2023年の勝手にテクノロジー予想③
<コトを起こすために使われるプロと、これまでの延長線的に使われるプロの2極化>
現在のリテラシーを維持するだけか延長するだけのプロの価値の低下します。
例えば、freeeやマネーフォワードといった会社の提供しているプロダクト群やサービス群、そしてメディア・コンテンツ群やテンプレート群によって、既に私のような会社を作ったことがない人でもスムーズに法務手続きに必要な書類を作ったりといったことをおこなうハードルが下がっています。
これはAIとかは関係なく既にこの10年くらいで進んできた領域ですね。
かくいうM&Aクラウドという私がいまいる会社も、M&Aや資金調達をもっともっと民主化していくことを実現するサービスを開発・提供しています。サービスもオペレーションもコンテンツもテンプレートも認知度も本当にまだまだですが。。。
上記のようなサービスやコンテンツに加えて、ここからはAIや機械学習を通じて、士業の方々が(その方々の中でテンプレートとかは一部あれど)いちいちゼロからやってきた業務の7~8割くらいをショートカットして、残りの2~3割を士業の方が詰めて完成度と質を上げる、という働き方になっていきます。というかなってきています。
リーガルテック業界での、パラリーガルの業務のAIでの代替はイメージしやすいですよね。
ちなみにそもそもですが、誤解を恐れずに言えば、本来は「士業」というのは社会的には不要な状態が望ましい職業です。
例えば行政書士とか司法書士とか社会保険労務士とか会計士とか税理士とかは、正しく文書作成するとか給与支払い・計算しるとか会計処理するとかの、技術的/知識的な難易度の高さや何と言っても面倒臭さを解消するための職業なわけです。
全国に行政書士は4.5万人くらい、社労士は4万人くらいいるらしく、行政の書類作成のフォーマットや情報通信技術が使いこなせていないが故に、これだけの人、そして他の士業も含めれば数十万人の方々が面倒臭さの解消のためのジョブをしているわけです。
もう1度言いますが、システムの未整備に起因する、本来は不要な職業に従事しているアービトラージ的なジョブの士業が数十万人もいるわけです。
どう思いますか?
もちろん、このようないわゆる「処理」型のジョブだけでなく、「コンサルティング」としての付加価値が大きいクリエイティブなジョブをしている人もたくさんいるので、上記の数十万人の全員がひとり残さずアービトラージ的なジョブをしているわけではないです。
でも、普通にもっと減ってもいいですよね。
PLG(Product Lead Growth)という概念が最近話題になって本も出ていますが、OpenAIというエンティティが作っているChatGPTやブログ記事とかを作れるCopyAIといったプロダクト・サービスを使うことで、人に頼らずとも膨大な人類の知識をQ&Aで引き出したりサクサクとコンテンツを作ったりとかできるようになってきています。
現実的には、PLGが成立する財市場は少なく、例えばSlackとかNotionはPLGの事例として有名ですが、toB業界でめちゃ有名なSalesforceやSAPなどのプロダクトは、そのセールスの人やコンサルタントの人、そしてそれの導入支援をするコンサルティングファーム(アクセンチュアやBIG4など)がいないと、そのITサービスとしてそもそも使いこなせない、という事例が大半です。
余談ですが、Notionは「Notion AI」というこれまたPLGとしてめちゃくちゃ使われる可能性のある機能をNotion上に追加しようとしていますね。
私としても、現代的なUIUXを実現し、LegalForceといったプロダクトもPLGされて契約書自動チェック&リライトできてみんなのビジネスがラクにならないかなと妄想します。けど現実はまだそんな感じです。
そしてそれはしばらくはそんな感じだと思います。
ここが肝だと思っていまして、今回の投稿の本題である「プロの2極化」はここから生じています。
すなわち、一次想起を取るような関係性がクライアントと士業/プロの方の間に無い限り、プロは人材的代替可能性に埋もれて発見されず、AIに頼るような起業家がかなり増加していくと予想します。
というか、コミュニケーションコストをあんまりかけたくないような時間的制約があるなかだったり、そもそも人間とあんまり関わりたくないけど仕方なく起業した方からすれば、プロをわざわざ探していくよりも、紹介してもらってその人をとりあえず頼ってみるか、ググってAIや機械学習ツールを使うという選択肢になります。
私だったら、まず1人で調べてみて触ってみる癖があるので、最終的に使いこなせるかどうかは結果論としてさておき、ググってツールを探します。それはAI/機械学習のテクノロジーが組み込まれているものかもしれませんしそうでないかもしれません。どちらでも使えればいいですが、人類の膨大な知識の蓄積を効果的・効率的に使うのであれば、AI/機械学習のテクノロジーが組み込まれているものを使いますよね。
これが極の1つです。
もう1つの極は、AIなどに本質的に知見がない限りはプロは頼らなくても良いにも関わらず、AIなどを使用する最低限のリテラシーが低い/無い層は引き続きプロに頼ることになります。
頼られる側のプロからしたら、最低限のリテラシーが低い/無い層からの受注ばかりを受けることになります。
ここで重要なのは、それはそれでまだまだパイは大きいため、プロの人は自分が必要とされていてクリエイティブで約似合っていて意味があると思いこんでしまう現象が発生することです。
つまりは、人類の知恵を前に進めるでもなく、アービトラージ業務の従事して命(=時間)を消費していくプロが大量発生します。
その低リテラシー層とそこから受注する方々は、「仕事」という生きがいをもたらしてくれる重要なものの価値をどのように捉えていくのでしょうか。
まとめると、今回のテクノロジーテーマについては下記の2点を予想します。
プロの本質的なクリエイティビティが見直され、ITサービスで代替可能なものはリテラシーがある層からはどんどんITサービスに代替される。ITサービスを使いこなせる上でプロとしてクリエイティブな仕事ができる人の価値と生産性が飛躍的に上昇する。
ITサービスで理論的には代替可能な仕事も、世の中の膨大なパイとして残り、経済的実態と技術的可能性が乖離する。
2023年の私の勝手なテクノロジー予想の第3弾は以上になります。
ご覧いただきありがとうございます。
P.S.
ちなみに私のライフワークは「人と循環を科学し、人間性を支える社会システムをつくること」で、どうやって人間性を支えるのか、人間性とは具体的に何か、人間性は動学的に且つ歴史的にどのように変化/不変なのか、といった観点は常に持つようにしています。
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