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ピーと冬の風鈴
ピーが死んでからだいぶ経った。アイツのいない生活にも徐々に慣れてきたが、今でも何かの拍子に姿を探してしまう。ピーはアスナロの木の一部になって空をめざして大きく育つようにと、小屋の入り口近くの木の下に埋葬した。最近の寒空、土の中で一人ぼっちでいるのは、さぞや寒かろう、淋しかろうと思ったりもした。
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それが・・・。昨晩、目が覚めて庭に出てみると、風もほとんど無いのに軒下にぶら下げた風鈴が鳴っている。それも、3個がそれぞれの音色で。子供のような甲高い音色は「鈴虫風鈴」、落ち着いた低い音色は大きな「梵鐘風鈴」だ。時折、木々の枝がふれ合って「ミュー」とピーのような鳴き声も加わっている。まるで、真夜中の庭でピーと風鈴たちが会話しているようだった。お互いが昔の面白かった思い出を話しているよう。それも、本当に楽しそうに!
彼らに気づかれないように聞いていたら、「庭に穴熊の子供が遊びにきてお父さんが「プー」と名付けたこと。友達が遊びに来て、暗くなって帰る時に僕をタヌキと間違えたことなどなど・・・。」時々、笑い声も聞こえる。思い出話は尽きることがない。彼らは一晩中話していたようだ。
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昨晩の彼らの会話を聞いてすっかり安心した。ピーは、ひとりぼっちでは無かったのだ。近くに風鈴の友達がいて、時々、楽しかった昔の日々の出来事を話しているかと思うと心が暖かくなる。ますます、風鈴が好きになった。
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