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珠美の島〜18年の時を経て〜最終話

店を早々に閉めて
4人で夕食へ

戦後、間もなく出来た
公設市場のひとつ
ここ栄町市場も
来る度に人の気配は薄れて
お昼間でも半分以上の
シャッターは閉まったまま

匂いだけ残して

ただ
反対に夕暮れ時になると
あちらこちらに出来た
居酒屋に明かりが灯りはじめ
外にあるテーブルと椅子で
それぞれの乾杯が始まる

この旅でお気に入りになった
クラフトピール
75(ナゴ)ピールを
外のカウンターで一杯だけ飲み
5年ほど前に来た時と同じ居酒屋へ

白い雑居ビルの2階にあるお店
カウンターと
テーブルがふたつあるだけの

チャンプルーと
スクガラス豆腐
魚の天ぷらを注文し
飲み物は
泡盛をカラカラで頼んだ

きみこさんとまーぼぅの
3人いる娘さんの近況
食堂の取材に来るネット関係者の話
そしてまーぼぅが大阪で
調理師の勉強をしていた頃の事

何気ない会話をただ交わしたり
笑いあったり

相反する
不意打ちの出来事や景色で
自分の心が洗い出されたり
軌道修正を余儀なくされたりする

どちらの瞬間も
生きる糧で

ひとつひとつの出来事が
混ざり合い
心と身体に吸い込まれて
同化していくような
濃密な三日間を過ごせた

それはここじゃなくても
どこにいても
取りこぼさず
感じて生きていければ
良いんだけど
きっと

これからこの先
何が起きて誰と出会い
どんな時間を重ねていくのか

これまでのこと
これからのこと

自分が生まれる
ずっと以前から
連綿と続く無数の人と時間の
織り成しがあって
今ここが存在していること

そして今ここはひとつの通過点で
この先にはまた無限の人と時間が
繋がり、広がり続けていくこと

どうせなら
染み渡るような日々を
選んで生きていきたいと思う

まだ残ってるし
途中で投げ出している事



久米島を発った日
戸田くんから
メッセージをもらった

「宗形さんに昨日のお礼に行ったら
 東奥武のジャングル状態が酷いから
 7月くらいに草刈りに行く予定を
 立てるってさ!
 お手伝いに行けるようなら
 行ってくるよ!」

そう、
まだ終わって無かったな

生きる糧がまたひとつ
増えた事に感謝

その時のために
今を生き抜かないとだ

明日も晴れるし
休みだし

午前3時の音楽を
時計が奏でた

また明日は、いや今日か

どんな一日になって
どんな風につながっていくんだろう

まだまだ
旅は終わりそうにないから
そろそろ、寝ないとね

もうすぐやってくる
新しい朝のために

おやすみなさい
また明日。







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