蘭・ガーネット

エッセイスト。実体験を基に東京グランドキャバレー物語を執筆しています。 お仕事依頼は、…

蘭・ガーネット

エッセイスト。実体験を基に東京グランドキャバレー物語を執筆しています。 お仕事依頼は、→こちらまで。koc.garnet★gmail.com (★を@にして下さい。)

最近の記事

東京グランドキャバレー物語★31 同窓会はキャバレーで!

    その日時はいつもよりワクワクしていた。 数週間前、私はひょんなところで高校時代の友人に会ったのだ。 「今、何しているの?」  と定番の話題になり、私たちは近くのカフェで話しをする事になった。    卒業後、叩けば大量なホコリが舞い上がる私たちも、高校時代は間違いなく純真無垢の華麗なる乙女であった。    A子は、どこにでもいる普通の女子高生で、どこかの誰かみたいに早弁や居眠りをするなど見た事もない、極々真摯に学業に専念する品のある女子であった。それが、今こうして私の目

    • 東京グランドキャバレー物語★30 アフターと言う名の夜デート

        お店が終わるのも、あと10分ほどだ。時間になると、いつものバンド演奏が始まる。哀愁漂うスローな曲が流れ始めると、ほとんどのお客様が帰り支度となり、お付きのホステス嬢が伝票を持ち会計カウンターに並ぶ。  隣の席に座っていた弥生さんは、お客様に耳打ちし 「じゃあ、お店出た後、横断歩道の渡った所で待っていてね」 聞くとはなしに聞こえた話しを、弥生さんにたずねる。彼女は、明るく優しい何でも教えてくれる頼もしい先輩だ。 「お店が終わってからも、お客様と待ち合わせするんですか?」

      • 東京グランドキャバレー物語★29 飲んだら脱ぐな!脱ぐなら飲むな!

         この日の夜は平日だと言うのに、店内は活気に満ちていた。20人近くの団体のお客様のご来店情報が、店内を駆け巡り、社長のご機嫌な表情で確信に変わった。 「ほら福、ボ~としてないで。笑顔だよ、笑顔。男を一人二人落とす勢いがなくちゃ!ねぇ。ここでは、若いんだからさ」  手を叩きながら社長が、福に矛先を向けハッパを掛けニコニコだ。  八時を回った頃、一台の古ぼけたエレベーターが、行ったり来たりを繰り返す。年季の入った機械は、金属の古い音を出しながらも、しっかり動いていた。  数人の

        • 東京グランドキャバレー物語★28 麗しのチャイナ ボーイ

           店には三人のボーイがいた。 どの子も出身は、チャイナである。  ボーイの仕事は、ビールや焼酎、グラスや割り物の氷、ミネラルなどを運ぶ単純作業である。接客もなく、黙って運ぶだけの仕事は、日本に来たばかりの彼らには体の良いアルバイトだった。  日本語もあまり出来ないボーイたちも、黒のズボンに白いワイシャツ、蝶ネクタイを締めると、どこから見ても立派なボーイに変身する。  顏が整った若く俳優並みのムーンチェンが、ステンレスのトレイにグラスを乗せ、席の間をせわしなく行き来している。

        東京グランドキャバレー物語★31 同窓会はキャバレーで!

          東京グランドキャバレー物語★27 緊急指名手配!

           新人のホステスは、まだお客様がそんなにいない頃は、店側が初めて来店したお客様の席に付けてくれる。ご指名のホステスさんも決まっていない時、それこそ巡り会いの一瞬。  お客様が、席に付いたホステスを気に入れば、次からは指名してお店に来てくれる事もあり、もっと仲良くなれば同伴と言う道にも繋がるので、初めてのお客様との出会いは、ホステスの運命の別れ道となる。       本日の彼は、40代前半、この店の客層にしては若い。 若いと言うお客様は、経済的に厳しい方もおり、数か月に一度の

          東京グランドキャバレー物語★27 緊急指名手配!

          東京グランドキャバレー物語★26 ホステスさんの副業は?

           お店に入ってから、何人もの女性が、実はもう一つ他にも仕事をしている事に気がついた。一日24時間の中で昼も夜も稼いでいる女性がいる。  頑張れば平均OLの一ヶ月のお給料に引けを取らない夜のお仕事。さらに昼間の仕事をしてダブルインカムを目指すとは!見上げた根性だ。私は、今まで安心安泰と言うホステス業だけにあぐらをかいたことを深く反省した。  昼間の時間も、若いうちに?体を使って働こうではないか!  いったい他の女性は、ホステスの他にどんな副業をしているのだろうか?もしかして、昼

          東京グランドキャバレー物語★26 ホステスさんの副業は?

          東京グランドキャバレー物語★25 幽霊いるいる?真夏のミステリー

           いつもの様にお店に出勤すると、愛海(あいみ)さんが話しかけて来た。 愛海さんは、山口県出身のポッチャリとした可愛らしい女性で誰にでも気軽に話しかける。 「ねぇ、知ってる?出るんだって」 「何が出るんですか?」 「決まってるじゃない、出ると言ったら、これよ」  愛海さんが、胸の前で両手をぶらりと重ねるようにした。 それだけではなく、白目をむき出した。 「いやぁ~。愛海さん。怖い」  私は、身震いした。 「5卓の席あるでしょう。角の席よ。あそこに女性の幽霊が出るって   噂よ

          東京グランドキャバレー物語★25 幽霊いるいる?真夏のミステリー

          東京グランドキャバレー物語★24 父と息子でご来店

           上にあるホールは、ショーやダンスなどのにぎやかさを求めず、どちらかと言えば喧噪を逃れ、静かにお酒を飲んだりホステスとの会話を楽しみたい人達が利用する空間だった。  いつもは、福を含め売れないホステスが欠伸したり、居眠りをしながら、名前を呼ばれる時を今か々とジッと待っている席があるが、そこはお客さんの席からは、うまい具合に死角になる。  今夜は、金曜日のせいか満員御礼。美しいドレスをまとった売れっ子お姉様方は階下ホールで、あちらこちらと飛び回っている。にわか売れっ子のホス

          東京グランドキャバレー物語★24 父と息子でご来店

          東京グランドキャバレー物語★23 オープンカーでパレードする?

           私、福を覚えてくれるお客さんも少しづつ増えていった。真面目にやっていれば、お天道様だって味方してくれるって、なものでしょうか?否、お天道様じゃなくて、お月様でしょうと、今夜も軽やかな気分で歩いていたら・・。横断歩道を渡ろうとするとお店の真ん前に派手なスポーツカーが止まっていた。それも屋根のないオープンカーと言う代物だ。  通り行く人が、一瞬チラ見しながら横断歩道を渡って行く。 出勤時間のお姉様たちも、誰のお客さんなのかしら?と興味深くジロジロ見ながらお店に入って行く。  

          東京グランドキャバレー物語★23 オープンカーでパレードする?

          東京グランドキャバレー物語~番外編~福、美容院へ行く

           シャカシャカシャカ、シャカシャカ。 ふふふ ふふふ 自然に笑みがこぼれる。 白いシャンプー台に仰向けになり、力強い男性美容師の大きな手の中で私の髪、重い頭ごとおまかせしている。  その辺のドラッグストアーでは売っていない正真正銘の美容院御用達の贅沢なシャンプーの匂いが、私の気持ちをこんなにも高揚させるなんて!  爪を立てずに、押したり緩めたり、強弱をつけマッサージする。何というフィンガーテクニック!タオルで顔全体が覆われているので、顔の力が抜け、目尻の下がった私のだらしない

          東京グランドキャバレー物語~番外編~福、美容院へ行く

          東京グランドキャバレー物語★22 泥棒稼業のお客さん

           出勤日、店に行くとマネージャーから、社長が呼んでいます、と言われた。社長が直々に私を呼ぶなんて、面談の時以来だから、昇給だろうか? まだ、1年もたっていないのに、そんな店に貢献したかな?私は、楽天志向で夢見る乙女なので良い事しか考えられない。  私の美貌と、どことなく感じられる品性が、石油王とか、どこかの国の王子のハートを射止めちゃって、社長を通じての縁談かもしれない。現代版シンデレラ~?クックと自然に笑みがこぼれた。 「失礼します」  弾む気持ちで、古い木のドアをノック

          東京グランドキャバレー物語★22 泥棒稼業のお客さん

          東京グランドキャバレー物語★21シャケ弁当付きミーティング

           本日は、半年に一度あるミーティング。 私にとっては、初のミーティングなので、いつもより早めに出勤する事にした。これに欠勤すると罰金が科せられるので、ほぼ全員が参加する。 参加特典として、シャケ弁当が一個付いて来る、幕ノ内弁当と言えないのが、残念と言えば残念だが、お店を欠勤する理由にはならない。  しばらくすると、トレードマークの薄紫色のメガネを掛けた社長が登場した。皆、もくもくとシャケ弁当を頬張りながら、社長の話しに耳を傾ける。  百人はいるであろう観客はホステス。時代

          東京グランドキャバレー物語★21シャケ弁当付きミーティング

          東京グランドキャバレー物語 ★20 ピンク電話から

             ある日、携帯が鳴った。 今では珍しい公衆電話からだった。    恥かしがり屋のお客さんや、自分の電話番号を秘密にしたい人からの電話は、非通知でかかって来る。     しかし、公衆電話からと言うのは、ごくまれで私の電話番号のメモを見ながら、又は、電話番号を記憶して、かけて来た事になる。     私は躊躇せず、電話に出た。 「もしもし」 「あっ福ちゃん?木下です」 「わぁ!木下さん。びっくりしました!公衆電話からかけて下さるなんて!」     私は、興奮気味に言った。 「

          東京グランドキャバレー物語 ★20 ピンク電話から

          東京グランドキャバレー物語 ★19超ドS華乃 さん VS M社長

           ある日、私は店内マイクで名前を呼ばれた。 「福さん、福さん」 「はぁい!」  客待ちをしている女性たちがクスクス笑う。 「名前を呼ばれたら、返事をしましょう」と学校で習った。私は、つい条件反射で反応してしまう。  社長が付けてくれた福と言う源氏名が、段々と自分と一体して来る様な不思議な感覚になって来た今日この頃である。どちらにしても今夜、誰かしらが福を呼んで下さった、と言う事だ。喜びを隠さず鼻歌まじりでホールの下に降りて行く。  あの工場の社長か?近所の中華屋の主か?それ

          東京グランドキャバレー物語 ★19超ドS華乃 さん VS M社長

          東京グランドキャバレー物語★18 ホステスにもてるお客さん トップ3

           お店に入った途端、何人ものホステスに挨拶をされ、芸能人顔負けの人気者のお客様、隣に座った美しいホステスに愛され恋が簡単に手に入るお客様がいる。何で、あんな奴がもてるんだ?顔は俺の方が良いじゃないか?常連とまではいかないが、自分だって、そこそこ店に来ているのに、と憤慨する男性がいる。この差はいったいどこにあるのだろうか?  お店だけではなく、日常生活にも当てはまる永遠のテーマ。 『どうして、あいつは女にもてる?』  ホステスに人気があるお客様と、見向きもされないお客様の違い

          東京グランドキャバレー物語★18 ホステスにもてるお客さん トップ3

          東京グランドキャバレー物語★17 感動秘話 買えない運動靴

           この話しは、誰やかれや構わず話す事はない、とっておきの私の物語である。この話しをし始めると、ある種のお客様は必ずと言って良いほど目を潤ませる。  例えば、自分で事業を起こし、苦労に苦労を重ね現在の栄光を掴み取った社長さんや、何代も続いて来た老舗の店があわや、自分の代で傾きそうになったのを命をかけるが如く、知恵と信念で立て直したと自負している、そんな難関辛苦を味わった店のあるじ向け限定の話しである。  成長している子供の足は、すぐに大きくなってしまうので、5000円の靴を買う

          東京グランドキャバレー物語★17 感動秘話 買えない運動靴