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ほうらく
少し寒い日が続いていますが、これが過ぎると暖かくなりそう。木々の枝先も膨らみ始めています。
2月にお稽古やお茶事で使う大炉。後炭では炮烙(ほうらく)という素焼きの平たい土鍋を使います。炮烙は、本来調理器具の一つです。
今は自宅でする人も少ないでしょうが、茶葉を焙じたり、大豆を煎ったり。もちろん銀杏などでも。節分の豆も炮烙を使って煎ったのですが、昔は三世代同居も珍しくなく、子供の人数も多い大家族で、数え年に一足した数だけ豆を食べる、など言われることを考えると、撒く豆も含めかなりの数を煎ってたのだろうなぁと思います。香ばしい香りが家中に漂ったでしょうね。第二次世界大戦で子供が田舎に疎開する際、お腹が減った時に食べられるように煎った豆をお手玉に入れて持たせたという話を聞いたこともあります(お手玉の中身に煎り豆というのはそう珍しい話ではありませんが)。また少しばかり深さがあるので、食材を入れた後、同じ径の炮烙を蓋にして被せて蒸し料理を作るのにも使えます。直接入れると火当たりが強いのか、食材を塩で覆ったり、松葉で覆ったり(香りもつく)することが多いようです。炮烙を使うと高温で蒸すことができるので、最近はオーブンなどを使う方が多いですが、名残の時期の風炉や手焙り、火鉢などに使う藁灰作りにも使えます。
今回、90歳前後のお茶の先輩方にお話を伺ってみたのですが、ご本人たちは炮烙を使って家事をしたことは無いと。ただ、親や祖母が使っているのは見たことがあるとのことでした。現代だと茶葉を焙る炮烙を探そうとしても、かなり小型で蓋無しの急須に似た形のものが多く使われているようですし、豆はすぐ食べられるよう煎ったものが売られているので、お茶界隈以外では使う機会は中々ないでしょうね。今回聞いたところによると、茶葉を焙じる際は、炮烙を火鉢の五徳に載せ、そう強くない火力の下、使っていたようです。熱源を無駄なく使う工夫でもありますね。火鉢は暖房器具でもあり「コンロ」にもなる。
調べてみると、ほうらくは「炮烙」とも「焙烙」とも漢字があります。で、漢字辞典を見ると、「炮」がつつみ焼きする、蒸し焼きにする、あぶる、燃やす、「焙」が弱い火にかざして乾かし温める、ほうじる、あぶる、と。前者の方が火力が強そうに思います。
逆勝手でもあり、後炭手前は常にも増してややこしく感じるかもしれませんが、極寒の時期の大炉ならではの楽しみでもあります。少しずつ身につけてまいりましょう。
今日の菓銘は「てまり」。
讃岐手毬や加賀手毬を初めて見た時には、あまりの美しさに見惚れました。置物より使える方がいいかな、と加賀手毬の技法で糸を渡した指貫を旅先で買ったのですが、美しくて、もったいなくて、結局使えないままです。使わないのももったいないのですが・・・。
三連休、お仕事の方も楽しいご予定ある方も、暖かくしてお過ごしください。