『チキン・ラン』ゲームデザイン備忘録~二章:ルール作り~
【目次】
序章 ボードゲーム=題材+ゲーム性
一章 方針決定
★二章 ルール作り
三章 テストプレイ
四章 テーマ決め
五章 まとめと感想
【この章のポイント】
・ルール作りは他作品のツギハギ
・ルールを広げるのは簡単、問題はそれをいかに削るか
・削る≒結合、結合は削るより簡単
前の章で制作するゲームの方針は決まったかと思います。この章では具体的なルールを作る方法を書いていきたいと思います。
とは言ったものの、実際には「方針で決めたことを達成するためにどのようなルールが必要かを考え、様々なゲームからそれを引っ張ってくる」という感覚です。
例えば『チキン・ラン』は「土地(モノ)の価値がプレイヤーの行動や意思によって変動する」という方針だったので、交渉する方法や実際に交渉するために必要なモノを考えるために「モノポリー」のルールを参考にしました。参考にしたのは以下の通り。
・交渉はどのようなタイミングでも行うことができる
・交渉に使えるものは土地(モノ)とお金で、お金がそのまま勝利点となる
・土地(モノ)を持つことで後々メリットが得られる
またルールを簡潔にするためにそれぞれを以下のように変えていきました。
・交渉はどのようなタイミングでも行うことができる
➡行うプレイは交渉だけ、ターン制は省略しリアルタイム制とする
・交渉に使えるものは土地(モノ)とお金で、お金がそのまま勝利点となる
➡土地を平面ではなく点とすることでボードという概念を無くす
・土地(モノ)を持つことで後々メリットが得られる
➡土地(モノ)の数がそのまま勝敗に直結するようにするために、土地の多い人が勝つというルールにした
さらに、お金しか持っていないところからゲームを始めると時間が掛かるのでモノは所有している状態からスタートする、モノが平等だと交渉しにくいのでランダムとする、ランダムとすると単純にモノを多く持っている人が有利になるのでモノを持つことへリスクをつける、全ての情報が見えていると最初のモノの分配で決まってしまうので非公開情報とする、などといったことを考えていきました。
このようにして文字に起こすと、ルール作りの際重要なのはルールを持ってくる作業よりもルールを少なくする作業であるということが分かってきます。何故ルールを少なくするのかというと、ルールがあればあるだけプレイヤーはストレスを感じてしまうからです。情報はストレスです。どれだけよい文章でも長すぎると読み手が疲れてしまうのと同じように、ボードゲームにおいてもルールが増えればそれだけプレイヤーは疲れてしまいます。ルールはゲームを面白くするためのものですが、そのためにプレイヤーにストレスを与えてしまったら本末転倒となってしまいます。制作活動を行ってきていない方には理解してもらいにくいのですが、
ルールをなるべく減らすことが良質なゲームを作るうえでは必要不可欠なのです。
これは重量級のゲームを作るときも同様です。重量級ゲームはただでさえプレイヤー負荷(記憶する量が多い、ダウンタイムが長いなどプレイヤーがゲームを行う際に感じるストレスのこと)が大きいので、必要なこと以外は本当に削ってあげないと面白さよりもストレスを感じてしまうからです。
さて、ルールの作成というのは
他作品から引っ張ってくる
→まとめたルールを削る
→方針に合うように調整する
という手順の繰り返しであることが分かりました。
しかし、これだけではまだ制作を行うのは難しいのでコツのようなものをいくつか書いていきたいと思います。
・削る≒結合
先ほどからルールを削ることの大切さを述べてきましたが、実際に削るというのは難しい作業です。そこでおすすめしたい考え方は、削る≒結合というもの。ゲームのルールを俯瞰的に見て、まとめられそうなルールを一つにまとめてしまうという考え方です。
例えば『チキン・ラン』では、「ターン制の途中に自由に交渉できる」というルールを簡潔にするために本来ターン内に行っていた行動をリアルタイムで行うようにしました。また、ボード上にあった土地をカードにすることにより平面情報を丸々無くしたり、最初は土地、お金、勝利点と別れていた要素をお金と勝利点をまとめることにより減らしたりしました。
・行動にリスクをつける
ゲームのルールを考える際常に考えなければならないのは「行動するメリットとリスクのバランス」です。これが考えられていないとある特定の行動を行うだけの単調なゲームとなってしまいます。
『チキン・ラン』の場合、モノを集める行為、モノを集めない行為、常にそれなりのモノを確保している行為すべてに裏目となる状態を設定してあり、それがそのままゲーム性となっています。
本章はここまでとなります。あまり具体的なことは描けなかったのですが
・方針を決めることが大切(前章)
・基本的には模倣
・なるべく削ることが大切
とだけ理解していただければ幸いです。
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