我々はFFCCリマスターに何を求めていたのか
我々はFFCCリマスターになにを求めていたのか。どういうところに期待していたのか。それは人それぞれとしか言いようがない。けれどなんだか、多くの人がその期待と実際のリメイクとの間にズレを感じるのではないだろうか。
なんか思ってたんと違う。それが正直な感想だ。
当然、ユーザー一人一人の要望にいちいち応えることはできないし、過去のゲームのリメイクである以上当時は画期的だったシステムも現在では当たり前、下手すると石器時代すぎて不便と感じられることもある。その事を理解した上でも、やはりFFCCリマスターとユーザーの期待がズレていると感じられてしまうのだ。
私はFFのナンバリングタイトルはほとんど触れたことがなかった。しかしどういうわけかFFCCだけは子供の頃から散々遊びまくったゲームの一つだ。ごく最近まで時々ハードを引っ張り出してきては数日通してプレイすることもあった。毎回マグメルのカーバンクルが全員起きるくらいまでしかやらなかったが、独特の世界観にストーリーにそれを彩る民族風音楽、そして何より自分の分身であるキャラクターが新米として村を旅立ってから年数を重ねるごとにベテランへと成長していく過程が何よりも好きだった。よく行くダンジョンの地図やアーティファクトの位置はだいたい覚えていたし、村を発展させようとキャラクターを8人作って育てたこともあった。
一方で戦闘はあまり得意ではなかった。せっかくのマルチプレイシステムでも人と遊べる機会は限られてモーグリとの二人旅が基本だった。またダンジョンは周回する事で強化が二段階行われ、プレイスキルがイマイチな人間には進めれば進めるほどハードルが高くなっていくのが辛かった。
そんなFFCCの戦闘よりも雰囲気重視のそこそこやり込んだ人間の立場から、FFCCリマスターに対して何を期待していたのか、何が期待とズレていたのか振り返ってみたいと思う。
まず何もかもが期待はずれだったというわけではないことはちゃんと記しておきたい。
大好きだった世界観や音楽には大きな変更はなくあの時の空気そのままだった。ダンジョンに入ったときのセリフも母親が子供に読み聞かせているような感じになっておりそれもとても良かった。戦闘ボイスも最初のうちは違和感があったがプレイしていくうちに慣れて気にならなくなったし、リマスター版では旧版で不便だと感じていたことのいくつか改善されていた。
それらの中でも最も感動したのはアイテムがスタックされるようになったことである。ダンジョンでボロボロ敵が落とす回復アイテムや装備のレシピに素材。それらはかつて一つずつアイテム欄を圧迫していた。ダンジョンをクリアするたびに街に入って、溜まりに溜まったフェニックスの尾を行商人に売りつけなければならなかった。それがリマスターでは同じアイテムがひとまとまりにスタックされ、貴重な素材をいくらでもコレクションしておけるようになった。相変わらずコマンドリストには一個ずつしかセットできず自動補充機能もないが、それでも旧版プレイヤーからしてみれば大きな進化である。ゲームの構造には詳しくないがハードの性能が上がったおかげというよりも、同時進行で1〜4人のアイテムを管理する必要がなくなったおかげだと考えている。
さらにこれもアイテム関連であるが、最初の村にサブキャラクターと共有の倉庫が設置されたことも嬉しい追加だった。最初の村ではプレイヤーの実家が様々な職業を営んでいるが、プレイを進めることでその職業が強化されていく。だんだん実家を強化し村を発展させていくのも楽しみかたの一つだが、ソロプレイヤーには大きな問題があった。と言うのも実家が強化されるタイミングがミルラの雫を回収した際に届く手紙に返事をして父親の好感度が上がった時である。直前にクリアしたダンジョンに潜り周回することは可能だが、その場合はミルラの雫は手に入らず当然手紙も届かない。
実家を育てるためにはミルラの雫が取れるダンジョンに行かなければならないが、新たに解放されたダンジョンは当然難易度が高くなっているし、一度攻略し再びミルラの雫が復活した所は前回よりも敵が強化され数もうじゃうじゃ増えている。そんな中に未強化のサブキャラを放り込むわけにはいかず、優しめの場所で装備やアーティファクトをある程度集めて育てなければならなかった。
それが倉庫のおかげでメインキャラで集めた素材やレシピにギルに至るまでサブに渡すことができるようになった。強い装備でガッチガチに固めればアーティファクトを持っていないサブでも強化済みダンジョンを楽々攻略できるようになったのである。
私はこのアイテム周りの改修が特に素晴らしいと思った。しかし他の追加要素についてはあまり興味をそそられなかったり、どうしてそうなった!?っと感じるものもあった。続いてはそれらの追加要素についての所感を述べたい。
FFCCリマスターの制作が発表され、早い段階で公開された追加要素と言えばキャラクターボイスの追加だろう。様々なNPCに有名声優があてがわれそれを楽しみにしていた人もいるだろうが、私自身はそのことについてあまり嬉しいとは感じなかった。かと言って嫌だったというわけでもなく、ぶっちゃけて言えば「そんなことはどうでもいい」だった。
旧版のNPCたちには声はなかったが、そもそも声がついてないことに不満はなかった。むしろ目で読むことで豊かに内容が頭に入ってきたように思う。確かに声がついたことで生き生きとしたNPCもいたが、FFCCは日記を含め文章一つ一つが伝承録だ。それは目で読むためのテキストであり、声で読み上げるためのテキストではない。前者として書き起こされた文章をわざわざ人が声に出して読み上げることに私はあまり意味を感じなかった。
続いてモノマネ機能について。これもまた早々に紹介された追加要素ではある。黒騎士やハーディ&ガーディなどのNPCに見た目を変えてダンジョン攻略ができると言うものだ。公式ツイッターでやたら紹介していたが、私にとっては「だからなんだ」と感じて心底どうでも良かった。そして蓋を開けてみればそういう目立つNPCのモノマネはレイドダンジョンの報酬だったことに驚いた。簡単にモノマネできるのは街道で出会う各村や街のキャラバンメンバーたちである。しかしメンバー全員でひとまとめに、「あの村のキャラバン」という覚え方をしているプレイヤーが大半だろう。モーグリの巣でスタンプを集めて、「○○のモノマネができるようになったクポー」と言われても「えっ、誰……?」状態である。
モーグリのスタンプは旧版だと集めればマルチプレイでGBAを使ってできるミニゲームのコースを開放することができた。リメイクにあたってミニゲームは無くなりその代わりとして追加されたおまけ要素だから地味なメンツなのだろう。しかし公式のモノマネ推しっぷりがやたら過剰だったように感じる。あそこまで推すなら一人くらいスタンプで手に入ってもいいだろうに。
では最初に立ち返り、リマスター版に何を期待していたのかについて言及していく。
最も期待されていたのはもう言うまでもなく、ハードを越えたマルチプレイであろう。戦闘が苦手な私でも友人たちと遊べるのを楽しみにしていた。開発側もそれはよく理解しており、一番の目玉として紹介していた。新規のレイドダンジョンも追加され、各ネットニュース総動員でまるでMMOだともてはやし期待をどんどん煽っていたように思う。
そしていざ、昔のように友人と実際に顔を合わせマルチプレイをやろうとした矢先、とんでもないことが発覚する。なんとリマスター版はローカル通信非対応なのである。クロスプラットフォームによる弊害で、オンラインマルチにしか対応していなかったのだ。南無三。
そこにケチをつけても仕方ないのでその場でWi-Fiにつなぎ、オンラインでプレイすることになったが、マルチの仕様も大きく変わっていた。旧版のようにキャラバンの一員として旅に加わるのではなく、ダンジョンに入るときに傭兵として参加する形になっていた。更にホストのキャラがいる場所からいけるダンジョンしか選択できず、移動中に街道イベントが発生したり村に入ったりした時はただ待っていることしかできない。
報酬のためにダンジョンを周回したいだけであればそれで問題ない。開発側の意図としては、行きたいダンジョンの募集を立てるなり探すなりして人を集め、軽い気持ちで参加できるようにこのような仕様にしたのだろう。むしろ現在のオンラインマルチならばそれが一般的である。
しかし、旧版のマルチはそうじゃなかった。かつて自キャラの入ったメモカを携え友人の家に行き、一時的とは言えキャラバンのメンバーになった。できる機会は少なかったけれど、その時確かに私たちは同じ馬車に乗って冒険した。
そう、私はキャラバンとして友人と旅がしたかったのだ。
開発はその場限りのメンバーでダンジョンを攻略する現代的なオンラインマルチを提供しようとしたが、私が求めていたのはオンライン上でGBAを持ち寄ってケーブルでGCに繋ぐことだった。「思ってたんと違う」の大部分を占めるのはこのマルチプレイに対する期待のズレだろう。しかし新しいことを受け入れられないこちら側にも原因があると考えることも必要なのかもしれない。
マルチプレイを一度選択してしまうと退出ができなくなるとか、今いるエリアからいけるダンジョンしか選択できないとか、そういう不満点はいずれ改善はされるとして、続いてマルチ以外で期待とは違っていた点について触れていく。
旧版をプレイしているときに感じていた不便さでアイテム周りはよく改善されているとすでに述べたが、その他にも「ここもっとどうにかならんのか」と思っていたことはあった。
一言で言ってしまえば移動の不便さである。FFCCの世界には空飛ぶ乗り物は存在せず、馬車でのっそのっそと街道を行き、時には船に乗り、瘴気の壁を苦労しながら乗り越える。不便だからこそ世界観にマッチしてキャラバンの大変さを身にしみて感じられるわけだが。
旧版FFCC以降、世の中には無数のゲームが生まれ私も様々なプレイしてきた。その中でだんだんタイムイズウィンという考え方は消えていき、特にソシャゲなどではいかに効率よく最大限のゲーム体験をするかに重きが置かれるようになってきた。リマスター版のマルチの仕様が変わったのも効率を求めてのことだろう。
しかしマルチ以外の部分ではリマスター版はあまりにもそのまますぎた。馬車が街道をゆっくりと進むのはまだいいとして、瘴気ストリームに入る度にプレイヤーは馬車から降りてケージを抱えて壁を越えなければならない。ただでさえケージを持っているのにストリームの中心に行くほど足は遅くなり、ずっとスティックを入力していなければならない。トリスタンの渡し船も一度港や停泊所に入って、船が出港するしたり到着したりするムービをいちいち見せられる。ボタンを押してスキップするのも煩わしく感じる。
何年も何年もそれを繰り返し、さらには最初の村だけに倉庫が設置されたことで素材を出したりしまったりするためだけに何往復することもある。サブキャラの装備を整えようとしようものなら世界の北端と南端を感謝の1日1万往復だ。
いくら世界観を重視しているとは言え、「それ毎回見る必要ある?」と思わずにはいられない。そこに追い打ちをかけるように長い長いロード時間。データ量も増えてロードに時間がかかるのはある程度しょうがないとしても、数年旅を続けたベテランキャラバンならば瘴気ストリームや渡し船に関してはワールドマップからそのまま越えられてしまってもいいはずだ。
キャラクターボイスを追加するのも良い、モノマネという新要素も悪いわけじゃない。しかし、その前にもっとやるべきことがあったんじゃないか。どうしても私はそう思ってしまうのである。テストプレイでキャラ8人全員育ててみるとか、旧版にGBA繋いで数日みんなでプレイしてみるとか。
開発側の旧FFCCの何が面白かったのか、どういう部分が不便だったのか、今の環境なら更にどういうことができるのか、それらが私含め旧版プレイヤーの認識とズレているのだなとただひたすら実感するばかりである。
結局のところ我々がFFCCリマスターに求めていたのは、子供の時一緒にプレイした名もなきキャラバンの一員に、少しだけ新しくそして懐かしいあの伝承録を再び記してほしかったのだ。