Rangok

職業、フォトグラファー 沖縄と神戸のハーフ ギターと歌があるから やっと人らしく 生きていけてる気がする。

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最近の記事

「美しい」って何なんだ

日が沈むころ 白い砂で有名なビーチでぼんやりしていると 子供を三人連れた夫婦がやってきた 父親はなぜか大量のゴミを持参しており ビーチの入り口に備え付けられていた 既に溢れかえっているゴミ箱の横に 何の躊躇もなくドサッと置いて浜へ歩いて行った 「白ーい!」 と言って砂を触ろうとする子供めがけて 「汚いから触ったらダメ!」 と怒る母親 海辺近くまで移動していそいそと花火を出し 子供たちと夏の夜を楽しみ始めた 「わあ、綺麗だねー」 なんて。 奇麗、きれいだけどさ なんか、なあ

      • 線香花火

        今年の夏の初め、決めた事 「線香花火をする」 大人になると意外としなくなる 夏の夜遊び 数年に一回ふと、思い立って じんわりと線香花火を眺めていたりするのだが 今年はすぼ手と長手のふたつを比較してみた 数年前は すぼ手が一番奇麗だと思った記憶があるのだけど 今回は長手に軍配 製品の差や個体差があるにしろ 火花の散り方や 燃え落ちるまでの好みも もしかしたら変わったのかも知れない 大人が好きな花火と 子どもが好きな花火が違うように こうやって人は変化していくのかな 自

        • 南方熊楠の宇宙

          博物学者であり生物学者であり 民俗学者なんていう トリプルな経歴の 江戸末期生まれの人物 南方熊楠の記念館を訪れた その日は父親の命日 自分の人生が大きくシフトしていく スタートでもある日 自然公園の一角にあり 人がわんさか来る施設では無いので 静かに観るつもりだったが 元気すぎる小学生の団体とタイミングが被ってしまった 「…う…集中、集中」 無理くり作った瞑想状態で見学 主要な展示物はワンフロアのみ さらっと眺めるなら30分もあれば充分かな、な量だけれど 自筆の文

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          1本

        記事

          珠美の島ー東の奥武の記憶ー

          久米島本島に寄り添う二つの島の 東側に浮かぶ小さな島 今は「オーハ島」という名前らしいが それ以前の呼び名は「東(あがり)の奥武(おう)」 明治時代に二家族が入植し 1960年代には100人を超える島民がいたそうだが その後徐々に人は減り、2000年初頭には数人のみが暮らす 静かで小さな島に戻っていた 私のおじぃとおばぁは 久米島の人だ おじぃが亡くなったあと お墓だけがその「東の奥武」に残っている事を知り 「うーとーとしに行きたいから場所教えて」と おじぃの姉である

          珠美の島ー東の奥武の記憶ー

          とある音楽プロジェクトのお話-7話

          6話から、4年経った 父の死とコロナとで それどころでは無くなっていた もうやめようと 何度も思ったのに その度に いろんな出来事が起こって やめない選択が繰り返された おかげて捨て身なので 楽曲に関して 容赦ない砲撃浴びせ 一回仕上がった音は 全てお蔵入りとなった プロジェクト= ボーカリストオーディション オリジナル音源作ります! バックアップはプロが全力で!な オリジナル曲作ってライブはしてたが メンバー以外と音を作るなんていう 機会が無かったので 好奇心

          とある音楽プロジェクトのお話-7話

          珠美の島〜18年の時を経て〜12話

          「はい、これ着てね、  濡れるから靴は脱いでこれ履いてね」 宗形さんから ライフジャケットと マリンシューズを借りる 潮が引くと 歩いて渡れる程の 浅瀬になるので 潮が満ちている間に船を出す 今日は14時頃までが 満潮の時刻だ 港に着き、船に乗り込む 空はどんよりしてきたが 雨は降っていない 「はい、ここ座ってね」 船の真ん中あたりに 渡されている板の上に 母、戸田くんと三人で腰掛けた モーターのある 後ろが運転席になっている エンジンの音が 勢いよく鳴り出し

          珠美の島〜18年の時を経て〜12話

          珠美の島〜18年の時を経て〜最終話

          店を早々に閉めて 4人で夕食へ 戦後、間もなく出来た 公設市場のひとつ ここ栄町市場も 来る度に人の気配は薄れて お昼間でも半分以上の シャッターは閉まったまま 匂いだけ残して ただ 反対に夕暮れ時になると あちらこちらに出来た 居酒屋に明かりが灯りはじめ 外にあるテーブルと椅子で それぞれの乾杯が始まる この旅でお気に入りになった クラフトピール 75(ナゴ)ピールを 外のカウンターで一杯だけ飲み 5年ほど前に来た時と同じ居酒屋へ 白い雑居ビルの2階にあるお店 カ

          珠美の島〜18年の時を経て〜最終話

          珠美の島〜18年の時を経て〜19話

          モノレールで安里へ戻り 栄町の食堂へ お昼時は とっくに過ぎていたので ひとり、カウンターに お客さんがいるのみ 「おかえり、  遅かったねー  ウートートできたねー?」 母の小学校時代からの親友 きみこさんと 旦那さんであるまーぼぅが 切り盛りする食堂 いつ来ても何も変わらない 自分の家のように 帰って来たな、と ほっとする場所 「お腹すいたねー、何する?  ソーキそばね?」 そこはもちろん ソーキそばで 先に瓶ビールを開け 母と乾杯 来た、おそば お盆に

          珠美の島〜18年の時を経て〜19話

          珠美の島〜18年の時を経て〜18話

          第二次世界大戦時 激しい地上戦の場となった 前田高地とも呼ばれる 浦添城跡 1945年4月25日 進撃が始まり 当初は日本軍が優勢だったが 2週間足らずで アメリカ連合国軍に 占領された 琉球王国時代の王 英祖王と尚寧王の眠る場所 そそり立つ高台に びっしりとお墓が建ち並ぶ タクシーを降りたのはいいが 広すぎて場所の検討がつかない 眺めのいいところだなー 海も見渡せるし なんて、のんきな記憶しか無く 数年しか経っていないが 既に古びれた記憶は 頼りにならず 叔父に

          珠美の島〜18年の時を経て〜18話

          珠美の島〜18年の時を経て〜17話

          宿泊先の ホテルへ向かう 島の中心の イーフ地区からは 離れたホテルなので 帰りながら 夕飯時に開いていそうなお店を いくつか教えてもらった あっという間なのに 何日も経ったような 矛盾した感覚に包まれる 濃密な時間 何年分もの感情の揺れが たった数時間で 一気に凝縮したような ホテルの玄関先で ふたりで並んで 写真を撮ってもらった 撮るのは好きだけど 撮られるのは苦手なので 少し照れくさかったけど 小さくなっていく 戸田くんの車に めいっぱい手を振って 今回の

          珠美の島〜18年の時を経て〜17話

          珠美の島〜18年の時を経て〜16話

          善田公園を出て みどり丸の慰霊碑を探す 草や木々、空以外には 何もない道を走って行くが それらしい何かは見つからない 「今あるかどうかはわからないよ」 宗形さんの言葉がよぎる 「もういいよ、行くの、諦める」 「いいの?」 「うん」 日が沈む時間も 近づいてきていたので これ以上やみくもに 車を走らせるのは 申し訳無いなと 「五枝の松行った事ある?」 「ううん、ない」 「じゃ、せっかくだし行ってみようか」 走りながら 戸田くんが久米島に住む事になった いきさつを聞

          珠美の島〜18年の時を経て〜16話

          珠美の島〜18年の時を経て〜15話

          久米島本島へ 戻るために船へ 潮流が変わるから 行きほど濡れないと思うよ、 と戸田くんが言った通り 飛んでくるしぶきに 視界が遮られる事なく 行きよりも 穏やかな海をすべり 本島に到着 岸に着く前に船着場に見えた 戸田くんの船を近くで見たくて 宗形さんの船を降りて 桟橋を渡る 桟橋の左手 「あそこの、ほら、ベージュ色の」 船体に 英語で名前が書いてある 「船の名前は神様?」 「そうそう、神様の名前」 船の真ん中に ベンチのような細長い台 ボンベを担ぎやすくする た

          珠美の島〜18年の時を経て〜15話

          珠美の島〜18年の時を経て〜14話

          「井戸は  多分この辺りのはずよ」 宗形さんが指すその先は 亜熱帯の植物に 隙間なく覆い尽くされた密林 道どころか 井戸まで全部 覆い尽くされたか、 あまりにも風景が違いすぎて 信じられない気もしてる ほんとにここなの、って 気もしてるんだけど どちらにしても もう進めそうに無いし うん、て 自分を納得させて 諦める事にした そばまで来てるし 来てる? これは来てるって 言えるのかとか 支離滅裂 携えたお花 胸に抱えたまま 途中道を逸れて、ゆるい坂を下

          珠美の島〜18年の時を経て〜14話

          珠美の島〜18年の時を経て〜13話

          宗形さんの後ろを 三人並んで着いて歩く 「鬱蒼とした」 と言う言葉が ぴったり当てはまる 無人島になった期間の間に 人が住む以前の 自然の島の姿へと 戻っていったんだろう 「ちょっと先見てくるから  ここで待っててよー」 と宗形さんは道を右に外れ 茂みの中へと入って行った 「あー  あったあった」 しばらくすると 茂みの中から声がして 宗形さんが戻ってきた お墓のある方向では無いが 誘なわれるまま行ってみる かなりのサバイバル 「えーっ  こんなところ行くの

          珠美の島〜18年の時を経て〜13話

          珠美の島〜18年の時を経て〜12話

          「はい、これ着てね、  濡れるから靴は脱いでこれ履いてね」 宗形さんから ライフジャケットと マリンシューズを借りる 潮が引くと 歩いて渡れる程の 浅瀬になるので 潮が満ちている間に船を出す 今日は14時頃までが 満潮の時刻だ 港に着き、船に乗り込む 空はどんよりしてきたが 雨は降っていない 「はい、ここ座ってね」 船の真ん中あたりに 渡されている板の上に 母、戸田くんと三人で腰掛けた モーターのある 後ろが運転席になっている エンジンの音が 勢いよく鳴り出し

          珠美の島〜18年の時を経て〜12話