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野球ものの名文・名セリフ(29)

「伊予ピープルズ…勝つ・ぞな・もし!」

長尾誠夫『子規と漱石のプレイボール』

 子規はあの、日本人に野球を教えたとされるホーレス・ウィルソンとグラウンドの使用権を巡って揉め、その場の勢いでメンバーもいないのに野球の試合で決着を着ける約束をしてしまう。子規は親友の漱石にメンバーを集めてくれと泣きつく。そして漱石が集めたメンバーとはマドンナ、うらなり君、赤シャツ、野だいこ、狸校長だった...。

 各人に新しいキャラを与え、特にマドンナが運動神経抜群のスーパープレイヤーという設定が楽しい。しかしそれは病床に臥す子規が命を削りながら紡ぎ出す血の結晶であり、子規を助けてやれなかった漱石の贖罪の物語でもあった。そして最後にあっと驚くパラダイムシフトが待つ。野球小説の傑作。


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