当に多いです。
しかし世の中では卵子凍結に関する正しい知識や、それをめぐる現代女性の現実の状況が発信されたり報道されることはほとんどありません。
むしろ卵子凍結や不妊に関しては、SNSなどでは間違った知識やネガティブな発信が多く、正しく理解されていないと感じます。
卵子凍結を行う女性は、決して「今は産みたくないから卵子凍結を行っておくわ」というような女性の都合やわがままで行っているわけではありません。
様々な事情により、今は産めなかったり妊活できなかったりする状況の中で、少しでも出産の可能性を広げるために、女性が自分の体と真剣に向き合って行う決断なのです。
ようやく東京都が23年度予算で健康な女性の卵子凍結への助成を検討するようになりましたが、ガン患者の方などを除いて、卵子凍結やそれに付随する卵巣やホルモンに関する検査費用はすべてが自費となり、税控除も対象外です。
世の中は少子化対策という言葉が多く言われますが、その実、現代女性を支援する実際の社会システムや理解は全く追い付いていません。
私はすべての世代や社会に、卵子凍結や不妊治療への理解が広まるとともに、公的支援も拡大されてほしいと思っています。
前置きが長くなってしまいましたが、このような経緯があって、私の卵子凍結の経験を体験記として綴ることにしました。
人それぞれ、いろいろな事情や背景があると思いますが、
私が卵子凍結を決断した経緯や、自身の経験を記しておくことで、「あの時このことを知っていれば」という女性の後悔が一つでも減ればいいなと思っています。
もし卵子凍結について具体的に検討している場合には、最後の方に私の一回目の採卵でかかった費用やスケジュール、卵子凍結に関する動画や記事などの情報をまとめていますので参考にしてください。
また、もし政府や自治体、政治家の方でしたら、最後のまとめに少子化対策や公的支援の必要性について記載していますのでぜひご覧いただければ幸いです。
#卵子凍結 2 私の女性としての状況
女性が生涯に持つ卵子は、まだお母さんのお腹の中にいる胎児の時に作られます。妊娠20週目くらいで胎児の中に卵子が作られてから、産まれるまでの間に卵子の数は減少し、さらに産まれた後も卵子の数は減り続けます。
卵子は、どれだけ女性が健康に過ごしたとしても、産まれた後に増やすことはできません。女性は産まれる時、すでに一生分の卵子を持って産まれてくるのです。
それまでの私の気持ち
私は36歳で卵子凍結を決断して採卵を行いました。
36歳になるまでの間、お付き合いしている男性もいましたが、自分の事情だったり相手の事情があったりで結婚や妊娠には至らず、また、自分の準備ができている時にはなかなか相手がいなかったりということもあり、結局独身のままでした。
それまでの気持ちとしては、絶対に結婚・出産したいというわけでもなく、かと言って結婚も出産もしないと決めていたわけでもなく、良い相手がいればしたい、くらいでした。
年齢が上がるにつれて、出産が難しくなるであろうことはわかっていましたが、いざ相手ができて子供ができたとしても、この世の中で子育てしていくことも大変だし、自分が普通に生活していくことですら精一杯だから、このまま子供は持たない(持てない)かもしれないと、なんとなく考え、じわじわと子供を持たない方向に進んでいたような感覚です。
前置きにも書いたとおり、30歳になる前くらいの時に、ファッション雑誌で卵子凍結の記事を見かけて、「このまま結婚しないようであれば卵子凍結しておこうかな」と、チラッと検討してみたこともあったのですが、まだその時はそこまでの危機感がなかったことや、費用の問題もあり、真剣には考えていませんでした。
卵子凍結を行う転機となったのは36歳の時でした。卵子凍結に至るまでのお話をするうえで、私の1人の女性としての婦人科関係の健康の記録を状況と共にご説明しておきたいと思います。
一人の女性としての健康
私が初めて婦人科検診を受診したのは24歳から26歳くらいの時だったと思います。当時住んでいた自治体の無料の子宮頸がん検診によるものでした。
この時診ていただいた女医さんには「形のきれいな子宮ですね、いつでも妊娠できますよ」と言われたのを覚えています。
しかし、この時は相手もおらず、働いてはいたものの、地方の非正規雇用だったので、給料が手取り10万くらいしかありませんでした。子宮以外には妊娠に至れるような準備は何もありませんでした。
その後、猛勉強して27歳で正規雇用になってからは、職場の福利厚生で婦人科系の検診には補助があったので、定期的に、ガン検診と合わせて超音波検査などの検診を受けていました。
変化が見られたのは29歳の時でした。超音波の検診後に、「卵巣に髪の毛が巻き付いている」と言われました。
髪の毛が巻き付いていると言われると、何かのホラー映画のようですが、卵巣のう腫といって9割が良性の腫瘍で、髪の毛の他にも、爪や骨や歯や脂肪といった組織が嚢腫の組織に含まれていたりします。
腫瘍はまだとても小さいので、その時点では取る必要がないとのことでしたが、将来的に大きくなるようであれば、特に妊娠出産を希望するのであれば、4センチを超える大きさになれば手術して取ることを検討した方がいいだろうと言われました。その後は医師のアドバイスに従って半年から1年置きに経過観察を行っていました。
卵巣のう腫は若い女性に多く見られるものです。有名人だとジャスティン・ビーバーのパートナーのヘイリー・ビーバーが卵巣のう腫を公表しています。
超音波検査は自治体が行う子宮がん検診と違い、有料となりますが、もしこれを読んでいる方がいらっしゃったら、無料の検診を受ける際には超音波検査も合わせて受けることをおすすめします。
その後、32歳の時に東京に転勤になり、その時は省庁に出向していたのですが、ご存知のとおり、国は国会対応などで夜遅くまでの勤務が毎日続き、生理が止まったり不規則になったり、生理痛が重くなったりしました。
この頃から体の負担軽減のために低用量ピルを飲むようになりました。その夏には無理が祟って腎盂炎も患いました。
その後34歳で転職し、年収は格段に上がりましたが、ちょうど実家も祖母が亡くなったりして大変な時期で、転職のストレスもあって目眩が止まらなくなり、結局は仕事を辞めて、また非正規の仕事に戻りました。
再び非正規雇用となって、婦人科検診の補助はなくなりましたが、超音波検診は定期的に受けていました。
ただ、コロナ禍だったということもあり、受診の間隔は以前より間が空いていたと思います。
次の婦人科検診もそろそろ受けた方がいい時期だな、と思っていた頃、36歳のまだ暑さの残る秋の初めに、下腹部痛と、膀胱炎のような症状がありました。以前夏に腎盂炎に罹ったこともあったので、すぐに内科を受診しました。診断は膀胱炎でした。
ちなみにこの頃、同じく少し下腹が出てきているような気がしていたのですが、年齢のせいで太ってきたのかな、という程度に考えていました。
内科からもらった薬を飲んだものの、なかなか治らず、再度内科を受診したところ、薬が効いていないのかもしれないということで、別の抗生物質をもらい様子を見ることになりました。
ただこの時、膀胱炎にしては下腹部の痛みが鋭過ぎる気がしたので、婦人科で診察を受けたがいいかもしれないと思ったのですが、ちょうど土曜日だったこともあって次の週明けに婦人科に行こうと思いました。
ところがその日の夜中、経験したことのないような痛みに襲われました。痛みの前にはひどい下痢もありました。
救急外来に行こうにも、我慢できない痛みで耐えきれず救急車を呼びました。
一人暮らしだったので、気絶してしまえばマンションのオートロックを開ける人がいないと思い、脂汗をかきながらなんとか移動し、マンションの玄関前でうずくまって救急車を待ちました。
ちょうどコロナの第7波の時期で、救急隊の皆さんも本当に大変な時期だったと思うのですが、救急車の中で痛みにより呻き声をあげる私を、「大丈夫ですよ、すぐに病院に着きますからね」と救急救命士の方はずっと励ましてくださいました。医療従事者の方には本当に頭が上がりません。
診断は卵巣のう腫茎捻転でした。嚢腫が10センチ台に肥大しており(10センチだとちょうどグループフルーツくらいの大きさです)、肥大した腫瘍の重みにより、卵管が捻れたことで起こる痛みでした。診察室に映し出されたCT画像にはまるで風船のように膨れ上がった卵巣が画面いっぱいに広がっていました。
さらに、以前指摘されていた右側だけではなく、左側にも腫瘍ができていました。
年齢により太ってきたと思っていた下腹部の膨らみは、腫瘍によるものだったのです。
そのまま緊急手術をすることになり、医師から「最悪の場合には卵巣摘出となる」と告げられました。
子供は持てないかもしれないとは考えていましたが、こんなに突然、子供を持つ希望が完全に絶たれるかもしれない状況になるとは考えていませんでした。
#卵子凍結 3 卵子凍結のきっかけと気持ち
その後無事に卵巣の緊急手術を終えました。
執刀医は女性の先生でした。
手術を終えた後でまず先生に聞いたのは「卵巣は残っていますか」でした。
卵巣はなんとか両方とも残っていました。
そしてすぐに、入院中のベッドで点滴を受けながらの手で、手術後の妊娠の可能性や確率などをスマホで調べました。卵巣は一部が残っていれば、または片方でも残っていれば、排卵が機能している限り妊娠が可能なことがわかりホッとしました。
ただ、後から知ることになるのですが、卵巣があれば大丈夫という考えは甘かったと言わざるを得ません。
手術後は経過が良ければ5日ほどで退院できるということでしたが、熱が下がらず、術後感染の検査などもあって10日ほど入院しました。
入院中は生理用ナプキンが手に入らず苦労しました。運悪く救急車で運ばれた日に生理になっていて、運ばれた時に着ていた服も血だらけになっていました。
まさか救急車で運ばれる時に、入院期間に必要な量の生理用ナプキンを持ち合わせているわけもなく、病院にも生理用ナプキンの備品はありませんでした。
入院着や歯ブラシ、ティッシュなどは有料でサービスがあるのですが、生理用ナプキンはありませんでした。
コロナ禍という状況の中での入院なので、感染対策のために病棟から出ることもできず、売店にもいけない(そもそも手術後は歩くことすら困難でした)、面会もできない。
結局、生理用ナプキンの代わりに産科にあった産後パッドをお借りしたり、東京に住む叔母に頼んで病院の受付にナプキンを届けてもらったりしました。
退院後も体調が戻るのには時間がかかり、仕事は在宅勤務で復帰しました。
さらに、手術での体力低下やストレスなどもあって、昔患っていた喘息が再発しました。
しかしそれが、ある意味では卵子凍結を決断するきっかけになったのです。
喘息が再発したことで、子供の頃からお世話になっている呼吸器科のかかりつけ医に相談しました。
卵巣のう腫を患って手術したことなども状況を話したところ、診察が終わった後で、かかりつけ医から「卵子凍結を検討してみては」という助言をいただきました。
卵巣のう腫は再発の可能性もあるため、まだ独身で結婚もしていないのであれば、将来のために卵子凍結をしておいた方がいいのではないかということでした。
普通はお医者さんがそこまで踏み込んで助言されることはあまり無いと思います。風邪の時も、お腹を下した時も、幼い頃からいつも通っていて、家族全員がお世話になっている先生だったので、本当に親身に身内のように考えてくださったうえでのことだったと思います。
また、同じく不妊治療を経験した叔母からも卵子凍結を勧められました。
叔母は自身が不妊治療の経験者であると共に、不妊治療を専門に行う鍼灸師だったため、卵子凍結や不妊治療に関する知識を持っていました。
卵子凍結を決断するのであれば誕生日が来る前、36歳のうちに1日でも早くやった方がいいとのアドバイスも受けました。
叔母から卵子凍結の話を聞いた母からも強い勧めがありました。
費用の面は母がなけなしの貯金から支援してくれるということでした。
私自身、手術の際に「卵巣摘出かもしれない」と聞いた時のショックだった気持ちなどを思い出しながら、自分がどのように感じるか、本当に子供を持ちたいのか、今後どのような将来を送りたいのか、そうした気持ちと向き合いました。
子供は持てないかもしれないと思っていたけど、やっぱり欲しいかもしれない。子供を持つのであれば、できれば自然妊娠をしたい。
でも間に合う年齢で相手に果たして出会えるだろうか。
もし卵子凍結をしたとしても、相手が見つからず使うことはないかもしれない。
そうすると、卵子凍結の費用や苦労は無駄になってしまう。
卵子凍結した卵子を使う場合、体外受精することになる。体外受精する費用が工面できるだろうか。
そこまでして私は子供を欲しいと思うだろうか?
でも自分よりも、もしかしたら相手の男性が子供を欲しいと思うかもしれない。
相手が見つかった場合、卵子凍結した卵子を使わなくても妊娠はできるかもしれない。
でも1人目を自然妊娠できたとして、もしかしたら2人目を持ちたいと思った時に使えるかもしれない。
将来相手が見つかったとして、もし不妊治療になった場合、年齢が高ければ長く治療や費用がかかることになる。
もしいずれ不妊治療することになった場合には、まだ年齢が若いうちに卵子凍結しておいた方が妊娠の確率が高い。
もし卵子凍結を行うのであれば1日でも早く若いうちに決断した方がいい。
そうしていろいろなパターンを突き詰めて、今すぐに出産したいという気持ちではなかったとしても、やはり子供を持ちたいという希望は捨て切れない以上、卵子凍結を行っておくメリットは高いと判断し、例え無駄になったとしても、将来的な妊娠出産に対して可能性の選択肢を広げておく“保険”として、卵子凍結を決意することにしました。
東京都が健康な女性の卵子凍結の助成を来年度から始めるというニュースも出ていましたが、助成開始を待っていては間に合わない可能性もあるため、すべてを自費で行うことを決断しました。
#卵子凍結 4 卵子凍結の検査
卵子凍結を行うことを決心し、卵子凍結を行うクリニックは、東京都内で症例の多い信頼できるクリニックを叔母に紹介してもらいました。
卵巣のう腫の手術を行ってもらった主治医にも、手術後経過の検診の際に、今すぐに卵子凍結に取り掛かっても身体上問題ないかどうかを確認し、さっそく卵子凍結のクリニックの初診を12月下旬に予約しました。
卵子凍結することはすでに決断しているので、初診で卵子凍結の概ねの説明を受けた後、その日のうちに血液検査やエコーの検査を受けました。検査には子宮や卵巣の状態、ホルモン値や性病の検査といったものも含まれます。
低用量ピルについては、今まで飲んでいたとしても問題なく卵子凍結できるということでした。ただ、卵子を採卵するにあたっては、ピルは服用を中止する必要があるとのことでした。
エコーの検査結果はその日のうちに聞くことができました。幸い、手術で卵巣の一部は切り取ったものの、卵巣の形や子宮の形に問題がないこと、そして卵巣内の卵子の素となる細胞もきちんと残っていることがわかりました。
血液検査の詳しい診断結果は、数日後の再診で聞くことになりました。
しかしここで聞いた検査結果はショックなものでした。
実年齢は36歳だったものの、AMHという卵巣の予備能を推定するホルモン値の検査結果で45歳以上という結果が出たのです。
卵巣は残っていたものの、私が思っていた以上に妊娠できる期間のリミットはずっと短かったのです。
ただそれでも、タイムリミットが短くても、もし相手がいるのであれば、今すぐに妊活をすれば、自然妊娠に何の問題もないようでした。
ただ残念ながら、私には今日いますぐ妊娠に向けて話を進められるような相手はいません。
例え出会いがあったとして、その男性に「今日から一緒に妊活しますか」と言うわけにもいきせん。
検査結果はショックでしたが、だからこそ、将来に希望を残すために一刻も早く卵子を採取した方がいいということで、採卵に向けて進めることにしました。
卵子凍結は不妊治療で体外受精を行う時と同じ経過をたどります。ただ違うのは、卵子凍結は卵子を採卵するまでで終了となりますが、体外受精の場合には卵子を採卵した後に授精させ、子宮に移植するということになります。
ですので、実際に卵子凍結の卵子を使用する場合には、この続きとなる体外受精の施術を行うことになります。
採卵は生理周期に合わせて行うこととなるので、次回は生理が来た時、生理2日目か3日目に来てくださいとのことでした。
また、血液検査で白血球と血小板の数値にも異常が出ていたため、採卵までの間に、念のため血液内科への紹介状を書いてもらい、血液の詳細な検査を行ってもらうこととなりました。
低用量ピルを飲んでいる場合には生理はきっちり28日周期できますが、飲んでいない場合には自分の生理が遅く来るのか早く来るのかわかりません。
ピルの服用を止めていつ生理が来るかわからなかったので、受診のために仕事をいつ休むことになるか、「休める日だといいけど」と、その点が気がかりでした。
私は非正規雇用でしたが、職場が在宅勤務や有休取得に理解のある職場だったため、本当にありがたかったです。
そうでない場合、不妊治療はやはりかなり困難を極めるだろうなと思いました。
クリニックの待合室では、多くの女性達が待ち時間の間に仕事をしていました。
通常の待合スペースとは別に用意された待合室では、Wi-Fiやパソコン用の机などが設けられ、多くの方がパソコンに向き合い、作業をしたり、オンラインミーティングをしたり、電話で仕事の打ち合わせや調整などをしていました。
もちろん女性だけではなく、男性も一緒にカップルで来ている方々もいましたし、男性だけの方もいらっしゃいました。
そこは病院の待合いというよりは、コワーキングスペースのようでした。
#卵子凍結 5 一個の卵子の難しさ
生理が来るまでの間に、総合病院の血液内科で血液の詳細な検査を行なっていただきました。
結果、白血球と血小板は数値は高いものの、元々が数値が高い体質で問題ないことがわかりました。
前回のクリニック受診の際に、クリニックのYouTube動画に卵子凍結の具体的な内容や費用がシミュレーションで詳しく紹介してあることを聞いていたので、イメージトレーニングを兼ねて検診までの間に視聴しておきました。
(※一番最後のまとめにその動画のリンクを掲載しています。)
生理が1月中旬に来て、生理2日目に採卵周期に向けた受診となりました。
しかし受診した結果、1月に一回目の採卵周期に入ることは見送りになりました。
採血とエコー検査を受けたのですが、まず、血液検査のホルモンの結果が大幅に基準値を超えており、また、エコーで見た結果、卵胞や卵子の状態も悪く、今回もし採卵をしても、たった1個しか卵子は取れないだろうとのことでした。
見送りにするかどうかの話し合いを医師と行い、今回は見送り、次回の生理で再度様子を見ることになりました。
もちろん卵子が1個でもあれば、妊娠の可能性はありますが、体外受精の場合、受精や着床まで成功させる、つまり妊娠の確率を上げるためには複数個の卵子がいります。
採卵では、20代であればたったの一回で10個ほど取れることもありますが、30代では平均5個ほど、40代で平均3個ほどとなります。
卵子凍結を決意して採卵しさえすればいいと思っていた考えはとても甘いものでした。
たった一個の卵子すら取れるかもわからない自分の体の状況に愕然とし、クリニックの帰り道、人通りが多い通りにも関わらず、涙が溢れて止まらず、そのままわんわん泣きながら地下鉄の駅に向かいました。
さらに、実はちょうど、卵子凍結を決めたぐらいのタイミングで、お付き合いを始めつつあった男性がいたのですが、彼に卵子凍結について打ち明けてはいなかったのですが、最悪にも、ショックな検査結果がわかったくらいの時に
「今は仕事に集中したい。30代だし気軽な気持ちで付き合って期待を持たせて待たせるわけにもいかないから」という理由でフラれてしまいました。
相手を見つけるどころか失う現実にダブルパンチで落ち込みました。
#卵子凍結 6 卵子はつらいよ
検査の結果、見送りとなったことを叔母に伝え、励ましてもらった結果、気を取り直して次回の周期に向けて頑張ることにしました。
次回の検査で良い結果が得られるように、具体的なアドバイスも受けました。
まずは体の冷えが深刻だったので、とにかく体が冷えないよう温めました。
職場はコロナ対策で換気のために窓が開けられ、冷えることが多かったので、できるだけ在宅勤務にして自宅で仕事をしました。
電気料金が値上げされた時期だったので費用はキツかったですが、暖房にセラミックヒーターにコタツ、ホッカイロに温熱シート、よもぎ温熱パッドに湯たんぽと、あらゆる手段で温活に励みました。
また、鍼治療にも週1、2回通いました。鍼治療に加えてリンパマッサージなども受けました。
寒い日は自宅のお風呂ではなく、より体の温まる銭湯へ通ったり、よもぎ蒸し(*韓国式のサウナのようもの。婦人科機能の改善に良いとされる)なども行うようにしました。
足が冷えているということは、卵巣などの女性器にも血の巡りが上手くいっていないということだと叔母に言われたので、オフィスに出勤している日でどうしても足が冷える時は、追加のホッカイロを近くのコンビニまで買いに走ったり、トイレでこっそりスクワットしたりして血の巡りが良くなるように気をつけました。
朝起きた後には温活ヨガをしたりもしました。
食事はタンパク質が重要ということで、卵や牛肉などを積極的に食べました。実は私は卵が大の苦手なのですが(アレルギーではありません)、卵はタンパク質の吸収率が良いとのことだったので、なんとか調理法を工夫して、1日に2個ほどは取るようにしていました。
ピルをやめたことで生理も重くなっていたので、生理中は貧血にならないようレバーもよく火を通して食べました。魚は青魚、牡蠣などもよく食べました。
野菜はほうれん草やブロッコリー、ニンジン、カボチャなどをたくさん食べました。
オフィスに出勤する日のお昼や、仕事が遅くなる日でどうしても自炊が無理な時は、冷たいお弁当などを食べるのではなく、外食にして、温かい汁物のメニューなどを頼みました。
ファミレスを利用する時は、値は張りますが、きちんとタンパク質や鉄分が取れるようにステーキセットなどを食べました。
まるで試合を控えるアスリートさながらに、栄養バランスを考え、作り置きしたり、工夫したりしながら食生活や体を管理しました。
さらに、とにかくストレスを溜めないように、ゆっくり過ごすことを医師からアドバイスされたので、仕事はセーブしながら、あまり心配し過ぎないよう気楽な気持ちで、将来行きたい旅行先のことなどを考えながら過ごしました。
温活や食生活に気をつけながらも、自分を追い詰めないように、あくまで自分が苦しまない範囲で、無理はしないように気をつけていました。
卵巣の手術や入院費用などを払った後でしたし、仕事もセーブしていたので、残業代が減って財政的にはとても苦しかったですが、母からの金銭的支援でなんとかやり過ごしました。母もギリギリの生活なのに申し訳なかったです。
そうして20日ほど過ごして、2月の初めに生理が来ました。
生理3日目に病院の予約をとり、採卵に向けた検査を受けました。
血液検査の結果、ホルモン値などはすべて範囲内であり、またエコーにより卵子の素となる卵胞も右と左に二つずつあることがわかりました。
初診の時の卵巣機能の数値からすれば、とても良い状態とのことだったので、今回の周期で卵子を採卵することとなりました。
採卵に向けて、その日から自宅で排卵誘発剤等の注射を行うため、自己注射の指導などを受けました。
注射は不安があったものの、実際毎日やることになると案外慣れるもので、思ったよりもすんなりと行うことができました。
次は卵子の状況を見るために、生理7日目に再度の受診となりました。とにかく四つの卵胞からしっかり卵子が取れるよう体を気遣いました。
その期間も鍼治療を2、3日に1度くらいのペースで施術を続けました。
生理7日目の検査の結果、三つの卵胞から卵子が育っていることがわかりました。残念ながら一つの卵胞は育ちが悪く、採卵は最大で卵子三つとなりそうでした。
採卵の日は生理から10日目に行うこととなりました。
採卵の直前の数日は注射の種類も変わり、薬などの服用も時間単位での管理が必要となりました。
薬や注射の時間はすべて携帯のリマインダーをセットして管理しました。
採卵の二日前から前日は、いざ採卵を前にすると、本当に卵子がちゃんと取れるのか、取れたとして相手が現れるだろうか、採卵の痛みはどのくらい痛いだろうか、お母さんにまでお金を出してもらったのに上手くいくだろうか、いろいろな不安や怖さが駆け巡り、泣いては立ち直り、泣いては立ち直りということを何度も繰り返しました。
とにかく「卵子が育ってほしい」という一心で、落ち込む度に母や叔母に励ましてもらいながら、採卵の日を待ちました。
排卵してしまうと採卵ができなくなってしまうとのことだったので、お腹への衝撃や圧迫がかからないように気をつけながら、まるでお腹の中に壊れやすいガラス玉を抱えているような感覚でした。
ただ、気持ちには明らかな変化がありました。
卵子凍結を決断する前には「そこまでして私は子供が欲しいだろうか」と思っていた気持ちが、この頃にはハッキリとした「子供が欲しい」という想いに変わっていました。
採卵当日がやってくると、採卵自体はあっという間に終わりました。痛みは想像ほどではなく、右側に関してはほとんど痛くなく、左側だけ少し痛い程度のものでした。
採卵そのものの痛みよりも、未知の体験に対する怖さのほうがずっと勝っていました。
採卵の間、不安に思う気持ちを察するように、励ますように看護師さんがずっと肩をさすってくれていたのがとても心強かったです。
採卵後の痛みも出血もほとんどなく、午前中に採卵してお昼には帰ることができました。
結果として一回目の採卵では、無事3個の卵子が凍結できました。しかし実際の妊娠の確率を考えると、3個では心もとありません。
妊娠の可能性が高まるよう、採卵を行った帰り道にはすでに再度の採卵を決意していました。
採卵後すぐには感じていなかったのですが、ほっとして気が緩んだのか、採卵を行った日、家に帰ってシャワーを浴びながら大泣きしました。それは人生で最も、と言っていいほどの大泣きでした。
その涙の理由が、安堵感によるものなのか、様々なことに対してのプレッシャーからなのか、
それとも、もっと早くにやっておけばよかったという後悔の気持ちだったのか、
単純に心や体の痛みに対するものだったのか、
将来の不安に対するものだったのか、自分でもよくわかりませんでした。
ただ、ひとしきり泣いた後で私の中に残っていたのは、前に進もうとする気持ちでした。
#卵子凍結 7 卵子と時代
こんなふうに私の一回目の卵子凍結は終わりました。
「早くに産んでおけばよかったのに」、人にはもしかしたらそう言われるかもしれません。
でも、自分の人生を怠惰に生きてきたつもりは一切ありません。むしろ勉強も仕事も恋愛もいつも全力で一生懸命に生きてきました。
非正規雇用の時は正規雇用になれるよう頑張ったし、正規雇用になってからはキャリアアップするよう頑張りました。
恋愛だって真面目に向き合ってきました。
自分の人生でその時々の最善の選択肢を選んできたつもりです。
そして今は、なんとか残された妊娠の可能性を掬い上げるように、なんの支援もない中で自分で費用をかけ、精神的にも肉体的にも耐えながら、先の見えない世の中でも妊娠に前向きに向かっています。
私のケースは特殊な事情と思われるかもしれません。
しかし、だとしたら、世の中にはどれほど特殊な事情を抱える女性がいるでしょうか。
私の場合は卵巣のう腫でしたが、女性に関わる病気は子宮内膜症や子宮筋腫などもあります。
そうした表だった病気としては出てこなくても、働く女性の多くが、生理不順や生理痛に悩んだり、気付かないうちに不調となっていることがあるはずです。
晩婚化だけが問題ではなく、現代女性の多くがストレスやプレッシャーに晒されながら日々生きています。
もちろん男性も同じです。
今後は不妊治療が必要な方もますます増えていくでしょう。
私の時が戻せないのと同じように、時代の流れも戻すことはできません。
自然な形でできることが一番だとは思います。
ただ現実、適齢期にみんなが結婚したり子供を持ったりすることは、もう難しいのです。社会の動きが、時代が、もうそんなことは言っていられないのです。
そうした状況を鑑みずに、事情を知らない第三者による「若いうちに産んでおけばよかったのに」や「若いうちに産んだほうがいい」という安直な言葉は、てんで的外れなアドバイスのうえに当事者を傷つけるだけです。
今はもう卵子凍結も、先入観なく選択肢として一般的に考える時代です。
一つ前の時代の、時代遅れな先入観や偏見を削除して、現実に即した考え方にアップデートする必要があります。
また、卵子凍結だけではなく、女性の健康のケアや精神的ケア、子育て世代の雇用や就労環境、社会全体のシステムが少しでも今の世の中に追いつき、生きやすい社会に変わっていくように、そう願っています。
#卵子凍結 8 まとめ。私が伝えたいこと、それと少子化について
最終的に私が卵子凍結を経験して、こうした情報や知識が広まって欲しいと思ったのには4つの点がありました。
▶︎一つ目。同年代と若い世代
私はまず同年代や若い世代に、情報を共有したいと思いました。私が「二十代の時に卵子凍結しておけばよかった」と思ったように、卵子凍結そのものや検査の情報、女性としての健康に対する知識が広まることで、あの時こうしておけばよかった、という女性が1人でも減ればと思いました。
私の場合は卵巣のう腫がきっかけでしたが、それをきっかけに自分の健康状態に気付かなければ、卵子凍結すらそのまま時間切れとなっていたかもしれません。
また私が結果的に、今こうした状況にあるように、もっと若い世代、今の二十代が私の歳になる頃には、もっと多くの女性が似たような状況で悩むかもしれないと思いました。
卵子凍結への知識や情報が広がることで、先入観を払拭し、自分の気持ちや健康について目を向け向き合う機会が広がればと思いました。
▶︎二つ目。親世代
親世代にも卵子凍結や不妊治療について、もっと知識が広まって欲しいと思いました。昔は結婚も早かったですし、親世代では卵子凍結や不妊治療について経験している人は今よりずっと少ないと思います。
自身の子供への、「早く結婚したほうがいい」「早く産んだほうがいい」というような安直なアドバイスは、プレッシャーや嫌悪感を高めるだけですし、妊娠や出産に関しては女性にとっても男性にとっても、とてもセンシティブな問題です。
いざ不妊治療となった時、または卵子凍結をする時、どれほどの孤独や、不安や、痛みなどと戦うことになるか。また、正しい知識を持っておかないと、卵子凍結や不妊治療に対する先入観や偏見、無理解は当事者を一層苦しめます。
本人たちが必要とした時、できる限りの必要な支えを提供してください。
そうしたことを理解して欲しいと思います。
▶︎三つ目。一般社会とメディア
世間、つまりは一般社会にも理解が広まって欲しいと思いました。
少子化や子育ての問題は社会全体の問題です。卵子凍結や不妊治療は生理周期に合わせたものですので、治療を行うには在宅勤務や休みの取得などが必要となります。
働き方改革や柔軟な働き方、休みが取りやすい働きやすい職場環境は、不妊治療を行う方だけでなく、子育て中の方、また従業員の心のケアにも役立つものです。
不安定な世の中で企業にとってもいろいろと難しい状況はあると思いますが、人口減少で人材確保が難しくなれば会社にとって都合の良い従業員だけを雇うわけには行きません。
社会全体として理解が深まるといいと思います。
また、メディアや報道機関の皆さんには正しい情報の発信をお願いしたいです。ピルや卵子凍結、不妊治療など、性に関わる問題はセンシティブな問題で当事者からは情報が共有されにくい現状があります。
すでに時代や状況は変わっているのに、情報が時代に即した内容に更新されていないのです。しかしSNS等には間違った知識や思い込み、ネガティブな発信が溢れています。
だからこそ、正しい情報を発信する人が必要です。届くべき人のところに、届くべき正しい内容と情報がきちんと届くように、積極的な発信をお願いします。
▶︎四つ目。政府と自治体
私はこの声や現状を政府や自治体、公的機関に伝えたいと思いました。公的支援の拡大は必須です。
少子化対策が必要なことは20年前から言われていましたが、公的支援やシステムは現代の状況にまったく追いついていません。
私は20代の時に卵子凍結しておけばよかったと思いましたが、もし本当に20代で決断していた場合は体の負担は軽くても、金銭的負担はもっと厳しかったと思います。
必要なのは、子供を産めというプレッシャーを若い世代に与えるのではなく、子供を欲しいと思う方々に実社会に即した形でその心に寄り添い、必要な支援を届けることです。
卵子凍結や不妊治療への支援の拡大はもとより、私のように妊娠に向けて具体的な行動を起こした場合に、公的支援があることによって、政府の応援があるんだというメッセージになります。
妊娠出産は若い世代の健康が大きく関わってきます。自分の体が今どういう状況にあるのか、妊娠できる体なのかどうか、そうしたことを調べる際の検査費用や健康ケアの支援も拡大が必要だと思います。
また当然ながら、非正規雇用なども多い中で、子供を産みたい、子供を持ちたい、と思った時に安心して産むことができる生活基盤の支援も重要だと思います。
晩婚化が進み、妊娠出産や子育てと同時に介護の問題も抱えるケースが増えています。そうした時に包括的な支援が受けられるように、一体的に考える必要があります。
出会いがないという若者の声に対して、婚活事業などを公的支援する場合がありますが、問題はそんなに単純ではないのです。
婚活事業のようなサービスはすでに民間に充分にあります。
地方でも同じです。自治体が婚活事業や街コンを開催したところで果たして、若い世代や子育て世代がその自治体に継続的に暮らし、出産して子育てしたいと思うでしょうか。
効果の程もわからない単発的な事業に貴重な財源を使うより、小さくとも、若い世代への継続的な支援を検討するほうがよほど重要ではないでしょうか。
また、産めよ増せよ的なプレッシャーや価値観の違いを問うたところで、嫌悪感や反発を生み、事態を悪化させるだけです。
それよりももっと、政府や自治体、公的機関にしかできないことに目を向けましょう。
社会支援のシステムが、現代の世の現実にまったく追いついていないので、今子供を産んでいる人は、たまたますべての状況が上手く整った恵まれた環境にいた人か、個人の自己努力や犠牲のうえで無理して産んだかのどちらかです。
さらに、大多数の人は、絶対結婚したくない、子供を持ちたくないということで結婚や出産をしないのではなく、迷いや不安の中にいるのです。
そうした層に何ができるか。
子供を持ちたいかもしれない、そう思った時に検査が無料でできるようにする。
今は事情があって産めないけど将来的には産みたい、そう思った時に、検査費用や卵子凍結費用を助成する。
妊娠に向けて具体的に行動する時に、きちんと休めるように企業や経済界に働きかける。休んだ費用に対して援助や補償をする。
がん検診などの無料クーポンなどを配る時に、最低限の検査だけを提供するのではなく、若い世代が自分の健康状態と向き合えるようにオプションの検査や健康ケアのメニューを充実させる。
卵子凍結や妊娠や不妊治療に不安な時に、きちんと心や体のケアをできる支援をする。財政的支援をする。
不妊治療や卵子凍結に対する偏見や先入観を払拭し、正しい知識と理解を社会に促す。
こうしたことは政府や公的機関にしかできないことです。
現状を、もっと危機感を持って対応検討いただかなければなりません。
「来年度から検討する」、そのようなスピード感では遅いのです。すでに少子化対策にまったく間に合っていない現状があるのですから、明日にでも開始する、そのぐらいのスピード感が重要です。
検討しているその間にも、私たち女性の卵子は日々歳をとり減り続けているのですから。
最後に
どうして若者が結婚しないのか、子供を産もうとしないか。なぜ卵子凍結をするのか。なぜ不妊治療に悩むのか。
そうした問いに、もし私が子供を産んでこなかった女性の一人として、
「何で結婚しないんだ、なんで子供を若いうちに産まないんだ」
そんな風に上から目線で言われたとしたら、私はこんな風にキレ気味で反論するでしょう。
「私だって産める状況だったら産みたかったよ。でも産めなかったんだから仕方がないじゃん。ただでさえ大変な世の中だから、子供はいらないかもしれない、そんな風に思ってたけど、やっぱり子供を産みたい。
そう思って、いざ具体的に妊娠に向けて現実に行動に移したのに、妊娠に向けた体の状況を知るための検査すら自費!😱
こんなに苦労してお金をかけて、痛い思いをして子供を産むための具体的な行動をとってるのに、税控除すらしてくれない!😭
少子化少子化って言いながら、婚活パーティーみたいなのにはお金を出して、私が助けて欲しい時にはちっとも手を差し伸べてくれない。
仕事だって社会のために一生懸命に頑張ってきたのに、これじゃあ産んだって産まなくたって結局のところは“自己責任”だとか言って大事な時には私の手を振り払うんでしょう?!😡」
しかしそんな風に言い合いをしたところで、何の改善にもつながりません。
若い世代と過去の世代とで傷つけ合ったところで、社会には何の役にも立たないし、お互いの隔たりを生むだけです。
もうそんな不毛な戦いをするのはやめにしましょう。
私は、私より若い世代に涙を流しながら日々を生きてほしくはありません。
私が病気をした時、救急隊や医師の方の「大丈夫ですよ」という言葉に、どれだけ助けられたか。
私が卵子の採卵を行った時、背中をさすり続けてくれた看護師さんのその手が、どれだけ心強かったか。
社会に求められるのは、その言葉やその手のように、そっと背中を支え、気持ちに寄り添い、共に苦しい時を乗り越えようとする姿勢なのだと思います。
先が見えない時代、子供を持つのが難しい時代。
それでも、子供を産みたい、子供が欲しいかもしれない、そんな風に思う人達がいます。
困難な状況や不安、痛みを前にしても、立ち向かって前に進もうとする女性たちがいます。
彼女たち、彼らの気持ちを、どのようにして掬い上げるか。
彼女たちの希望を、どのようにして下支えするか。
一緒に前を向いていきましょう。
一緒に考えていきましょう。
私もあなたと一緒に頑張りますから。
私でお役に立てることがあれば私も協力しますから。
卵子凍結を検討する女性の方へ
卵子凍結を考えるにおいては、迷ったり疑問に思ったりすることがあると思います。迷ったときは決断していなくても、検査だけでも受けてみてはいかがでしょうか。検査を受けたうえで検討してもいいと思います。
検査を受ける際には健康診断結果やこれまでの病院で受けた採血等のコピーなどがあれば持参するようにしてください。
また、決断してからも、不安に思うことがあると思います。相談する人が身近にいない時やクリニックに聞きづらいことなどがある時には私でよければ相談にのりますのでメッセージください。
#卵子凍結 9 私の卵子凍結の具体的な費用・日数・生理状況など
私の一回目の採卵の卵子凍結にかかった費用と休みの日数です。
実際には二回以上採卵を行っていますので、初回検査以外の費用は採卵回数分、保管料については採卵した卵子数分、増えていくこととなります。
また、当然ながら、採卵回数が増えるほど仕事を休んだ日数も費用と同様に増えていきます。
〇卵子凍結そのものの費用(採卵1回、すべて自費診療)
初回検査費用など 11,000円*
採卵周期のための検査や薬の費用 78,278円*
採卵費用 116,210円
初回年の凍結保管料 34,210円
採卵費用 計239,698円
*検査費用については、これまでの健康診断の結果や総合病院での詳細な採血検査結果などを持ち込んだことによる減額を一部受けています。
検査内容により金額が異なりますのでご注意ください。
今後の保管料 55,000円 1年間/1本
*1本につき3個の卵子まで
○保険診療や鍼治療などの医療費用
鍼灸治療費用 60,000円
保険診療費用 860円
○交通費(都内)
2ヶ月間で約8000円
〇購入した物の費用など
ヒートテックなどの体を温める下着代やウォーマーなど 約15,000円
ホッカイロ、温熱シート、よもぎパッドなどの費用 約10,000円
体を温めるために通った銭湯費用 約9000円
その他エアコンなど体を温める器具の電気代費用のアップなど 約15,000円
計49,000円
〇一回の採卵にかかったトータル費用
(翌年以降の保管料を除く)
トータル 357,558円
〇最終的な私の卵子凍結全体にかかった費用(採卵2回分)
最終的に採卵2回で卵子凍結を終了しました。本心としてはもう少し数を確保したかったですが、自費ではこれが限界でした。
30代後半の私が数年後に今回の卵子を使用した場合、卵子10個でおそらく1人妊娠出産が可能かという数です。もちろん、あくまで確率的なものですので確実な妊娠が保証されているものではありません。
666,098円(採卵2回、卵子10個分)
(交通費等の諸費用も含めた総額735,598円)
今後の保管料 220,000円/年(卵子3個*2本,卵子2個*2本= 計4本分)
〇仕事を休んだ日数
一回目の採卵のうち卵子凍結そのもので休んだ日数 時間休などを含めて計6日
鍼治療や保険診療による検査などを含めて、一回の採卵で実際に休んだ日数 約2ヶ月間の期間のうち合計約9日
2回の採卵全体での休暇取得日数 合計約12日
〇生理の周期
12月の生理 12/21~
1月の生理 1/16~ (前回の生理から26日後)
2月の生理 2/4~ (前回の生理から19日後)、2/24~ (前回の生理から20日後・採卵から10日後)
〇私の卵子凍結に関する内容詳細
費用・スケジュール・内容・休日取得状況など
(2023/3/12 2回目採卵分更新)
#卵子凍結 10 卵子凍結に関する情報・記事などのまとめ
○私が卵子凍結を行ったクリニック
両角レディースクリニック(銀座2丁目)
https://morozumi-lc.com
・卵子凍結に関する動画
卵子凍結全般、シミュレーション例
自己注射について
採卵に関しての動画
○不妊治療専門に行う鍼灸治療院
ひまわり鍼灸治療院(丸の内線 南阿佐ヶ谷駅近く)
○卵子凍結に関する記事など
・朝日新聞
30歳、仕事も順調「でも子どもは…」 卵子凍結、会社からの選択肢
卵子凍結の「光と影」 東大卒39歳が感じた「男性モデルへの迎合」
・NHK
東京都が支援の卵子凍結 体験者が語る きっかけは?費用は?
・毎日新聞
「自分と向き合う」卵子凍結 見えてきた母になる意味 #女性の選択
〇SNSでのシェアについて
共感いただけた方は、多くの方に情報や現状が伝わるよう、ぜひSNSなどにより本記事をシェアいただけると助かります。
よろしくお願いいたします。
・私のTwitterアカウント
乙女のたわごと @ranko19489821
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?