Ramy.

ひとつよしなに。 ramyotionって名前でデザインを少ししています。クリエイティブなことが好きです。物語を綴ります。 Instagram:@ramyotion

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【自作小説】クロッカスの舞う夜に。#1

Line upLong hand. Short hand. Overlap. 1  周りの女友達はこぞって運命の人だ、と異性と出会う度に言うが甚だ勘違いだと思っていた。そしてそう言う彼女らはまたこぞって別れる。恋愛を拗らせてしまった私の、行き場のない強がりなのかもしれないが、その思いもそう遠くない人生で払拭される。  入社倍率は毎年二百倍近くになる、就活生に人気のあるこの会社で私は働いている。どうしてこの私が入社できたのか、私を知る人に不思議に思われる。雑誌編集長で

    • 【自作小説】クロッカスの舞う夜に。#15(最終話)

      Overlap.  ゆい君と別れてからは、仕事に対する精がより一層増した。本格的にお酒の勉強を始めて、お店でも積極的にバーカウンターに立った。  様々なお客さんの相手をしているなか、珍しく若い女性が1人で来店した。1人で来ているお客さんは基本的にカウンター席へ案内するので、必然的に会話をできる距離にいる。  話の中で同い年ということが分かったので、店員と客という距離間は保ちつつも、すぐに意気投合した。仲良くなってしまったことで気が緩み、つい振られた話をしてしまった。

      • 【自作小説】クロッカスの舞う夜に。#14

        14  旅行2日目、残す工程を時間通りに通過しながら帰路についた。  申し訳ないから遠慮したのだが「疲れただろうし」と、車を返す前に家まで送ってくれた。この後彼は車を返して帰宅するそうで、彼の優しさに甘えさせてもらう事にした。  彼から帰宅の連絡が来たのは、それから1時間半ほど経ってからだった。電話越しに「2日間運転ありがとう、次は私の運転で行こうね。しかも家まで送ってくれて本当にありがとう」と感謝を伝えた。 「初めての旅行楽しかったよ、こちらこそありがとう」長時間の

        • 【自作小説】クロッカスの舞う夜に。#13

          13  ゆい君の熱も下がり、万全の体調で旅行当日を迎えることが出来た。前日に荷物を持ってゆい君の家に泊まっていた。家からレンタカーのお店まで、早朝の閑散とした住宅街を、大きな音を立てながらキャリーバッグを転がして歩く。  小さな軽自動車の荷台に荷物を入れ、「出発進行!」と子供のような無邪気な掛け声と共に車を走らせた。  初めくらいは私が運転をしようと思っていたのだが、想像よりも多い交通量に萎縮してしまい、結局最初からゆい君に運転を任せてしまった。  朝食をまだ取ってい

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        【自作小説】クロッカスの舞う夜に。#1

          【自作小説】クロッカスの舞う夜に。#12

          12  2人で初めて会ったあの日から1ヶ月と12日、11月22日。何度も二人で出掛け、ゆい君からの告白で付き合う事になった。一週間前には、コンペにゆい君の案が通ったようで、お互い歓喜に沸いていた。  コンペに通った影響で年末年始は、休日返上で作業があるそうで、クリスマスや大晦日といった年末のイベントは一緒に過ごすことができない。 「本当にごめんね。一緒にいたいけど、どうしても今回ばかりは仕事を優先させて欲しい」いつも私の予定に合わせてくれていたり、優しくしてもらっていた

          【自作小説】クロッカスの舞う夜に。#12

          【自作小説】クロッカスの舞う夜に。#11

          11  去年の10月半ば、朝から電車の改札機が動かないというトラブルに見舞われたあの日の夜、自宅へ帰ることが出来なくなった彼が、彼の同僚と来店した。  その日は従業員の多さに反してお客さんの少ない日だった。  私の働くお店では、従業員の賄いが出るのだが、休憩室が狭くカウンター席の端など、空いている席を見つけて食べることになっている。  いつものようにカウンターに座り、店長お手製の賄いを食べていると、2つ空席を挟んで座っていた彼に話しかけられた。 「あれ、やっぱり愛佳

          【自作小説】クロッカスの舞う夜に。#11

          【自作小説】クロッカスの舞う夜に。#10

          Short hand.10 「ゆい君行かないで」  こうなるのも時間の問題だとは分かっていた。それでもあまりに呆気ない終わり方だった。喧嘩の原因がどちらにあるかと、今考えても分からない。  付き合ってから最初で最後の喧嘩をしたあの日、いつも温厚で誰にでも優しいゆい君が、玄関の扉を勢いよく開けて、もう出ていってくれと冷たい声で私に言った。 「そうだよね。私が悪いんだ」  そう言い聞かせるようにして、突然の別れを受け入れるしかなかった。 「愛佳ちゃん、誕生日おめでとう

          【自作小説】クロッカスの舞う夜に。#10

          【自作小説】クロッカスの舞う夜に。#9

          9  彼が出張から帰ってきてから仕事終わりに何度か会ったが、休みが揃ってゆっくり会うことが出来たのは、2008年も1ヶ月を切った、12月に入ってからだった。  彼の誕生日に入ったカフェをお互い気にいったようで、今日もそのカフェで会う事になっている。目的を決めて少し遠出するデートも好きだが、こうして落ち着いた場所で会話を楽しむのも特別な時間だ。  世の中はすっかりクリスマスモードになっている。26日に日付が変わった途端、日本は年末年始の正月モードにシフトチェンジするのだか

          【自作小説】クロッカスの舞う夜に。#9

          【自作小説】クロッカスの舞う夜に。#8

          8  昨晩過ごした、夢のような時間を帰宅してからも頭の中で再生する。何より、私だけが彼を好きなのではなく、彼も私のことが好き。カップルとして付き合うことが出来たのに、まだ実感が湧かない。学生の恋愛とは別で、キラキラした時間よりも安定した関係を築ければ、それが幸せだと思った。  先程彼から電話で連絡があった。 「昨日はありがとう。改めてよろしくお願いします」 「こちらこそありがとう。こちらこそお願いします」と、お互いにわざと丁寧な口調で言い合う。 「誕生日に出張って話

          【自作小説】クロッカスの舞う夜に。#8

          【自作小説】クロッカスの舞う夜に。#7

          7  お酒と共に会話も弾み、時刻は18時半をさしている。早い時間から呑み始めていたため、滞在時間の割にはまだ時間には余裕がある。店内を見回すと、これから乾杯を始めるようなテーブルが多い。私たちが入店した頃には騒がしさというものは感じられなかったが、半分以上の席が埋まっている現在は、雰囲気が違う。 「弥生ちゃん結構飲めるんだねー」 「えへへ、実は飲んじゃうんです」とは言ったものの、かなり酔いが回っている事は自覚している。相手にはそれを悟られまいと、ババ抜きの最後の2枚のよ

          【自作小説】クロッカスの舞う夜に。#7

          【自作小説】クロッカスの舞う夜に。#6

          6  8日までの二週間が待ち遠しかった。  毎度のことなのだが、未来に楽しみがあるという現実だけでそれまでの過ごす日々を楽しく感じられる。願わくば、その先の未来も期待したいものだが、無かった場合のショックが大きいので過度の期待は良くないと、周りの友人から学んでいる。しかし今だけは二週間後の未来を楽しみにしていてもバチは当たらないだろう。  気持ちの中では楽しみなのだが、生活自体に変化があるわけではない。月曜日から金曜日の平日は本当に平凡で、朝8時に出勤し、たまに残業をす

          【自作小説】クロッカスの舞う夜に。#6

          【自作小説】クロッカスの舞う夜に。#5

          5  デートらしい夜を過ごした昨日から一夜が明け、何も変わらない休日の土曜。次回彼と会うまでにしておきたい事が二つあった。一つは彼が好きだと言っていたように髪を短くすること。二つ目は自分でも好きな香水を見つけること。香水に関しては、彼と全く同じ、金木犀の香りのするものにすると明からさまに寄せにいってしまっているので、それに近しい香りを探そうと思っている。今日はまず髪を切ることにした。東京の有名スタイリストに施術してもらっている訳ではないので、予約が数ヶ月後先まで埋まっている

          【自作小説】クロッカスの舞う夜に。#5

          【自作小説】クロッカスの舞う夜に。#4

          4  10月24日金曜日、今日は残業をしないと心から決めていたので、一切の心の隙も見せず、仕事のお願いを断った。今日は許してほしい。残業をする事が美学という日本の風潮も、おかしいと思うが。  しっかりと定時に上がった私は、映画館のある以前と同じ玄野巣駅へと向かった。お昼過ぎに星川さんから、仕事が長引きそうで19時半ごろになると連絡があった。時計を見ると時刻は17時半を差していた。2時間ほど時間があるので、駅前のコーヒーショップへと足を運こんだ。あと少しで読み終わる『容疑者

          【自作小説】クロッカスの舞う夜に。#4

          【自作小説】クロッカスの舞う夜に。#3

          3  インタビューした内容を簡単にデータにまとめ、例の職歴で威張る上司への報告も終え、定時の17時丁度に退社をした。私の職場からさほど遠くない玄野巣くろのす駅に18時に待ち合わせをする約束だったので、余裕を持って到着する事ができた。玄野巣駅はこの地域では最も栄えている駅だと思う。東京の新宿や渋谷などに比べれば静かな街だが、玄野巣駅周辺も飲み屋があれば、それに合わせてラブホテル街もあり、歓楽街としての条件は揃っている方である。そんな風に改めて駅の周りを眺めていると、人混みから

          【自作小説】クロッカスの舞う夜に。#3

          自作小説「クロッカスの舞う夜に。」の連載開始

          こんにちは すでに#2まで連載している「クロッカスの舞う夜に。」ですが、実は1年半前に完成して書籍化しているものでした。 デザインの活動をしているramyotionオンラインショップでは販売をしていたのですが、まぁ1冊も売れる訳はなく、でも誰かには読んでほしい。 そんな気持ちからようやく連載を始めてみました。 【ramyotion Instagram】 【ramyotion オンラインショップ】 クロッカスの夜に舞う夜に。-あらすじ- 出版社勤務の田島弥生。インタビ

          自作小説「クロッカスの舞う夜に。」の連載開始

          【自作小説】クロッカスの舞う夜に。#2

          2  10月15日、市内の喫茶店でホシカワさんとのインタビュー当日を迎えた。先方を待たせる訳にはいかないので、予定の13時よりも1時間早く席に着き、アイスコーヒーとたまごサンドのセットを食べながら、資料の確認をして時間を待った。  学生時代目指していた家具デザイナーと会えるという事もあり、遠足を翌日に控えた子供のようにそわそわしていた。普段はアクセサリーとして身に付けている腕時計も、今だけは時計としての役割を発揮するように時間が気になった。  予定より10分ほど早く、ホ

          【自作小説】クロッカスの舞う夜に。#2