女と、ふたごのおやつ
女A。
ここはJR 東日本の山手線の田端駅の駅ビルアトレ二階にあるスタバ。
ガラス張りの窓の外は雲一つない青く清んだ空が拡がっている。
春に相応しい白くて明るい、爽やかな光だと思った。
ここに座ると、高い場所を往き来する電車とそうでない電車の両方が眺める事が出来るのよ。
電車の事は全然知らないし、
ビールと焼き鳥、ワインとチーズ、
RANBOX とホットピラティスのワンペアのように、
鉄道とスタバを、好きな人間からすれば、
ここはこの上ないエクストリームな場所。
そしてここにステイしている間だけは、まさに幸せの絶頂となりうるのだ。
したら、その後は更なる幸せが約束されている事は、言うまでもない。
ここまで呟くと、女は途端に自分の口角が震え、引き上がるのを感じた。
気のせいかもしれないけど、、てんてんてんと想いながら、
女は、自分が今、大好きなスタバと言う場所で、
一人でどうでも良いことを呟いて仕舞っている事にも驚き、羞恥を足して2で割った複雑な感情が芽生えた事を知ると、この時ばかりはちょっとだけ胸がちくっしキュンとした。
しかし不思議だった。
不気味と言う言葉と言い換えてもいいくらいに。
これもそうだけど、
これまで沈殿していたどす黒い色をした何かが、
小さな轟音を皮切りに、とぐろを巻きながらも2倍にも三倍にも膨れ上り艶やかな極彩色を帯びてたから。
もしかしたら、これをバイタリティーと呼び、気力や潜在意識、本能とも呼ぶのかしら?
女は、頭に浮かんだ言葉を並べると、とりあえず今はどうでも良い事だと遠くに追いやることにした。
それは呆気ない程簡単だと思った。
満足の現れだろうか、それとも確りとした目的があるからだろうか?
どうでも良いかあ。
ただ、今はっきりしているのは、
ここに、その証拠も目撃者も、先導者もいない事だけ。
けれど、
ワタシの肉体は今ここで、
自分の身体の中を流れる血が何処から都もなく突如暴れ出し、
その勢いは驚くほど速く、驚くほど力強かったのを感じたのよ。
女は嬉しかった。
実を言うと、どうしようなく嬉しかった。
そしてもうどうにも止まらないとも思った。
ワタシだけが知る、
胸のうちに秘めている隠し事も、
この時ばかりは雲散霧消し、
それは肩の荷がすーっと降りた時の感じにも似ていたし、
長年苦しんでいた息苦しさから解放された時に得られるあの感じにも似ていたのよ。
それは二倍、三倍にも膨らみ、笠を増し、どんどん量産されてゆく感じがするのよ。
女は、ここまで一気にまくし立てると、
興奮してきた自分の心を静めようと、
自分で買ってきた珈琲を飲み、窓の外を眺める事にした。
何でワタシはアイスコーヒーにしなかったのだろうか?
これもどうでもいいかぁ、、
女は言葉を紡ぐとここを終着駅に決めた。
女B
椅子に座った女は暫くするといきなり呟いた。
久しぶりのこの感じ。
近頃のワタシはこんな風にボケっとする時間が余りにもなかったみたい。
女は一人呟くとちょっと可笑しくなった。
女C
時計の針は間もなく朝の九時だ。
土曜日。
ここに週一で通いつめて何年が経過したのだろう?
いつもと変わらない場所にいられる事に女は心から感謝しなければと思った。
今日の天気は清々しく、陽射しも明るく、気温もいい。
ありがとう。
女は、呟いた。
ありがとうJR 東日本の山手線の田端駅の駅ビルのアトレ二階にあるスタバに向かって。
とりあえずここの椅子に腰を降ろすと、
ワタシは買ってきたそれらにスマフォを向け、写めを撮るのよ。
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