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瀧羽麻子/うちのレシピ

料理をめぐるほっこりした小説は幾つもある。
悲しい時、辛い時、嬉しい時・・・
その時々、
心と身体に寄り添ってくれる優しい物語。
人生が奥深いのと同様、料理も奥い。
悲しいと嬉しいが入り交じった気持ち。
辛いと希望が同時に襲ってくるような気持ち。
そうした複雑な心の襞にも、
ぴたりと寄り添ってくれる料理がちゃんとある。

この物語は
そうした料理小説のひとつでありながら、
ひとつの出来事を
複数の視点から描く物語でもある。
小さなレストランを営む父母と娘の3人。
そのレストランで働く男とその父母の3人。
娘と男はレストランで出会い、
やがて結婚することとなる。
レストランを接点として、
ふたつの家族が結びついていく。
家族の物語でもある。

どの家族にとってもそうであるように、
子どもが育つ都度都度、
世間にとっては取るに足らないけれど、
家族にとってはちょっとした事件
といったような出来事が起きる。
その思い出に料理の記憶が絡む。
食べるとは人にとって
切り離せないものだから、
事件そのものが料理に関するものであったり、
何かの事件があった際に食べた
料理の記憶だったりする。
それぞれの家族にとっての料理の物語、
ふたつの家族が交わる際の料理の物語。
かけ算で物語が広がっていく。

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