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日銀新総裁と金融政策の転換

 本マガジンは時事ネタ(主に経済)をトピックに呟く分量の短いシリーズです。考察も含まれますが感想メインです。 

1. 異次元緩和の終焉と金融政策の正常化

 先日の日経新聞で以下の記事が気になりました。

 日銀総裁の後任人事に関する記事です。黒田総裁は4月で任期満了となり、市場では次期総裁の行方が注目されております。これまでも複数名の候補の名前が挙がっておりましたが、このタイミングで日経が雨宮副総裁に後任打診という記事を掲載したことはインパクトがあります。波乱が無ければ雨宮さんが次の日銀総裁となります。 

 これからの日銀に求められるのは出口戦略と言われておりますが、政府からの独立性の確保がより重要と感じます。政府-日銀-財務省がそれぞれ三竦みの状態が好ましいと思います。現状、日銀は実質的に政府の子会社と言われており、金融政策が政治に振り回されています。 

 中央銀行は政治と協力関係にあるべきですが、主従関係にあるべきではありません。FRBは政権に配慮しつつも組織の使命を優先し、失敗しながらも金融政策を主体的に決定しコントロールしようとしている様が見えます。 

 他方で日本ではこの10年間、政権の意に沿った金融政策に終始してきました。プラスの面もありましたが、マイナス面を直視し認めることができない点が官僚組織の欠点だと思います。過ちを認めて方針転換すれば傷口が浅く済むものを責任の所在を曖昧にし、ずるずると意味の無い行為を続けることは日本らしい、とも言えます。 

 日銀総裁は内閣の任命であり国会同意人事の対象です。よって政治を無視できないのも事実ですが、現状はパワーバランスが崩れています。日銀の独立性が有名無実となっており回復が必要です。歴史的にも中央銀行は政権から度々、圧力を受けてきました。 

 市場の注目は異次元緩和の出口戦略ですが、それ以上に重要な点は金融政策の独立性の確保です。YCCとマイナス金利の廃止は段階的に市場にインパクトを与えないよう注意しつつ実行されると思いますが、有事から平時に戻ったあとの政策が気になります。 

 日銀は10年の間で大量のETF・国債を購入し資産額を膨らませてきました。日銀とGPIF(年金基金)が市場の担い手というのは皮肉なものです。本来、日銀は市場介入により株価の下支えをすべきではありません。(当然です)黒田総裁は政権の都合の良いように利用されてきた感があります。黒田さんは財務省出身の官僚なので仕方ないかもしれませんが気骨に欠けるようにも感じます。 

 日銀のETF保有問題に関しては下記の書籍で詳しく説明されておりますので興味のある方は確認ください。

 インフレ目標2%は理想とする経済状況を達成するために手段に過ぎませんが、日銀はこの10年間、手段を目的とすり替え固執してきました。インフレ率2%に固執する必要はなく、別のアプローチで理想とする経済状況の実現を模索すればよかったのです。

 手段に固執するのではなく、その先に存在する目的達成にコミットすることで手段を問わず、大胆に行動することが今後の日銀に求められると思います。 とはいえ、目的をどう定めるかは政治との協議が欠かせません。政治と中央銀行は経済を維持する両輪です。

 強いていえば財務省が余計なことをせず手も出さず・口も出さないことが望ましいです。様々な成長戦略・金融政策が考えられますが、必要性の乏しい「増税」は全てを滅ぼします。

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