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伊勢物語 ~唐衣~
こんばんは。雨の日も多い中、埃が洗い流された後の新緑の美しさが眩いばかりです。いかがお過ごしでしょうか。
お茶をしていく上で古典や和歌の知識は、あった方がより楽しめます。ということで有名作品の特に有名な話などもぱらぱらとご紹介していきましょう。先々週に紹介した和菓子「唐衣」つながりで、まずは伊勢物語を少々。
「むかし、をとこありけり。」で始まる段の多い、全125段から成る日本最古の歌物語。成立は900年前後と推定され、在原業平(825年生~880年没)と思われる男性が主人公となっている段が多い作品。成立間もない頃は、業平が五男だったことから「在五物語」などと呼ばれていたとも。
第九段で、をとこが「東の方に、住むべき国求めにとて」京から東に向かい(これより東下りの段と呼ばれます)、三河國八橋(愛知県知立市八橋町と推定)に至り休憩していた時、燕子花が美しく咲いているのを見て、ある人が「かきつばたという五文字を句の上にすゑて、旅の心を詠め(折句という技法です)。」と言うので、読んだ歌が
か 唐衣
き きつつ馴れにし
つ つましあれば
は はるばる來ぬる
た 旅をしぞ思ふ
ここから燕子花を模したお菓子に「唐衣」という銘をつけることがよくあります。たまに燕子花を見て、業平が折句も含めて自分で工夫してこの歌を詠んだ(様々な技法が織り込まれた句です。とても一回では書けない・・・)ように説明されているものもありますが、上記のように折句のお題は同行の人が出しています。
唐衣は当時の貴族の女性の正装、豪華な衣といった説明がされます。伊勢物語を漫画化したものなどを見ると女性はいわゆる十二単的なものを着ていることが多いのですが、実際は違います。遣唐使廃止は894年。800年代は唐風文化の影響を受けた衣装を着ていた可能性が高く(確実に当時の具体的な風俗がわかる資料はありません)、百人一首の絵札でも業平と同時代の小野小町が十二単などを着ていますが、これも実情を表していない可能性が非常に高いです。わたしたちは平安時代というと十二単をイメージしてしまいますが、こういった衣装になっていくのはまだ100年くらい後なのです。京都の時代祭では、実情に近いと思われる衣装を小野小町役の方がお召しになっているのを見ることができます。
さて、今日の菓銘は「青梅」。
スーパーなどの店頭にもよく見ますね。梅酒や甘露煮を作るのに使われます。梅干しは完熟梅を使うので、もう少し先。青梅は色合いも美しくこの時期よくお菓子でも見ますね。
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いただく前に気付いたので、逆側からの写真も。こういうこだわりもいいですねぇ。勝手なものですが、調理するときは取るのが面倒なへたも、お菓子で作りこまれているとうれしくなります。
既に梅雨入りした地域もあるようですね。大阪も来週は雨天予報の日が多いです。気温も低めですので、どうぞ体調管理にお気をつけを。