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来春利用開始予定のモエレ沼公園野球場…両翼の幅は国内最大級の101・5メートルに

 札幌市のモエレ沼公園内で来春の供用開始に向けて工事が進められている「モエレ沼公園野球場」の両翼が、“芸術的観点”から当初の計画よりも1・5メートル長い101・5メートルに変更され、国内最大級の広さになることが5日、分かった。すでに完成間近で、まもなく年内の工事が終了。雪が解ける来年4月下旬頃に供用開始となる予定だ。
 同公園を設計した世界的彫刻家イサム・ノグチ氏の財団からデザイン監修を委任されている「モエレ沼公園デザイン監修機構」とともに、上空から見た球場全体の形が円になるように設計が進められてきた。当初の計画は両翼100メートル、中堅122メートル。しかし、協議を重ねていく段階でより円形に近づけるために同機構から両翼幅の延長を依頼され、設計を変更。大和ハウスプレミストドームの100メートルや、プロ野球12球団本拠地で最大のマツダスタジアム(広島)の101メートル(左翼のみ)を上回った。
 札幌市内では25年度に札幌麻生、26年度から札幌円山両球場の改修工事が予定されており、来春からは主にアマチュア野球で使用される見込み。26年度から夏の地区予選が廃止される高校野球の南北海道大会も、新方式初年度はモエレ沼公園で南大会の一部試合の開催が予定されている。
 新球場は札幌市内初のナイター照明付き公営硬式野球場で、内野は全面土、外野は天然芝。電光掲示板、スピードガン、屋内ブルペンも装備されている。総工費38・6億円をかけて昨年4月から工事が進められ、残るは両翼ポールの設置のみ。来年4月下旬頃にオープニングイベントを開催する予定だ。

https://news.yahoo.co.jp/articles/6d81a5d0e4a40af7125d73399cd41d64beaea434

 両翼の深さが「芸術的観点」から決められるというのはたぶん野球場界初だと思う。「より円形に近づけるために同機構から両翼幅の延長を依頼され」というこだわりが個人的にツボる。創作的な欲求とプレイヤーの要求は決してバッティングしない筈である。「モエレ沼」という名前がまたアートっぽい。

 もっとも両翼が深い球場は多分三重県の上野運動公園野球場の「104m」だと思うが、なぜかこの広さで軟式の大会ばかりやっている。ちなみに硬式の公式戦をやらない球場では早大の東伏見グラウンドの「左翼110m、右翼102m」というのがある。それ以前に前橋市の千本桜野球場は左翼119m、中堅も130mあったらしいが、google map で見てみると今は適当な広さにフェンスで仕切られているようだ。

 だがこの球場は「日本一高いビルを」といった類の通俗的な価値観ではなく、あくまで上空から、斜めから、横からどう見えるか、という「芸術的観点」を優先しているところが新しい。スタジアムとて「作品」である。その価値観自体は別に新しいものではなく、代々木第二体育館という古典的なお手本が現存している。

 建築とかデザイン関係の賞を取った野球場というと、大舘樹海ドームとか郡山市の開成山球場があるが、プロ野球とかオリンピックを主目的としないのに、何気に芸術関係の賞を取ってしまうような「野球場」が地方に増える傾向はスタジアムマニアとしては歓迎したい。我々スタジアムマニアも建築マニアのイチ派閥である。

 不思議な事に、都会には古色蒼然としたボールパークが、自然の中には前衛的なオブジェのようなスタジアムが似合う。周囲の景観とどう折り合うかをちゃんと考えて設計され、老朽化したからと言って簡単に解体されず、その姿で長寿命化を望まれるような、住民の精神的支柱となり、存在感のあるスタジアムが増えて欲しいものです。

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