女の朝パート120

『行け。スタバに行け。』


耳に顔を近づけ、

秘密めいた事を囁きかけるあの時のように、

女は自分の耳に、

男でもなく、女でもない声がいきなり届いた時には、

自分が一体何者であるのか?

何の為にスタバに行くのか?と言う疑問も違和感も感じなかった事に、

多少の驚きと同時に、

自分が今ここで腹を決めなければならないことを悟った。


それから数分後。

女はスタバの入り口に自分の身体を置く事に成功させる。

入り口の前に立ち店内を見渡している時だった。


『進め。レジへ進め。そこで珈琲を買ったら、どこでも良いから空いている椅子に座れ。』

と言う、先程とは違う声が、女の耳に入ってくる。


女は、今の声はおんなの声だった気がすると思いながら、言われた通りのことをする。


珈琲を買い、女が椅子に座った次の瞬間だった。


『写メを撮れ。そのスマフォで、今すぐ珈琲の写メを撮れ。』

と言う、又、別のおんなの声が耳に入ってくる。


これまでで、声の主は三人。と思いながら、女は写メを撮る。






女は待った。次の声を。

しかし、いくら待とうとも、

女の耳に次の声が入ってくる事は起きなかった。

仕方がない、

しかし心の何処かでは淋しいと思いながらも、

女は自分で買ってきた珈琲を飲むことにする。



ここは立川のスタバである。

1月23日火曜日の時間は13時頃。

孤独を紛らわせようと、

わたしが一人で珈琲を飲んでいる時、

同じように一人でスタバにやってきた女が、

レジへ進め、珈琲の写メを撮れ。等と、

一人でぶつぶつ呟いている事に、

どうしようもない程の気味悪さを感じ、

しかし、

どうすることも出来ないと思いながらも、

自分の身体が今微かに震えている事を知った。

















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