『SYMBOL PALLET』ゲームデザイン備忘録~三章:メカニクスから考える勝利条件
序章:”色”の特性の利用
一章:一次元から二次元へ
二章:自由と制限の狭間
★三章:メカニクスから考える勝利条件
四章:数理的処理によるルール制定
五章:テストプレイによる調整
閲覧ありがとうございます。ボドゲ工房Rのランブンです。
前記事では『SYMBOL PALLET』のメカニクスの根幹である「タイル配置」のルール制定について書きました。今回はそのルール制定を踏まえた上で、ゲームの肝である”勝利条件”をどのように考えたのかについて記事にしていきます。
それでは本題に入ります。
勝利条件と終了条件の基本的な考え方
勝利条件と終了条件はメカニクス的に親密な関係である。何故なら、ゲーム(および競技)はプレイヤーが「勝利条件を満たした時にゲームが終了する」か「終了条件を満たした時に勝者が決定する」のが原則だからである。そのため、勝利条件と終了条件はセットで考える必要がある。
『SYMBOL PALLET』に限らず、ゲームの”勝利条件”や”終了条件”を決定するにあたって私が意識していることは「プレイ時の明確性」「メカニクスとの親和性」「ゲームの収束性」である。
まず、「プレイ時の明確性」。これは「プレイヤーがゲームの終了タイミングを見落とさないようなルールにする」という意味である。ゲームを遊ぶにプレイヤーにとって、ゲームの根幹(醍醐味)以外の部分での見落としは良い体験ではない。特にゲームの勝利条件や終了条件は勝敗に直結することが多い。実際には見落とさなかったとしても、「見落とすかもしれない」と意識し続けなければならない状況はプレイヤーにとってストレスである。そのため、仮にゲームの公平性(ゲームバランス)に若干の影響があったとしても、この可能性は排除するべきだと私は考えている。
次に「メカニクスと親和性」。これは「メカニクスとは無関係の終了条件を後付けしない」という意味である。良くあるのは「ゲームを終了させるためだけにラウンド数を制定する」だ。このような後付けはプレイヤーが処理をし忘れやすいシステムとなりやすい。終了条件に関わらず「○○という問題を解決するために××というルールを加える」という手法は煩雑なルールになりやすいため、あまりオススメはできない。
最後に「ゲームの収束性」。これは「どのような実力やプレイ方針のプレイヤーがゲームに参加していたとしても、(進行さえすれば)必ずゲームが終了する」という意味である。勝負が拮抗しているならまだしも、ただ単に全てのプレイヤーが行き詰まり悠長に時間を消費している状況はプレイヤーにとって良くない体験のはずである。もちろん、ゲームの性質的にその可能性を排除できないものもある。けれども、もし排除できるのにもかかわらず排除できていないのであれば、それは再考すべきである。
以上の3点が、私が終了条件や勝利条件を考える際に注意していることである。
『SYMBOL PALLET』の勝利条件
『SYMBOL PALLET』の勝利条件を考えるにあたり、「チップとその下にあるタイルが勝敗に絡む」ことを念頭においていた。何故なら、タイルを広げていく行為そのものが勝利への道筋であれば、プレイヤーがプレイの方針を決めやすいからである。よって、「チップの下にあるタイルの面積を勝利条件(点数)とする」発想は必然であった。
「タイル配置」のルールを制定中は、勝利条件を「手札のタイルを使い切ったプレイヤーの勝利」と想定して考えていた。今でこそ「チップの下にあるタイルの面積を勝利条件(点数)とする」は当然のルールのように思える。けれども、実際には様々な思考を巡らせて現在のルールを制定している。
終了条件に関しても、使用しているメカニクスを考えれば「山札が無くなったタイミング」とするのが最もシンプルだと考えた。総タイル数が決定する前までは「〇点取ったプレイヤーが現れた時点で終了(取ったプレイヤーが勝利)」も候補として考えていた。しかし、そのルールは「プレイ時の明確性」に欠けているため不採用とした。その代わりに総タイル枚数を変えることにより、ゲームのプレイ時間を調整している。
最後に
今回は、前回のルール制定から勝利条件や終了条件を考えたプロセスを記事にしました。「メカニクスが○○だから勝利条件は××」というプロセスかつ、使用される勝利条件自体は珍しいものではないため、記事としては簡素なものとなりました。けれども、勝利条件や終了条件はプレイヤー体験に大きな影響を与えるものなので、このプロセスが少しでも皆様の参考になればと思います。
次回は今回までに考えてきたメカニクスやルールから、ゲームとして遊べるまでに落とし込むプロセスを記事にします。細かいルールの制定なのでマニアックな記事になりますが、ゲームを仕上げる際の思考がちりばめられていますので、読んでいただけたら幸いです。
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今後の情報にこうご期待
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