森谷明子/春や春
オリンピック選手と戦って勝てるとしたら、
100メートル走とマラソンどちらだろう?
どちらも勝てないのは当たり前。
時間差が少ないのは100メートル走。
世界のトップと、
10秒以内の差に収められる可能性がある。
たった10秒!10数える間だ。
走り終わった後、
しばらく喘ぐことになるけれど、
わずか20秒ほど頑張るだけだ。
同じく文学をやろうとしたら、
長文の小説と短かい言葉の詩歌で
詩歌の方がハードルが低い。
特に俳句はたった17文字。
詩や短歌よりもさらに短く、
3つ程度の言葉を組み合わせるだけだ。
100メートル走のわずか10秒、
トップとの差たった数秒が近いようでいて
絶対に埋まらないように、
少ない言葉だからこそ
その組み合わせに難しさがある。
でも100メートル走と違い、
俳句では奇跡が起きうることもある。
スポーツのように一方向の勝負ではなく、
様々な価値観や広がりを持つ文学では、
ふと詠んだ句が
多くの人の心を打つものになる可能性がある。
その人でしか詠めないというものが、
誰にしもあり得る。
高校生には高校生の、おじさんにはおじさんの、
迸る言葉があり想いがあり風景がある。
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