来春利用開始予定のモエレ沼公園野球場…両翼の幅は国内最大級の101・5メートルに
両翼の深さが「芸術的観点」から決められるというのはたぶん野球場界初だと思う。「より円形に近づけるために同機構から両翼幅の延長を依頼され」というこだわりが個人的にツボる。創作的な欲求とプレイヤーの要求は決してバッティングしない筈である。「モエレ沼」という名前がまたアートっぽい。
もっとも両翼が深い球場は多分三重県の上野運動公園野球場の「104m」だと思うが、なぜかこの広さで軟式の大会ばかりやっている。ちなみに硬式の公式戦をやらない球場では早大の東伏見グラウンドの「左翼110m、右翼102m」というのがある。それ以前に前橋市の千本桜野球場は左翼119m、中堅も130mあったらしいが、google map で見てみると今は適当な広さにフェンスで仕切られているようだ。
だがこの球場は「日本一高いビルを」といった類の通俗的な価値観ではなく、あくまで上空から、斜めから、横からどう見えるか、という「芸術的観点」を優先しているところが新しい。スタジアムとて「作品」である。その価値観自体は別に新しいものではなく、代々木第二体育館という古典的なお手本が現存している。
建築とかデザイン関係の賞を取った野球場というと、大舘樹海ドームとか郡山市の開成山球場があるが、プロ野球とかオリンピックを主目的としないのに、何気に芸術関係の賞を取ってしまうような「野球場」が地方に増える傾向はスタジアムマニアとしては歓迎したい。我々スタジアムマニアも建築マニアのイチ派閥である。
不思議な事に、都会には古色蒼然としたボールパークが、自然の中には前衛的なオブジェのようなスタジアムが似合う。周囲の景観とどう折り合うかをちゃんと考えて設計され、老朽化したからと言って簡単に解体されず、その姿で長寿命化を望まれるような、住民の精神的支柱となり、存在感のあるスタジアムが増えて欲しいものです。