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オルカンvs S&P500


※2024年1月に執筆し投稿出来ていなかった記事となります。そのため一部の記載内容は既知となっている点をご了承ください。

1. はじめに 

 X界隈の株クラでは日常的にオルカンvs S&P500論争が繰り広げられています。新NISAの開始もあり、多くの方がこの論争の答えを求め情報収集に励んでいます。本稿ではオルカン派vs S&P500派の宗教論争に一定の帰結を与えることを目指します。 

2. 論理最適解と過去実績最適解

 最初に結論を示します。オルカンは論理的最適解であり、S&P500は過去実績最適解となります。「論理的」とは効率的市場仮説をベースにしています。オルカンは極力個別株式のリスクを回避し、市場リスク(マーケットリスク)のみを受入、市場リターンを得る発想です。 

 S&P500の過去実績最適解とは直近の一定期間を切り取りリターンの良い指数への投資を指します。過去10数年は米国株が絶好調であったためS&P500が最適解になりました。(ナスダック100でも成立します) 

 理論派で市場平均リターンで満足できる方はオルカンが最適解になります。オルカンよりも良いリターンを求め、直近実績を重視する方はS&P500やナスダック100が最適解になります。

 尚、過去実績最適解は時代の変化に応じて変わることに注意が必要です。米国が覇権国家でなくなった場合、S&P500ではない米国以外の指数が対象となる可能性があります。 

理論重視の投資家と実績重視の投資家の共存を示す図

 新NISAとの関連でいうと、運用期間が20年以下の方は米国株中心でも問題ないと考えます。米国が覇権国家で資本主義のリーダーである期間がどの程度続くか分かりませんが、今後20年程度はなんだかんだ覇権を維持できるのではないかと思います。(偶発的な戦争が勃発しなければ) 

 一方で20年以上の長期運用の場合、マクロ視点での世界経済のトレンドの変化にも注意を向ける必要があります。この場合、米国偏重がリスクになる可能性もあり、オルカンの市場平均というコンセプトがいい塩梅に作用します。 

 ここまでを整理すると、現時点で50歳以上の方は米国中心でも問題なく、50歳以下の方はオルカンの方が良いかもしれません。個別指数とオルカン(≒市場リスク)とはリスクの大きさに差があることから、最終的には個人のリスク許容度に依存します。 

3. 市場平均とあなたのリターンの差異

 インデックス投資を語る際に多くの場合、リターンは平均年率5%などと過去実績を示されます。これは事実ですが、あなたが獲得できるリターンを保障するものではない点に注意が必要です。 

 一般にインデックス投資の平均リターンは一定期間以上(最低でも10年以上の長期)を前提にした「平均値」であることを認識する必要があります。平均6%のリターンが期待できるインデックス投資であっても、単年では+-20%を超える可能性があるのが株式投資です。 

 金融機関が示すインデックス投資を実施した場合の資産の増加を示すチャートは右肩上がりですが、その過程はでこぼこ道であり〇〇ショックによって資産が大きく目減りするタイミングが必ず訪れます。そのようなタイミングでも保有し続けることを前提に平均〇%のリターンは成り立っています。

山あり、谷ありのインデックス投資のリターンを示した図

 しかしながら、多くの投資家はインデックス投資に「タイミング」を持ち込むことにより、定期的に利確・損切をすることで平均値とは異なるリターンとなります。自身のリターンが指数よりも低い方は利確・損切が裏目に出ており、指数を上回っている方は「タイミング」が成功したと言えます。 

 インデックス投資は積極的にタイミングを狙う投資手法ではないことから機動的な利確・損切は推奨ではありませんが、絶対禁止でもありません。明らかな暴落時(リーマンショック・コロナショックなど)において、追加リスクを受け入れることが出来れば長期リターンは平均値を上回ります。 

 インデックス投資家は保有し続けること、暴落時に売却しないことが実践出来れば合格点です。更に上を目指す場合には、数年から十年単位で訪れる暴落時に+αの資金を投じることです。 

 尚、緊急で資金が必要な場合以外には売却はしません。自身の相場観によりバブルの兆候を感じ取った場合には現金比率を調整します。平時は株式・現金を7:3で運用している場合、バブルを感じ取った場合には一時的に5:5まで現金比率を高めると言った運用です。 

 この場合の比率調整は税制を考慮し、売却による調整ではなく追加投資の抑止による現金比率の引き上げが望ましいです。長期運用を場合、税金の支払いは可能な限り先延ばしにするのが運用の鉄則となります。 

4. リターンの向上を目指して

 正しい投資先(指数インデックス)に投資し長く保有することがリスクを抑えながら市場からリターンを得る再現性の高い最善の方法ですが、少しでもリターンを向上させる施策を列挙します。 

 まず金融取引で発生する手数料をコントロールすることが重要です。取引時にスポットで発生する手数料、保有期間中に継続的に発生する手数料など様々なタイプがありますが、取引に伴う手数料は安ければ安い方がいいです。

 次に税金です。出来る限り支払わないように利用可能な制度をフル活用することが前提ですが、回避できない場合は可能な限り、納税タイミングを先送りにするのが肝要です。ベストは死後まで繰延べです。 

 ここまでが基礎編です。応用編としては借入を利用した運用と納税の繰り延べの組み合わせです。これは「buy, borrow, die戦略」と呼ばれる手法です。富裕層限定のようの思われがちですが、1億円以上の資産から実践可能な再現性の高い手法です。

 余裕を持って運用する場合、3億円くらいの資産があると金融機関との交渉を含め余裕が持てると思います。論理的には借入金利が十分に低く、安定的に金融資産からの期待リターンが借入金利を上回り続けられるのであれば、借入しながら運用を継続するのが最適解となります。 

 実際には借入金で追加の運用をする積極スタイルではなく、借入金を生活費等に充当し保有資産の運用を継続し、自身の死後に積上げた元金を一括で返済するスタイルが合理的です。 

 現状、日本の金融機関ではこのタイプのローン商品を販売しておりませんが、投資家を中心に需要が強いと予測されます。私はこれを「リバース証券担保ローン」と呼んでいます。一般的に証券担保ローンは短期で高金利な点がボトルネックです。 

 このデメリットを解消する仕組みが「リバースローン」です。これはリバースモーゲージと同様の仕組みで株式や債券等の有価証券を担保に(掛目は50%程度)に生前に毎年500万円などの定額を金融機関から低利で借りる仕組みです。 

 生前は利子分だけを返済し、死亡時に元金を一括で返済します。仮に500万円を10年間継続的に借り入れると元金は5,000万円です。これが死亡時の返済額です。リバース証券担保ローン利用者は生前に自身の資産を取り崩すことなく(利確することなく=税金を支払うことなく)運用が継続できます。 

 借入金で生活しつつ、運用資産を育て最大まで増やした後に負債を相殺することで最大まで資産を増やしつつ、税金の先延ばし・減額が可能となります。是非、buy, borrow, die戦略は日本でも広がって欲しいと思います。 

 FIRE民の方は資産寿命の延命効果も期待できることから是非検討いただければと思います。唯一の課題は金融機関がこの未開拓の市場の可能性に気付いていない点です。

 私は金融業界の経験が長く、銀行・証券関連の方との仕事が多く色々な情報交換をしていますが、このアイデアに喰いつく方はこれまでおりませんでした。上記スキームについて詳細を知りたい方はメッセージをいただければご返信します。 

 上記が個人として可能なリターン向上策です。お金には色はありませんが、所有者の属性は意図的に切り分けることが可能です。個人と法人を使い分けることで経費の活用・控除枠の利用・税率アービトラージが可能となります。 

 個人として利用可能な手段を採用しつつ、別人格としての法人を設立します。自身の給与を経費扱いで処理し、社宅や福利厚生制度を利用します。企業保険や小規模企業共済を活用しPLを少し赤字にします。理想としてはPLマイナスでCSはプラスという状態です。減価償却等をうまく活用できると赤字でも合法的に手元にキャッシュを残すことも可能です。 

5. まとめ

 個人としては論理最適解の商品(オルカン)を辛抱強く長期保有し、可能な限り手数料を押さえ、税金を先延ばし、可能であれば借入をかつようすることで運用資産の延命と税金の繰り延べを両立し、税制優遇を活用し(NISAやイデコ等)します。 

 余裕がある方は法人を設立し資金を個人と法人に分離し、法人経費で自身の給与や家賃を社宅として捻出し、加えて各種控除をフル活用することで課税所得を圧縮し所得税・住民税・各種社会保険料を最低水準にコントロールします。 

 これらの施策によってリターンを最大限に高めつつ、国からの搾取を最低限に維持することが可能となります。あまり触れられませんが、資産管理において「搾取率」のコントロールは重要です。 

 運用リターンの向上は自身でコントロールが困難ですが、制度の合法的な活用による「搾取率」のコントロールは可能です。運用リターンを5%向上させるには大きなリスクを追加で背負う必要がありますが「搾取率」を5%低下させるのは意外と簡単だったりします。 

 特に現在サラリーマンの方は、自身が代表者の法人を1つ保有することで比較的容易に搾取率をコントロールできるようになります。中小企業経営者は搾取率のコントロールが容易なため表面上の年収以上の生活が可能です。これは源泉徴収され調整の余地がほとんど存在しないサラリーマンとの大きな違いです。 

 将来的にはサラリーマン兼マイクロ法人代表兼個人事業主、というような複数の顔を持つ方が増加すると考えます。これは経済成長の停滞、人口減少、賃金の減少などの要因を考えると必然と言えます。 

 昭和のようにサラリーマン一本足で安定した生活を維持できる時代は終わりました。副業・起業は当たり前ですし、資産運用も個人と法人を使い分けるのが今後は一般化します。

 

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