女の朝パート121

気がついたら、

スタバで貰ったone moReレシートだけを握り、

立川から飛び出していた。

もう振り返らない、

あそこに戻ることなんて2度とない。

このレシートさえあれば、

いずれ私は心安らかな状態になれ、

この身体もきっと、

本来の、喜びに満ち溢れた健康的で、

活発で、自然な笑みが出るような、

生き生きした状態を取り戻せるはずだから。


一生懸命やってきたのに何故こうなって仕舞ったのだ?

いくら考えも行き着く答えはいつもあそこに収束する。


悲しいかな。


しかし今は笑える。


とりあえず背負わなくて良かった苦労も背負った。

苦労がないだけ幸せだと思った。

だから、当然夢も希望もなかった。


何度心折れそうになったか計り知れない。

その度に一人叱咤激励し、

身体さえ動かしていれば、きっと、

全てがうまくと行くと信じ、そして想い、受け入れ、実行してきた。

しかし、

いつでもどんな時でも、

私の身体はいずれ壊れるのだ。

と言う目に見えない恐怖が身近にあり、

それはいつの間にか当たり前となっていった。


恐ろしいかな。


どう考えても笑えない。そして今も。


笑えない理由はただ一つ。

初めからスタバのレシートを私は持っていなかったのだ。

だから当然、立川のスタバも、そこでの想い出も何もありはしないのだ。


ただ気がついたら、

私の足は自動車のアクセルを力いっぱい踏んでいるかの如く、全てを振り切っていた。

物凄い音を聞き、物凄いスピードを肌で感じた。

私の身体は今この瞬間から、

良からぬ方へとただ運ばれていくのだと自覚しながら。


この時思った事はただひとつ。

これからは何の心配も憂いも痛みもない。

ただ安らかになれる。。





女は、一人呟きながら、その真実を確かめるべく、

着ていたコートのポケットに手を突っ込み、

立川のスタバで貰ったone moReチケットの存在を確かめてみることにした。

運が良ければ、これを使って108円で珈琲を買え、そしてもっと運が良ければ、吉祥寺のスタバの椅子に座れるはず。

だってこの吉祥寺のスタバは、

中々座れない程の人気のスタバだから。


あった。

コートの中にone moReレシートが!




そして吉祥寺のスタバの椅子にも座れた。

嬉しかった。

アイスコーヒーはパンチがきき、

ひりひり痛む傷口にしみる位に、

心から旨いと思った。















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