ランブン雑談・ボドゲ編 その11 何故私は”アンチ人狼”だったのか
閲覧ありがとうございます。ボドゲ工房Rのランブンです。
今回はタイトルの通り私が”アンチ人狼”だった(人狼に対し良いイメージを持っていなかった)理由について書いていきます。現在では楽しく人狼をプレイしている私ですが、一昔前は人狼というゲームにあまり良いイメージを持っていませんでした。この記事では私が感じていた人狼に対する悪いイメージを共有し、それが間違ったイメージであるということを皆様に伝えていきます。「人狼を食わず嫌いしている」「そもそも人狼ってどんなゲームか知らない」という人向けの内容となりますので参考にしていただけたらと思います。
なお、この記事は「人狼は面白いゲームなのでオススメします」という内容ではありません。残念ながら人狼はプレイするためのハードルが高かったり、好き嫌いがはっきり分かれたりする傾向があります。具体的には
・初心者が入るとゲームが壊れやすい
・初心者は吊られやすく何もできない時間が長くなりがち
・定石が分からずゲームにならない
・練習したくてもやりたい役職が引けるとは限らない
・チーム戦なのでプレッシャーが大きい
・ゲーム性質上自身の上達が目に見えにくくモチベーション維持が難しい
・言葉が厳しくなりがちで嫌な思いをする可能性が高い
などといった傾向があります。ですので、正直人狼は他の人に気軽にオススメできるゲームだと私は思っていません。ただ、それと同時に最初の苦しささえ超えてしまえば非常に面白いゲームであると言えます。この記事ではあくまで間違ったイメージを払拭することを目的とし、そのイメージのせいで人狼をやってこなかった人が少しでも人狼に興味を持ってくれることを願っています。
前置きが長くなりましたが、そろそろ本題に入ります。
人狼とは
人狼とは、村人と人狼に分かれ自身の陣営の勝利を目指す議論を主軸とした正体隠匿系ゲームです。議論を行いプレイヤーを一人追放する昼のフェイズと、人狼が村人を一人襲撃する夜のフェイズを繰り返し、村人は人狼全員の追放、人狼は村人を規定数まで減らすことを目指します。
人狼とは”推理”ではなく”推測”のゲームである
私が”アンチ人狼”であった最大の理由は、人狼というゲームの本質を誤解していたからです。私は人狼ゲームのことを”推理ゲーム”だと考えていました。
【推理とは】
ある事実をもとにして、まだ知られていない事柄をおしはかること。
(『goo国語辞書』より)
https://dictionary.goo.ne.jp/word/%E6%8E%A8%E7%90%86/
けれども、実際に人狼をプレイしてみるとその考えは間違っているということが分かりました。人狼は”推理”を行うゲームではなく”推測”を行うゲームだったのです。
【推測とは】
物事の状態・性質や将来を、部分的・間接的に知り得た事柄や数値から、おしはかること。
(『Oxford Languages』より)
もちろん、人狼には”推理”の側面もありますが、ゲームの本質は”推測”であると私は考えています。私の解釈が100%正しいとは言いませんが、少なくとも人狼を”推理ゲーム”と認識するよりは”推測ゲーム”と認識するほうがより正確に人狼というゲームを理解できると思います。
ただ、この説明だけでは”推理”と”推測”の違いが分かりにくいと思いますので、人狼の具体的な盤面を例にあげながらこの二つの言葉の違いを解説していきます。
例:9人村 占い1人 霊媒1人 狩人1人 狼2人 狂人1人 村3人
初日占いランダム白 連続護衛禁止 役職欠け無し の場合
一般的な進行が行われた場合、占い師と霊媒師のCO(役職と名乗り出る)はほとんどのケースで以下の通りとなります。
・占い1人ー霊媒0人
・占い0人ー霊媒1人
・占い1人ー霊媒1人
・占い2人ー霊媒1人
このパターンのうち、人外(狼or狂人)が嘘をついているパターンは最後の1つだけ、占い師に狼が出ているか狂人が出ているかの2パターンとなります。つまり、このルールで起きうる最初の盤面は5パターンしか存在せず、そのうち3つは役職が本物であると確定しているということになります。すなわち、人狼ゲームが”推理ゲーム”として成立していた場合、事実に基づいて答えが求められなければいけない(でなければ”推理ゲーム”として成立しない)ので「人狼ゲーム=この5つのパターンを覚えるだけのゲームである」ということになります。(しかも、発生した事実に基づいて答えを導くためそこに議論の余地は存在せず、ある種の奉行問題が発生します。)
けれども、実際には人狼ゲームは”推理ゲーム”としては成立していません。人狼ゲームではここから様々な人から意見があがります。例えば占い2人、霊媒1人の場合
A「COタイミング的に占い師の内訳は本物と狂人だと思う」
B「グレー(COも占い結果も出ていない人)に怪しい人がいなから占い師に狼が潜んでいそう」
C「AとBは意見が割れているからAB二人とも狼ってことは無さそう」
といった具合です。ここで重要なのが、誰の発言も確定的な真実ではなく間違っている可能性も十分にあるということです。例に挙げた発言はどれも確実性に欠け、真実かどうかは確かめようがありません。だからこそ村人は議論を進め情報を収集し、より真実に近そうな答えに向かっていかなければなりません。このような曖昧な情報を取り扱い少しでも正しい答えにたどり着く確率をあげる、つまり”推測”を行うというのが人狼というゲームなのです。
このように私は人狼を”推測ゲーム”ではなく”推理ゲーム”であると認識していたため、あまり面白いゲームではないなと誤認していたのです。
人狼は牌を打たない麻雀だ
先ほどまでの説明で「人狼は”推測ゲーム”であり、面白い部分である」ということは何となくでも理解してもらえたかと思います。けれども、それは同時に人狼というゲームが非常に難しいゲームであるということを示しています。何故なら不確定な情報を扱う方が確定している情報を扱うよりも困難であるからです。このような特性に加え冒頭で述べた人狼の悪い所も相まって、人狼ゲームは新規参入の難しいゲームであるということができます。
では、どのような人がこの様々なハードルを乗り越え人狼を継続してプレイする可能性が高いのでしょうか。これには色々な意見が出ると思いますが、私は「麻雀をある程度本気でプレイしている人」が向いていると考えています。何故なら人狼と麻雀は、その本質や性質が近しく必要な耐性も似ていると考えられるからです。
手牌の速さや高さを競う個人競技・麻雀と、議論を行い説得や誘導を行うチーム競技・人狼。一見すると全く異なったゲームですが、以下の点に注目すると求められている素質は類似していると考えられます。
・”推測”の要素が大きい
・事前の勉強が大事だが、その努力がすぐに反映されるとは限らない
・勝負の揺らぎ(時の運)が大きい
これだけでは理解しにくいと思いますので、それぞれの意味を後述していきます。
まず、麻雀も人狼も”推測”の要素が非常に大きいという点です。麻雀も人狼も正解を導くためのヒント―麻雀なら相手の打牌、人狼なら発言―に正確性が乏しいタイプのゲームです。けれども、かわりに各個人の動きが相手の裏をかく行為ではなく自身または自陣営の利益になるような行動を行うことが多い―麻雀なら迷彩よりも牌効率、人狼ならトリッキーな作戦より安定した定石―ため”心理戦”を行うことはほとんどありません。そのため、両者とも”推測”を中心としたゲーム展開となります。つまり、麻雀も人狼もヒントとなるモノとそれを得るための技術が異なるだけで行っている行為自体は同じだと言えるということです。言い換えるなら、一方を楽しめるタイプの人間であればもう一方も楽しめる可能性が高いということです。
次に、事前の勉強が大事だが、その努力がすぐに反映されるとは限らないという点です。麻雀は牌効率や押引き基準、安全度の比較。人狼では盤面整理や役職の利益がある行動方法、精査のための論理などを試合前に勉強しておく必要があります。(ゲームの楽しみ方は人それぞれですが、私は両者ともゲームの本質を楽しむためには事前勉強が必要なタイプのゲームであると認識しています)けれども、それにも関わらず両者ともその勉強がすぐに結果に繋がるわけではなく、しかも自身の成長すら実感しにくいゲームとなっています。つまり、事前勉強が重要だがそれが結果にはつながらないという一見矛盾した現象を受け入れなければ強くなれないということです。なので、どちらのゲームを行う際も
・一戦一戦の結果に惑わされない
・結果が現れなくても事前勉強を怠らない
・試合で頑張ったから経験値を得られる、というよりは事前に勉強したから試合から経験値が得られるというイメージ
という考え方が必要であり、この考えができないとどちらのゲームもとても苦しいものとなってしまうと考えられます。このようにゲームと向き合うときのスタンスが同じであり、長期的にゲームを続けていく上では大事になってくるポイントであると言えます。
最後に、勝負の揺らぎ(時の運)が大きいという点です。これは前項と似ているのですが、麻雀も人狼も実力だけではどうにもならないことが多々発生します。裏を返せば初心者でも勝てる可能性があると言えるのですが、この性質は本気でゲームをプレイすればするほど苦しい要素となっていきます。人間誰しも努力は報われてほしいものですし、自分より格下のプレイヤーには負けたくないものであるからです。つまり、両者ともゲームを続けるには忍耐力が必要なタイプのゲームであると言えます。趣味の時間に苦しい思いをしたいという人はそういないと思います。勝負事はどれも忍耐力が必要なものですが、この二つのゲームはその中でも要求値が高い部類だと思います。逆に言えば麻雀と人狼一方のゲームを嗜んでいる人はすでにその素質を有しているため、もう一方のゲームを楽しめる可能性は他の人に比べれば高いと考えられるということです。
なお、麻雀も人狼も上手くいったときの成功体験のインパクトが大きい(俗にいう「脳汁が溢れる」)タイプのゲームでもあります。これだけ苦しいゲームであるのにも関わらずプレイヤーがそれなりにいるのはこのためだと思います。ここまで様々なことを書きましたが結局のところ最初の数プレイでこの成功体験を得られるかどうかが続けるために一番重要な要素かもしれません。
このように、麻雀と人狼では求められる素質が非常に似ています。もちろん、求められるスキルは大きく異なりますが、必要となる基本的な能力や根本にある考え方は同じであるといっても過言ではないでしょう。ですので、人狼に向いている人は麻雀プレイヤーであり、人狼を始めようという人は以上のことを頭に入れながら行うとその面白さに気付ける可能性が高まると思います。
人狼を始めたきっかけ
タイトルにあるように私はアンチ人狼でした。その理由は初めてプレイした人狼がそこまで面白くなく、かつ勉強を行ったら間違った解釈をしてしまったからです。
初めて人狼をプレイしたとき、私は一切人狼について勉強をしておらず周りの人もそこまで強くはありませんでした。(当時『ダンガンロンパ』が流行しており、そこで取り上げられていた人狼も自然とプレイする流れとなった)結果、私個人としては人狼の面白さを理解できないままゲームが進んでしまいました。けれども、負けたままでは終わりたくありませんし、周囲で流行る兆しがあったため、もう少し人狼を続けようと考えました。そこで人狼の定石を勉強し始めたのですが、勉強方法が良くなかったのか「人狼が”推理”ゲームであるならそこまで面白いものじゃなくないか?」という結論に至ってしまったのです。結果勉強をしたがゆえに人狼を好きではなくなってしまいました。(それでも事前の勉強は非常に重要なゲームだと思います)
それから5年ほどの月日が経った頃、ボードゲームで知り合った知人から人狼に誘われるという出来事がありました。当然まだアンチ人狼であったため断ることも考えましたが、当時制作していた『カルトとモグラ』(『MinC』の前身)が「人狼の悪い所を排除した正体隠匿系ゲーム」をコンセプトとしており、今後の制作の参考になるだろうと考え参加することにしました。ただ、その人狼会はその知人以外知り合いがおらず、勉強しておかなければ初対面の方々に迷惑をかけてしまうという状況であり、私は改めて人狼を勉強することとしました。その際、以前の勉強法とは方法を変え、プレイ動画をひたすら見るという方法で勉強を行いました。そして、動画を長時間視聴している中で人狼が”推理”ではなく”推測”のゲームであることを理解することができました。
当日の結果は2戦2敗と散々でしたが、ゲームの本質が分かった状態で臨んだため、非常に楽しむことができました。
その半年後くらいに他のボードゲーム会でも人狼会に誘われ、さらに本気で勉強を行い(当時合計30時間ほどはプレイ動画を視聴したと思います)、徐々に人狼というゲームにのめり込んでいったのです。
【視聴した動画のYouTubeチャンネルURL】
『人狼最大トーナメント』
https://www.youtube.com/channel/UCVd2ENbMlCNtXfWcIowlvBg
*個人的にはSEASON4~7がオススメ
最後に
今回は私がアンチ人狼であった理由について書きました。私は一度人狼から離れてしまったのにもかかわらず運よく面白さに気づくことができましたが、普通は一度離れてしまったら戻ってくるのはなかなか難しいと思います。人狼は元々ハードルの高いゲームですがこの記事を読んで「人狼はやったことないけど、こういう点に意識すると良いんだ」とか「昔やってみてダメだったけどもう一度やってみようかな」など少しでも思っていただけたら幸いです。
『チキン・ラン』
多人数短時間(4~7人、20分)、自由な交渉とシンプルな数比べ
キャッチコピーは「―破産か、罵倒か―」
【紹介動画(YouTube) URL】
https://youtu.be/1C1C3qeQsl8
【ボドゲーマ通販 URL】
https://bodoge.hoobby.net/games/chicken-run
『B級映画制作委員会』
多人数軽量級(3~6人、10分)、リレー式大喜利ゲーム
キャッチコピーは「限られた予算と時間の中で『俺達の最高傑作』を作れ!」
【紹介動画(YouTube) URL】
https://youtu.be/m1iDNyYKa1w
【ボドゲーマ通販 URL】
https://bodoge.hoobby.net/games/b-kyuu-eiga-seisaku-iinkai
ゲームマーケット2021春
『Mole in the Cult』出展予定
旧名:カルトとモグラ
多人数中量級(4~8人、60分)、じっくり遊べる正体隠匿系ゲーム
キャッチコピーは「裏切者には粛清を」
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